衝撃の邂逅だった……。
私は牝馬三冠路線に行くらしいので、牡馬であるオルフェーヴルとは三歳だと対戦する機会はもしかしたらないかもしれない。
「ううん、オルフェーヴルと対戦するまで、強くなって勝たないと」
成長というものは怖い。次走ったときには新馬戦のように上手く行かないだろう。
「次はファンタジーS→阪神JFだっけ。」
阪神JFはG1。
きっとレベルが高い馬ばかりいるのだろう。
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その後、無事ファンタジーSを勝ち、阪神JFの優先出走権を貰ったので参戦することになった。
2010年 12月12日
阪神ジュベナイルフィリーズ
芝 1600メートル (良)
「一番人気はブルーモルフォみたいやな。」
いつものように鼻を撫でて落ち着かせる武井さん。
一番人気か……デビューから連勝中だからかな?
「G1は勝つだけで難しい。G1を勝てなくて引退する騎手なんて何人もいるんや。でも、ブルーモルフォ。お前にとってはこのレースでさえも通過点。」
ちょっとプレッシャーかけすぎよ。
誉められてる……と思うと悪い気はしないけれども。
パドックは視線が集まりやすい。
やはり一番人気の私に集中してる。
「なんであの娘なんかが……」
「めんどくさいよー」
「負けるのはいやだなあ」
牡馬が混ざる混合戦とは違った空気感。
同性の戦いだからか容赦はしない。そういう子が多い。
「あなたがブルーモルフォ?私はレーヴディソール。あたしも無敗よ」
「こんにちは、レーヴディソール。知ってるようだけど、私はブルーモルフォよ。」
無敗だと言った彼女……確かに周りの牝馬のなかで存在感というものが違う。
強いのだろう。
でも、私は負けない。
あの栗毛と再戦するまでに負けるわけにはいかない。
「いいレースにしましょうね」
(馬基準で)にっこりと笑った。
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ゲートに大人しく入り、私は目を閉じる。
この方が集中できるのだ。
ファンファーレが鳴る。
始まる。
「よし!」
ゲートが勢いよく開き、私は"逃げ"をとる。
これは武井さんと調教師さんの作戦。
囲まれてマークされるかもしれないなら、始めに抜け出す。
皆がとれる選択肢は2つ。
意地になって私についていくか、虎視眈々と最終直線で垂れてきたところを差すか。
ただ……私はそれで負けるほど弱くはない、つもり。
気づいているだろうか。
私がだんだん速度を上げてることに。
私のペースに合わせた貴女たちのスタミナは、確実に削れていることに。
多くの牝馬は長距離を走れない。
この1600メートルのマイル戦に出てきた彼女たちのなかに、ほぼ確実にステイヤーはいない。
私のスタミナは、ステイヤーとまではいかないが3000までなら問題なく好走できる程度だ。
それでも牝馬のなかでは破格らしいが……。
ということで、我慢比べだ。
「なんか……疲れてきたかも……」
「いつ終わるのこれ!?」
「こんなに、長かったっけ?」
ふむ、効果はしっかりあるようだ。
私はまだまだいけるけど。
「よし、行け!」
武井さんが鞭をふるう。
私は加速した。全てを置いてくように。
もう追う気力がない他馬を置き去りにする。
外から差そうとするレーヴディソールも少し見えたが問題ない。
もう一段階あるからね。
ギアを一段階上げてさらに加速。
結果、私は後続を大きく離してゴールした。
「やった!初G1制覇!」
はしゃぐ私を武井さんがお疲れ様と言うように首を叩く。
逃げ戦法は中距離戦では使えないが対牝馬のマイル戦では重宝するだろう。
普段は先行だしね……。
レースの後、お高いりんごを奮発してもらった。
おいしかった。
感想お待ちしております。
私のモチベーションのために(笑)