「オルフェ、見ててね。私、羽ばたいてくるから!」
青の勝負服を翻した美しいウマ娘……ブルーモルフォは、自信に満ち溢れた顔でターフに舞い戻った。
……やっぱり、好きだなあ……。
「いやいやいや……」
女の子同士っスよ、アタシたち。
そう、友達として、ライバルとしての好きっス。
『本当かー?』
ええい、うるさいっスよ闇のアタシ!
だいたいモルフォみたいな完璧な女の子がアタシみたいなビビりで不器用なダメウマ娘と仲良くしてくれることが奇跡なんスよ。
「モルフォみたいな可愛いくてしっかりしてて良家の令嬢で速いウマ娘は、きっと将来それに見合った男の人と結ばれるはずなんス」
だから、別に恋愛として好きとかそういうわけじゃ……。
勝手に落ち込んでしまう。
ダメだ、今はモルフォのレースに集中しないと。
ちょうどスタートが切られ、モルフォが先団についたところ。
あぁ、とても綺麗だ。
相変わらず……あの頃から何も変わってはいない。
……????
あの頃から何も変わっていない、なんて。
どうしてそういうことを思ったのだろうか。
『先頭はブルーモルフォ!ブルーモルフォ依然変わらず!三バ身四バ身五バ身……どんどん広げていく!!』
はっと気がつくともう終盤。
圧倒。
そうとしか言えない、レース。
ゾッとする。
こんなウマ娘に、勝てるのか……???
『圧倒の七バ身差!青い蝶完全復活!!お見それいたしました!!』
ウイニングランをするモルフォ。
こちらに気づくと、ニコッと笑って手を振ってきた。
「……あっ」
思わず顔が真っ赤になり咄嗟にうつむかせる。
初めて会ったときから、そうだ。
安心させるような優しい美しい笑みに完全に心を奪われてしまった。
マスクをするとなかなか表情がわからないから、彼女に自分の百面相は見られてない……と信じたい。
控え室に、差し入れでも持っていこう。
ふらふらとお菓子の袋を手にさげ、彼女の控え室に向かう。
すると
「……ハーツクライ先輩」
「オルフェーヴルか」
怜悧な美貌、すらりとした背、男性のような佇まい。
ハーツクライという麗人が、そこにはいた。
オルフェーヴルは彼女のことが苦手であった。
なんとなく、彼女は自分のことが好きではないと思ってたから。
モルフォ相手にだけ向けられる優しい視線は、自分にだけ凍てつくような氷の視線に変わる。
「二冠おめでとう。来週の菊花賞、モルフォと一緒に見に行く」
「そうっスか……その箱の山は?」
「モルフォのファンからのファンレターやらプレゼントやら。こういうのは変なものが入ってないかトレーナーやサブトレーナーが確認してからウマ娘に渡る」
勝利インタビューを受けているから先輩がやってるのか。大変だな。
お菓子の袋を山に加えると、上品な花束が目に入った。
「これは……チューリップ?」
「紫だな、珍しい」
白い包装に金色のリボンで纏められた11本の紫のチューリップの花束。
贈った人は相当センスがいいのだろう。
上品で高貴な雰囲気がモルフォにぴったりだ。
「誰が贈ったかわざわざ書いて……うわあ」
「どうしたんスか?」
「いや、身内だっただけ。」
ハーツ先輩の身内……とても顔が良さそう。
怖い顔をした先輩が「なぜ今更」「あんのクソ野郎」とブツブツ言ってるのは気にしないようにしよう。うん。
新作、できました。
よろしければぜひ。
紫のチューリップの花言葉 不滅の愛
11本チューリップの意味 最愛