リリベル・リコイル ~錦木千束を暗殺せよ~   作:いけめんなハルト

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※可能な限り設定は原作順守ですが一部改変、また誤りがある可能性があります。
※男性向きのライトノベル的展開が主であり、原作のような百合展開はありません。
※一部オリジナルキャラクターが登場します。


【1話:序章『錦木千束を暗殺せよ』①】

東京都内のマンション。

その中階層に当たる通路を、足音を殺して歩く。

 

『306号室が暗殺対象(ターゲット)のセーフハウスでーす。相手はいつもの雑魚じゃないんで、気を付けてください。二葉さん』

 

後方支援に徹している女性オペレーターが、抑揚のない声で僕の名前を口にする。

片耳に装着したインカムから響くその声は、骨伝導によって内耳を直接震わせることで脳に音を届けているため、彼女の声が外部に漏れることはない。

 

「――錦木千束」

 

与えられた任務内容の再確認の意味も込めて、暗殺対象の名前を口に出す。

 

『貴方と同じファースト(赤服)。しかもあの電波塔事件を一人で解決したリコリスです。もし撃ち合いになれば一筋縄ではいかないでしょう』

 

通路からも見える、大きく傾いた電波塔。

ビル群の間から見えるそれは、10年前にテロリストたちの手によって半壊させられた。

半壊で済んだのは、最強の代名詞であるファーストを冠するリコリスであり、今回の暗殺対象でもある錦木千束の奮闘によるもので、リコリスの間では彼女を英雄視する者も多いと聞く。

そんな旧電波塔は、現代日本の平和のシンボルとして祭られているが、平和維持機関であるDirect Attack(DA)にとっては――歴史的に見ても数少ない敗北の象徴とされるものだろう。

 

「そんな人をどうして暗殺したいんだろう……」

 

『正式にDAを抜けたって話ですよ。DA(向こう)とどう折り合いを付けてやめたのかは知らないですけど、上層部は認めてないみたいで。組織の機密保持のために口を封じたいみたいですね。……あ、今のはDAのデータベースをハッキングして盗み見た話なんで、司令官(虎杖さん)には秘密でお願いします。――バレたら私の人生が終了(シャットダウン)しちゃうので』

 

「その癖は直したほうが良いよ。命はパソコンと違って再起動できないんだから」

 

『無理ですねー。というかもう癖とかいうレベルじゃないです。気になったことをそのままにしてたら死ぬ病です』

 

「知ろうとしたから僕に殺されかけたのに。懲りないな」

 

『結果的には生きてるのでセーフですねー』

 

日本の平和維持のために活動するDAは、リコリス、そしてリリベルを使って事前に事件やテロを防ぐことで日本の平和を陰で守る秘密組織。

その存在は公にはされず、また知られてはいけない。

そうでなければ組織は今ほど正しく機能しなくなる。それはつまり、今の平和が終わることを意味する。

この平和を守るために、上層部は錦木千束の口を永遠に封じるという判断を下したようだ。

 

「死人に口なし……か」

 

錦木千束がセーフハウスとしている部屋の扉を目視したところで、羽織るダークコートを脱ぎ捨てる。

ビル群の間を縫うようにして吹き抜けた一陣の風が、真っ赤な戦闘服(アサルトスーツ)の裾を小さく持ち上げ、差し込む日光を受けて鈴蘭(すずらん)の腕章が輝く。

リコリスの制服は現代日本に溶け込めるデザイン故に、都市迷彩服として機能するが、リリベルの制服は軍隊を意識したデザインであまりに不格好すぎて、都市迷彩服としての機能は期待できない。その分リコリスのものよりも防刃・防弾性能は高く戦闘に向いているというメリットはある。

――性能自体に文句ないけど、街中に出る時は羽織るものがないとコスプレイヤーのように注目を集めるのが難点だ。そうでなくとも、僕は日本人離れした金髪だから余計に目立つ。

 

「セーフハウス前に到着。トラップの有無を確認する」

 

錦木千束が住処としている306号室に続く扉の前に来たところで、仕掛け爆弾(ブービートラップ)警報(アラーム)竹串罠(バンブーウィップ)などの原始的な罠などがないか慎重に確認する。

 

『にしても、本当にARX持ってこなくて良かったんですか? ――556×45mmNATO弾(556)じゃないとリコリスの防弾制服に止められますよ』

 

扉にトラップが仕掛けられていないことを確認し、脇下のホルスターに納められた二丁の拳銃を引き抜く。

 

小銃(アサルトライフル)は中で使うには長すぎるよ。それに、キミも知ってるだろ――」

 

僕の闘志に呼応するように、二丁のM93R・ストライクカスタムの遊底(スライド)が銀色の光沢を放つ。

通常のベレッタM93Rを改造したこの銃は、突出した銃口(バレル)の代わりにストライクフェイスを装着している。これによって接触時の遊底の後退、またストライカーを使った刺突武器としての利用を可能にしている。

また銃口下(アンダーバレル)には、M93Rが持つ最大の特徴と言えるフォアグリップが装着されているが、こちらは本来想定されている用途とは異なる使い方をしているので基本的には銃口と並行するように畳んでいる。

 

「僕は拳銃(こっち)の方が得意だ」

 

『ははは~、そうですね。身を以て知ってます』

 

僕の言葉を聞いて、オペレーターが乾いた笑いを漏らす。

 

『カーテンで中の状況は分からないでーす。それでも昨日からドローンを張り込ませて監視してたんで、錦木千束(ターゲット)は間違いなくいます。……あ、もうドローンのバッテリーが少ないんで、追跡は無理です』

 

要するに、しくじるな――と言いたいんだろう。

 

「了解」

 

懐から取り出した小型爆弾を扉に張り付け、一歩身を引いた数秒後。

 

「――状況開始」

 

小型爆弾はテルミット反応を引き起こし、扉から激しい火花が上がる。

直後、大きな爆発音と同時に扉が吹き飛んだ。

それに合わせ、僕は錦木千束がいる部屋へと突入する。

テルミットによって発生した白煙が包む廊下を一瞬で駆け抜け、リビングへ続く扉を蹴破った。

直後に、僕は――暗殺対象(ターゲット)と対峙する。

 

「「…………」」

 

ボブカットに切り揃えられた、黄色がかった白髪。

ファーストを象徴する赤色よりも、僅かに暗い深紅の瞳はパッチリと大きく、それだけで視覚以上に明るい印象を受ける。

僕と同じ17歳らしい、幼さが抜け切れていない少女らしい顔立ち。薄紅色の唇には、赤いリボンが咥えられていた。

そして、恐らく平均よりも大きいであろう胸の膨らみを確認する。

さらに細く引き締まった腹回りに、肉付きの良い健康的な太もも、乳白色のきめ細かな肌を視界に納めた。

それらの容姿的特徴は、すべて事前に確認した錦木千束のものと一致する。

つまり今目の前にいる――()()()()が、今回の暗殺対象である錦木千束で間違いない。

 

これが、ファースト・リリベルである僕――大葉二葉(おおばふたば)と、

ファースト・リコリスである錦木千束との初めての出会いだった。

 

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