リリベル・リコイル ~錦木千束を暗殺せよ~   作:いけめんなハルト

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※可能な限り設定は原作順守ですが一部改変、また誤りがある可能性があります。
※男性向きのライトノベル的展開が主であり、原作のような百合展開はありません。
※一部オリジナルキャラクターが登場します。


【4話:一章『大鴉』①】

リリベル東京支部の拠点。

東京を活動地域とするリリベルは、任務を終えると皆がこの拠点に戻る。

寝泊まりする寮に、元宮内庁の副料理長が作った食事が提供される食堂の他、医療棟、屋内射撃場(キルハウス)などの複合施設になっているここが、僕たちの家と言ってもいい。

 

「……眠い」

 

錦木千束の暗殺任務を終えた次の日。

僕は食堂で一人朝食を口に運ぶ。

周りには他に多くのリリベルがおり、そのほとんどがグループを作って談笑しながら食事をしていた。

軍隊行動が主なリリベルは、団結力を高めるために寮内でも集団で活動することが努力義務となっている。普段から生活を共にすることで、現場での連携力を高めるためだ。

そのため食堂でグループを作って食事をしているのは、ほとんどが同じ分隊の人間で固められている。

つまり、単独行動が主である僕は必然的に一人で食事を取ることになるのだ。

――誰かと他愛ない話をしながら食事をする。……僕には一生無理だろうな。

事実、誰も僕に話しかけてくることはないし、むしろ談笑のネタにされて笑われている。

 

「いつもにまして酷い顔だな。腐った魚のような目が、腐った深海魚のような目になってる」

 

今日もまた一人寂しく食事を終えると思っていたが、意外な人物に声を掛けられた。

オールバックにまとめられた茶髪。吊り上がった威圧的な目付きのせいで良く怖がられている僕の同期であり、セカンド・リリベルの一人――樋上 君彦(ひがみ きみひこ)

自他共に厳しく律する彼は、絵に描いた模範的なリリベルで分隊長として数多の任務を達成してきた腕利きだ。僕という特異点が居なければ、間違いなくファースト・リリベルに選ばれていただろう。

 

「『ルべリオン』見てて、感想文書いてたら朝になってた」

 

「るべ……なんだって?」

 

朝食を乗せたトレーを手に、僕の向かい側に腰を下ろす。

 

「映画だよ。錦木千束に勧められたから見てみた。話は良く分からなかったけど、なんかバンバンやってて面白かった」

 

「小学生もびっくりな感想だな。……で、錦木千束ってどういうことだ?」

 

――おっと。これは口外しちゃいけない話だった。徹夜で判断が鈍ってるかな。あとでちゃんと寝よう。

 

「それよりここで食べてたら、せっかくの美味しいご飯がマズくなるから離れることをおすすめするよ」

 

「何故だ? 食事の味とお前との距離になんの因果関係がある?」

 

「僕の近くにいると、キミも悪口を言われてる気分になるから」

 

事実、「リリベルの恥晒し」とか「味方の血で染まった赤服」とか、「傍にいると射撃が下手になる」なんて聞きたくもないことが嫌でも聞こえてくる。

僕に聞こえているということは、当然向かいに座る君彦にも聞こえているだろう。

それでも、君彦は何も聞こえていないかのように平静を保ったまま、食事を口に運ぶ。

 

「問題ない。悪口を言われてるのは俺ではなくお前だからな。勘違いするな」

 

「そこは慰めてくれるんじゃないんだ……」

 

「皆は悪口というより、事実を言っているだけだろう」

 

――恥晒しとかはまだしも、赤服とか射撃が下手になるは完全に悪口だよ。味方を撃ちそうになったことはあるけど実際に撃ったことはないし、傍にいると射撃が下手になるなんてデータもない。つまり、後者二つに関しては事実ではなくちゃんと悪口だ。

と言って講義したところで無駄なのは分かってるので、僕もまた静かに食事を口に運ぶ。

 

「実際、お前は集団行動が出来ない。隊列の立ち位置を毎回間違えるし、五メートルの的に対する射撃命中率は4割以下。加えてあのガン=カタ(トンチキ)だ。周りに合わせようという気を感じられない。リリベルとしては最悪。必要ない存在、恥晒しと言われても仕方がないだろう」

 

「返す言葉がないよ」

 

食事を口に運ぶ手が止まる。――今日の食事は一段とマズく感じるな。

 

「お前はリリベルには必要ない。……が」

 

僕が手を止めると、君彦もまた手を止める。

そして威圧的な鋭い目つきで、僕を見据えた。

 

「DAには必要だ。お前が持つ爆発的な突破力は、下手の武装よりもずっと頼りになる」

 

「…………」

 

「一分隊に一人――は多すぎるが、一支部に一人はそういう人間が必要だとは思う。1から100を作るのではなく、0から1を産む奴がな」

 

キリっとした表情のまま、君彦が食事を口に運ぶ。

 

「……もしかして、慰めてくれてる???」

 

直後、君彦は飲み込みかけた食事を喉に詰まらせ、激しく咳きこむ。

 

「ばっ……そんな訳ないだろっ! 勘違いするな。俺はただ"事実"を言っただけだ」

 

傍にあった水を喉に流し込み、荒げる息を整える君彦。その顔が僕の戦闘服と同じくらい真っ赤に染まってる。

 

「事実、か。……ありがとう。ちょっと元気出たかも」

 

「……それより、虎杖司令がお前をお呼びだ。食べ終わったら作戦室に行け。――これを言いに来ただけで、久しぶりに見つけたから話をしに来たとか、そういうのじゃない。ホント勘違いするなよッ!」

 

「漫画で見るような分かりやすいツンデレだ……」

 

久しぶりに君彦との会話で元気をもらい、朝食を終える。

頼りになる――僕にそんな評価をしてくれる人間がいるとは思わなかったな。

それからは君彦にも言われた通り、作戦室に向かう。

 

薄暗い一室に、プロジェクターで投影される作戦概要書が文字を連ねている。

 

「来たか、大葉」

 

しわ一つないスーツに身を包んだ虎杖司令が、僕の入室に合わせて振り返る。

絶妙に決まってないとリリベルの間でも有名なジェントルマンな髭が、小さく跳ねた。

 

「お待たせしました、司令」

 

背筋を伸ばし、敬礼。

虎杖司令が無言で頷くのを見てから、敬礼を解いてプロジェクターで投影された概要書に視線を送る。

 

「主役が揃っていない以上、ここでの長話はスマートではない。よって、端的に言う」

 

虎杖司令はちょび髭を指で撫でると、僕を一瞥する。

 

「今日付けから大葉二葉は、ファースト・リリベル、ファースト・リコリスによる共同作戦――『大鴉(おおからす)』に参加してもらう」

 

それは、過去の歴史を振り返っても例を見ない。

犬猿の仲とされているリリベルとリコリスによる、それもファースト(最強)×ファースト(最強)による共同作戦。

――作戦仮名称(オペレーション・コードネーム):『大鴉(おおからす)

 

この作戦を皮切りに、僕の人生が大きく動き出した。

 

 




アニメではファースト・リリベルの君彦くん。本名はなんだろうか……
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