青い蝶   作:白雪(pixivでもやってる)

36 / 44
2023年エリザベス女王杯(この小説時空の話なので現実とは一切関係ありません)




現女王か、新女王か。

 

ステラディーヴァ。

 

星の歌姫の名を戴く才媛。

 

最速でG17勝に至った……化け物揃いのきょうだいのなかでもさらに化け物。

 

阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、宝塚記念、ヨークシャーオークス、秋華賞、エリザベス女王杯、有馬記念、ドバイシーマクラシック、ヴィクトリアマイル……。

 

現時点でも化け物すぎる戦績の令嬢だ。

 

欠点は男性が苦手なことだが、混合G1を勝ててるのでレースに問題はない。

 

そして、今度のエリザベス女王杯で私が倒すべき敵でもある。

 

 

私はレイアロハ。

父にキングカメハメハ、母にブルーモルフォを持つ。

 

父の顔を知らずに育ったが、私は父を何より敬愛している。

 

偉大すぎる母と父に恥じないウマ娘になりたいと思い、日々励んでいる。

 

 

優秀かつ人望もあるトレーナーさんのおかげで、ジュニアG1、トリプルティアラ、NHKマイルを勝つことができた。

 

特に脚のケアはトレーナーさんがいないととっくに壊れていただろう。

 

我ながらやばいローテを進んだと思う。

 

そして次走をエリザベス女王杯に定めて、作戦会議をしていた。

 

 

「ステラディーヴァの何よりの武器は重馬場をものもとしないその末脚だ。去年のエリザベス女王杯も、あんなに大外に回らされていたのにあっという間にジェラルディーナを捉えて、競り合って突き放した。」

 

スクリーンに豪奢な勝負服を纏った姉が走る姿が映る。

 

確かに完全なるジェラルディーナ先輩の勝ちパターンを潰した脚は脅威だ。

 

姉さんの負けん気ならどんなに不利を受けたって間を探して突っ込むだろう。

 

 

「コース上、長くバテない脚が必要とされるが……レイアロハ、体力勝負になるぞ」

 

「わかってます。脚の削り合い……どっちが先に落ちるかです」

 

今まで戦ったどのウマ娘よりも強敵だ。

 

ウマ娘限定G1で勝ち鞍を積み上げてきた私と、混合G1の最前線で走ってきた姉さん。

 

 

クラシック女王である私と、シニア女王の姉さん。

 

世代交代の狼煙をあげるときだ。

 

 

________________________________

 

「お父さん……見ててね、私絶対勝つから。お父さんの血はすごいんだって、皆に伝えるからね」

 

母と父の写真が入れてあるロケットペンダントを握り締めて、私は目を瞑る。

 

姉と私は最高の仕上がりだ、二強と言われてるが他のウマ娘も油断ならないのは事実。

 

エリザベス女王杯は波乱が起きやすいから。

 

深呼吸をしてパドックに出てゲート入りを待っていると、優美な笑みを浮かべたステラ姉さんがやってきた。

 

 

「今日はいいレースにしようね。」

 

「ステラ姉さん……私、負けないよ。」

 

「私はお姉ちゃんだからね……妹に負けるなんてあり得ないよ」

 

 

この中だとやはりお姉ちゃんのオーラが強い。

 

気圧されてるウマ娘もいるし、さすがだ。

 

「負けを知れば強くなれる……そろそろ潮時よレイアロハ。お姉ちゃんが引導を渡してあげる」

 

「まだ私はその時じゃないよ。世代交代、させてもらうから」

 

 

そう不敵に笑うと私のほうが内枠なので早く誘導され、ゲートインした。

 

 

少しして姉さんもゲートイン。

 

 

高らかなファンファーレが鳴り響く。

 

 

 

「「勝つのは、私!」」

 

 

 

女性だけの戦いが、始まる。

 

 

 

最初にハナをきったのはベテランの先輩、私は三番手くらいでうかがっている。

 

 

姉さんは後方、先行抜け出しより差すレースにするみたいだ。

 

 

スムーズにレースは展開され、縦に広がっている。

 

 

3コーナーを回り、緩やかな下勾配の坂が私達を待つ。

 

下り坂はスピードが出しやすいが気をつけて走らなければ脚がもつれたり余計な体力を消耗したりする。

 

 

直線はあまり長くない……ここで……

 

 

 

「はああああ!!!」

 

 

ハナを奪い取り、先頭へ!!!

 

 

抜けた感触がし、差を少しでも広げようとする。

 

 

そこで自由にさせてくれないのが、姉さん。

 

 

「待ちなさい!」

 

 

とんでもない脚でワープするかのように飛んでくる。

 

必死に先頭を保つ私を捉えるが……

 

 

「抜かせるか……!!」

 

「抜け出せない、なんて……!?」

 

永遠に縮まらない差、というものがレースにおいて存在する。

 

テイエムオペラオーなどがよく言われた戦法……というか本人のフィジカルと根性に任せたやつ。

 

どんなに頑張っても抜けないと思ってしまうものが存在する。

 

でも、私の姉はすごい。

 

だから……

 

 

「はああああ!!!」

 

 

「そこまでの脚がまだ残って……!」

 

 

 

半馬身ほど抜け出して、ただのスタミナ勝負と化した直線と脚を余すことなく使って、私はゴールした。

 

 

はあはあと息が切れる。

 

あと100メートルあったら確実に負けていた。

 

 

そこまでの差だった。

 

 

ぱちぱちと、拍手の音が聞こえる。

 

すっきりとした顔をしたステラ姉さんが微笑んだ。

 

 

「すごい、すごいわレイアロハ。」

 

 

「姉さんこそ、あと少し距離があったら姉さんが勝ってた。やっぱり姉さんは偉大だよ」

 

 

「人には得意ものと苦手なものがあるのよ。あなたはマイル寄りの適正だけど私は中長距離寄りだもの」

 

 

それでもマイルG1を勝ててしまうのがステラ姉さんだ。

 

 

「ほら、勝者はあっちへ」

 

 

「えっ……わあ……!」

 

 

 

観客が喜んでいる。

 

風が颯爽としている。

 

 

観客席のお母さんが泣いている。

 

 

そして……

 

 

「おとう、さん……」

 

 

 

その隣で、お母さんの背中を擦りながら、微笑んでいるお父さんの姿を見つけた。

 

 

「ありがとう」

 

 

と確かに大歓声のなか声が聞こえ……その姿は瞬きしてる間にか消えていった。

 

 

「お父さん……」

 

 

 

私はあなたの自慢の娘になれただろうか。

 

 

誉めてくれるのだろうか。

 

 

もう、大丈夫だ。

 

私は私で、何者の影を追う必要もない。

 

 

お母さんや姉さんたちができなかった三冠を達成したんだよ。

 

お父さんの勝ったNHKマイルを勝ちたくて、ローテがきついけど頑張ったんだよ。

 

言いたいことは山ほどある。

 

 

でも、一番伝えたいことは……

 

 

 

 

「今まで見守ってくれて、ありがとう」

 

 

 

 




「外からステラディーヴァ、ステラディーヴァが襲いかかる!!姉か、妹か、捉えたか、捉えた捉えた……妹だ!レイアロハだ!現女王か、新女王か!勝ったのは妹レイアロハだー!!!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。