「て、天使……貴女は私の天使ですか?」
「はい?」
爬虫類のような……友人のダイワスカーレットとよく似たイケメン美少女に手をぎゅっと掴まれる。
なぜこんなことになったのだろう……それは一時間ほど前に遡る。
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「オルフェとの約束の時間は……もう少しあるか。」
腕時計で時間を確認すると、まだ3時半。入学したての一年生は授業が終わるのも速い。
選抜レースや見学時間は5時から……寮に帰るって選択もあるけど……
「少し中庭を見て回りましょうか」
桜や春の花チューリップなどが咲いている。
華やかで春の匂いがする……きもちいい。
「きっと季節にあわせた花が咲くのよね、楽しみだわ……ん?」
花壇のそばに、人が倒れてる?
「ちょ、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ると、息を荒くして、具合が悪そうだった。
「誰か呼ばないとっ……!」
急いで先生に知らせようとしたら、ぐっと服の裾を掴まれた。
「大丈夫、だから……薬、飲めばよくなる……」
「薬?えっと……これ!?」
スカートのポケットに入ってた錠剤を見つける。
「これって、もしかして喉鳴りの?」
屈腱炎と同じくらいウマ娘の競争能力を奪う病気。
過去にもクラシック二冠ウマ娘タニノムーティエやダートG1で活躍したゴールドアリュールなど多くのウマ娘が泣かされてきた。
そしてこのウマ娘は……
「ダイワメジャー先輩……」
ハーツ先輩の同期で、マイル中距離路線でG1を5勝した文句無しの名バ。
同級生のダイワスカーレットのお姉さんだ。
「確か手術で回復して、トゥインクルシリーズを走りきったっていう話だけれど」
ぐったりしてる彼女をお姫様抱っこしながら保健室へ向かう。
びっくりするほど廊下には誰もいなかった。
「再発することもあるので薬を定期的に飲んで付き合っていく……ハーツ先輩もなのかしら」
「失礼します」と保健室のドアを開けると、先生は外に出ているようだった。
「えっと、ベッドに寝かせて……飲料水飲料水……」
勝手に使うのは申し訳ないが許してほしい。
薬を飲ませるために、天然水とラベリングがされたペットボトルの水を紙コップに注ぐ。
「大丈夫ですか?少し、起き上がらせますね」
このまま寝転んだままだと当然、飲めないので支えて起き上がらせる。
口を開けて、と言うと薄く開いた。
「ん……」
ごくん、と薬と水を飲ませ、再度ベッドに寝させる。
あとは薬がゆっくり効いてくだろう。
起きるまで待ってようか。
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「一目見たときから思ってました!貴女は私の天使です!」
「は、はあ……」
「ウッ、困惑してる顔もカワイイ」
こ、こんな方だっけ。インタビューとかのときはまともだった気がするけど。
「うう、しゅき……私のしゅきピになってください……」
「なにそれ」
ギャル言葉知らない!!!
手を握ってたことに気づいたら真っ赤になってもじもじしだすし……面白い人、だな?
「メジャー……」
「ハーツ先輩、すみません急に呼んで……」
「問題ない。メジャー、モルフォを困らせるな。自室まで送るから安静にしてろよ。あと、薬はちゃんと飲め。妹に言うぞ」
「だって苦いんだもん。スカーレットに言うのはやめてよ!?昔から心配性で世話焼き体質なんだからあの子!」
なんだかんだ同級生と仲がいいよねハーツ先輩。
昨日、フジ先輩やヒシアマゾン先輩とも話してたところ見たし。
「じゃあ私はこいつ送ってからチームに戻るから」
「あっ、じゃあね、モルフォちゃん!今日はありがとう」
ハーツ先輩に引きずられるようにしてメジャー先輩が去るとホッと一息つく。
今は4時40分、そろそろオルフェとの待ち合わせだ。
チーム見学かあ……緊張するな。
「いい匂いした……体柔らかかった……」
「何堪能してんだよ変態か」
シヴナ「お前俺のことばっかり言うけどさあ!お前はどうなんだよラナキア!」
ラナキア「別に俺は兄さんと違ってそういう話はないよ?」
ユリシス「嘘つけ、この前グラン先輩が『ラナキアくんの好みの女の子ってどういうのかわかる?』って聞いてきたぞ。あとバレンタインにガチガチの本命チョコをマルシュ姉とクロノ先輩から貰ってたじゃん」
ラナキア「あれ義理じゃないの?もしくは友チョコ」
ユリシス「サートゥルナーリアパイセンやワールドプレミアパイセンも貰ってたけど兄貴みたいに箱入りガトーショコラじゃないただのクッキーだったぞ」