私は社団ファームで繁殖牝馬として過ごすこととなった。
偉大な先輩方のオーラが凄まじくて……仲良くできるか不安だ。
カレン先輩は「私もまだ来て一年だから」って笑ってたけど、貴女既にカースト上位ですよね?
なかなか学校に来れない病弱が陽キャなわけないだろ!
私は他馬とは離れた馬房だ。理由は定期的に先輩が私に会いに来るため。
まあ今まで冬になると種牡馬なのに厩舎に来てたからな、先輩も寂しいのかも。
ちなみに先輩が来る場合は放牧地も隣で、牝馬が興奮するので他とは離れたところにある。
オーナーさんちょっと先輩に甘すぎない?
私は話し相手ができて良いけどさ。
だが、肝心の先輩はまだ来ていないので……
「迎えに行こうか、モルフォ」
「(まじかあ……)」
厩務員さんに連れられて社団スタリオンステーションに向かう。
種付けシーズンではないし、放牧中だから他馬とは遭遇することは少ないはずとのこと。
先輩は気性難らしく、繊細な性格。
私が行ったほうが大人しく移動できるとのこと。
ホント???
やっぱり視線を感じる……「なんで女がここにいるんだ?」って思ってるでしょ皆さん。
わかるよ私もそう思う。
なるべく刺激しないように……そうっと……
「わあ!なんで女の子がここにいるの?」
放牧帰りの小柄な牡馬が話しかけてきた。
なんかこう……圧が強いな。
「せんぱ……ハーツさんを迎えに」
「君、ハーツさんと知り合い?あっ、もしかして武井さんが話してたブルーモルフォ?」
「えっ、はい、そうですけど……」
「こんなところで会えるなんて思わなかったよ!走っちゃだめ?走ろうよ!!速いんでしょ?」
わかった、この馬ディープインパクトだな!?
武井さんがよく話してたもの。
というか、押しが強いよぉ……。
「おいおいディープ、その女の子困ってるだろ。あと、もう放牧時間終わったから走れないぞ?」
助けてくれたのは人の良さそう……馬の良さそうな鹿毛の牡馬。
連れてる厩務員さんも若いし気性的にも落ち着いた方なんだろうな。
「大丈夫かい、君……ん?もしかして君がブルーモルフォ?」
「はい、そうですけど……」
その牡馬は私を見て硬直した後、質問してきた。
ホントになんで皆私のこと知ってるのさ。
先輩経由か?
「そうかそうか、今年から繁殖入りするのかい?」
「えぇ、社団ファームでお世話になります」
「もしかしたら種付けのときに会えるかもな、俺はキングカメハメハ。ハーツの同期だよ」
キングカメハメハ……確か私の同期のロードカナロアの父親だったような。
「まさかこんなところまで来てくれるとは……ハーツに会いに来たのか?」
「来たというか……種付けシーズンじゃないときだけ私の隣の馬房で過ごすことになって。」
「おいおい、あいつマジかよ……羨ましいな」
「羨ましい、とは」
「君みたいな可愛い子と毎日顔会わせるなんてあいつが羨ましいよ、俺も行っちゃダメ?」
「特例だと思います、先輩は……」
マジでこれ思い付いたの誰よ。
というかプレイボーイ感すごいなこの方。
「ヒェ、モルフォチャン……」
「ん?」
いつの間にかディープインパクトは帰っていた。
このか細い声はいったい……
「アッ、コッチミタ、カワイイ」
「……誰ですか?」
大柄な馬だ。あとモテそう。
でもちいかわみたいになってるんだけど。
「こいつはダイワメジャー、ハーツ経由でモルフォちゃんのこと知ってるんだ。」
「そうなんですね。」
「テンシ……」
うっとりして真っ赤になってるメジャーさん。
天使って、私のこと?
「まあメジャーのことは気にしなくていいよ。君に会えて衝撃を受けてるだけだから。」
えぇ……。
「というかハーツの馬房は俺の馬房の近くだね。一緒に行くか」
とキンカメさんはついてきた。
「キンカメさんは、オルフェーヴルのことを知っていますか?」
「もちろん、最近来た子だよね。」
「実は、オルフェは大変ビビりなコミュ障でして……出来れば仲良くしてほしいなぁって」
「了解、気にかけとくよ。そうそう、モルフォちゃんは好きな馬とかいるかい?」
私、恋バナは苦手なんだよな……
「いませんよ……そんなことする機会、ありませんでしたし。」
前世はずっと病院、今世は一にレース、二にレース、三にレースの生活だったからね。
先輩は先輩だしオルフェはライバルだし。
うーむ、枯れてるなあ私。
「そうか……じゃあ誰にでも平等にチャンスはあるってことかな?」
「……何か言いました?」
「ごめん、独り言」
なんやかんやでハーツ先輩の馬房に着いた。一足先に帰ってたみたいで……
「……?????おかしいなブルーモルフォが見える」
「先輩の目は正常ですよ、迎えに来ました」
完全にサプライズだったな……!?
「マジか……マジか、わざわざありがとう」
「途中ディープやメジャーとも会ってたよ」
「お前なんでここにいるんだよ」
「そりゃあ放牧帰りだからさ」
ニコニコと先輩と話すキンカメさん。先輩もどことなく砕けた口調なので仲が良いのだろう。
「大丈夫か?こいつに何もされなかったか?」
「大丈夫でしたよ、紳士的でした」
心配してくれる先輩に変な誤解を与えないようにしないと。
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「母さん、母さん」
「どうしたの、シヴナ」
一年経った。私には初子の男の子が産まれた。
父親は先輩だ。
実はとある馬主さんが私と先輩のファンで、初年度産駒だけ引き取りたいと吉沢オーナーに申し出てきた。
だからまあ、就職先?は内定してる。
先輩そっくりの顔立ちのシヴナ(リバーダンスから来てるらしい)は私にいつもべったりだ。
でも素質馬でとねっこながら期待されている。
産まれてから立ち上がるまでがおじいちゃん(シンボリルドルフ)より速い10分だったという。
私は疲れてて正直記憶は曖昧。
でも、無事に産まれてきてくれて本当に嬉しかった。
何、ぴょいについて?
まさかの人間立ち会いのもと行われるとは思わなかったし子供も見ることになるらしい。
恥ずかしいよね!!
取り敢えずこの子が走れるように、私は応援するのみである。
欲を言えば勝って欲しいな!
ディープ「また会えるかな?一緒に走りたいよ!」
メジャー「天使がいた」
キンカメ「ハーツが羨ましいな、まあ意識されてないみたいだけど(笑)」
ハーツ「キンカメとメジャーは締める」
メジャー「えっ」
シヴナのオーナーはジャスタウェイの人。