お肌が弱い男の子です。ホントに笑えないレベルで
俺の名前は冴島晴人。24歳……だったけど、それは正確じゃなくなった。何故なら、俺は転生して幼稚園児として二度目の生を謳歌しているのである。見た目は子供。頭脳はダメな社会人(笑)と中々イカレた存在であると自負している。
「えー、間も無く遠足の目的地である自然公園ですけど、バスから降りても騒がずに並んで下さいね」
「「「「はーーーい!」」」
おっ。そろそろ到着か。
長い間、バスに揺られていたせいか、ちょっと気持ち悪かったんだよね。
「うーん! 肩凝ったぁ〜!」
「ハルちゃん、オジさんっぽいよ」
「オジさんじゃないですぅー。ホントに凝ってるんですぅー」
うーんと席に座りながら伸びをしていると、隣に座ってる高町なのはという女の子に失礼極まりないことを言われた。ちょっとした縁というか、最近は幼稚園でよく遊んでいるけど、親しき仲にも礼儀ありというありがたい言葉を知らんのか。
と、ちょーっとだけ不機嫌になりながらも目的地に到達したバスから降りようとしたが、
「は、ハルちゃん! ダメなの!!」
「は? あ!!」
次の瞬間、俺は肌を露出している顔と首と両手に猛烈な痛みに襲われた。
「しまったぁ! 油断したぁ……」
俺には二度目の生で致命的な疾患というか弱点を抱えている。
それは太陽の陽射しに弱いという物語の吸血鬼みたいな致命的な弱点。
この弱点は銀魂の夜兎という戦闘民族の弱点そのもの。
俺は転生してからというもの、この弱点に悩まされ続けている。
「ぉぉおおおおお………」
「ハルちゃん、ハイ」
バイオ○ザードのゾンビの動きでバスの中に戻ろうとした矢先、なのはから薬用クリームを渡される。
「お母さんがね。ハルちゃんに渡してって」
「桃子さん、マジ女神!!」
砂漠に放り出されて絶望した感覚から一気に抜け出した。
そして、一心不乱に露出している肌という肌に薬用クリームを塗りたくる。
その様子になのはがドン引きしていたけど、そんなの気にしない。
……………いやホント、そんな目で見なくてもいいじゃん。
こっちはね、生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても過言じゃないんだって。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あの時、ハルちゃんと出会ったのは夕方の公園だったの。
「バイバイ! なのはちゃん!」
「うん、またね!」
夕方の時間まで幼稚園の友達と遊んでたけど、友達のお母さん達が公園まで迎えに来ると、楽しい時間は終わっちゃうの。
「なのはちゃん、おばさんが家まで送るよ?」
「ううん。お兄ちゃんが迎えに来るから大丈夫なの」
「そう? なら安心ね」
私を心配してくれたのに、私は嘘をついたの。
本当は誰も迎えになんて来ないのに。
そして、私は公園で一人になったの。
『なのは、ゴメンね。お母さん忙しいから』
『なのは、一人で遊んでてくれるか?』
『なのは、お姉ちゃんも忙しいから』
お父さんが事故で入院してから、家族の皆が大変そうにしてる。
それを見ると、私は“遊んで”と言えなくなっちゃった。
そう言っちゃいけないって気がしたの。
皆、大変なのに、なのはだけ我が儘言っちゃいけないの。
「あれ……?」
急に胸が痛くなった気がしたの。
その後、涙が出そうになって、どうしたらいいか分からなくなってたの。
「か………め………は……」
? もう夕方なのに、近くで男の子の声が聞こえたの。
気になった私は、声を頼りに男の子を探したの。
そしたら、すぐに男の子……[ハルちゃん]を見つけたの。
「かぁ・めぇ・はぁ・めぇ………」
すぐ近くに私がいることに気付かずに、ハルちゃんは必死にナニかを練習してたの。
あーでもない。こーでもないって悩みながら、真剣にナニかを発射しようとしてたの。
「ッ! 波ーーーーーーーーーッ!!」
ハルちゃんの気迫に、完全に声をかけるタイミングを失ってたの。
でも、ハルちゃんが私に全く気付かないのが面白かったのは秘密にしてる。
そして、ついにその時が来たの。
「か・め・は………えっ?」
「あはは……こ、こんばんは…」
不意にハルちゃんが私の方を向いたの。
私に気付いたハルちゃんは、目を点にして固まっちゃった。
「い、いつから?」
「え? えーっと、かめはめ波ってなに?」
見よう見まねでハルちゃんの真似をしてみた。
「うぁあああああああああッ!! 真似すんなァ!!」
すると、顔を真っ赤にして叫ぶハルちゃん。
ちょっと怖かったけど、面白いって思えたから平気だった。
「くそ! この時間帯なら近所にも迷惑かけずに練習出来ると思ったのに!」
「君も一人なの?」
「そうだよ。……って、なんで子供がこんな時間に一人で?」
ハルちゃんは不思議そうに私のことを見たの。
「子供はもう帰る時間だぞ。修行の邪魔だ。しっしっ!」
「君も子供じゃん! 君も帰らなきゃダメだと思うけど!?」
「はぁ!? 生意気な〜!!」
ムカついた私は、ハルちゃんと睨み合ったの。
しばらくその状態が続いたけど、ハルちゃんは睨むのを止めた。
「子供相手に何してんだよ。おれ……」
「だから子供は君も同じじゃ………」
「ストップ。喧嘩する気ないからストップ」
私の言葉を遮ると公園の出口へと歩き出したハルちゃん。
「誰か迎えに来るのか?」
「え?」
「え?じゃねぇって。誰か迎えに来てくれるのか?」
私は首を横に振った。
「そっか。じゃあ家まで送るけど、いいか?」
ハルちゃんは空を見上げてそう言ったの。
私も空を見上げたけど、もうそらは暗くなり始めてたの。
「君が? でも……」
「そうだよ。こんな時間に外にいたら、警察が来るわ」
「け、警察?」
戸惑う私が面白かったのか、ハルちゃんは楽しそうに
「あぁ。警察に捕まって親に怒られるのは確定だな」
「ふぇぇ……」
お母さんに怒られるのを想像した私は、物凄く不安になった。
「怒られるの嫌だろ。それとも誰か迎えに来るのか?」
「えっ、えっと……」
家族の誰にも私がここにいるって伝えてないから、きっと来ない。
私はそれが悲しくて、どうしていいか分からなくなっちゃったの。
「…………よし。帰ろ帰ろ。家どこよ?」
「あっち………」
気付いたら、私はハルちゃんと並んで帰り道を歩いてた。
帰り道の途中、ハルちゃんは色々な話をしてくれたの。
家が公園の近くとか、つい最近引っ越してきたとか。
そして、いつの間にか私の家に着いてたの。
「立派だな。お前ん家」
「そ、そうかな」
「あぁ、正直こんな家に住みたいわ」
そんなことを家の前で話をしていると、玄関が力強く開いたの。
「なのはを探しに行って……あれ?」
「お、お兄ちゃん?」
お兄ちゃんが慌てた顔で玄関から出てきたの。
私のお兄ちゃん。高町恭也さん。
少しの間、キョトンとしてたけど、だんだん怖い顔になったの。
「駄目じゃないか。一人でこんな時間まで!」
「ご、ゴメンなさい……」
私はこれ以上怒られたくないから、お兄ちゃんの顔から目を逸らしたの。
それで、これからどうしようとか考えてたとき、
「すいませーーーん!!全部ボクのせいです!!」
「「え?」」
お兄ちゃんと私は声を揃えて、姿勢正しく頭を下げるハルちゃんを見た。
お兄ちゃんも怒る気が失せたのか、再びキョトンとした顔をしてたの。
「き、君は?」
「ボクは、冴島。冴島晴人と言います。えっと………」
お兄ちゃんに自己紹介した後、ハルちゃんは私に小さな声で囁いた。
(名前なんだっけ?)
(え?)
(え?じゃない。お前の名前は? What's your name?)
(な、なのはだよ)
私の名前を聞いた後、ハルちゃんは気まずそうにお兄ちゃんに向き直ったの。
「こんな時間になったのは、ボクのせいです」
「落ち着いてくれ。なんで君のせいなんだ」
「遊びに夢中になってたら、こんな時間になっちゃって……」
「ち、違うの! は、晴人くんのせいじゃ……
私を庇って怒られようとしてるハルちゃんに、私はそれじゃいけないって思って、咄嗟に違うってお兄ちゃんに必死に伝える。
するとハルちゃんは小さい声で、
(バカ。余計なことは言わなくていいんだってば!!)
(私のせいだから私が怒られるの!)
(まるく納めようとしてんだから、大丈夫だから!)
気付けば、私とハルちゃんはお兄ちゃんを無視して、小声で喧嘩をしちゃってました。
ハルちゃんの気持ちは嬉しかったけど、ハルちゃんが怒られるのは絶対違うの!!
「えっと、分かったから喧嘩はよしなさい」
「「はい」」
私とハルちゃんの喧嘩はお兄ちゃんが間に入ったことで簡単に止まりました。
「晴人くん、なのはを送ってくれてありがとう」
「え? いやぁ〜、それほどでも……」
「でも、君の両親は大丈夫なのか?」
お兄ちゃんに褒められて嬉しそうにしたのを束の間、ハルちゃんの目が泳ぎ出した。
「だ、大丈夫で〜す……ヨ」
「君、嘘が下手だな」
「そ、そんなことないデース」
お兄ちゃんの質問にタジタジになるハルちゃん。
「……じゃ、そういうことで」
「あ、コラ! 待ってくれ!」
「あーばよっと………え?ちょっ……はやっ!?」
お兄ちゃんに追い詰められそうになったハルちゃんは、一目散に逃げ出したの。
お兄ちゃんは咄嗟に追いかけて、なんとかハルちゃんを捕まえて息を切らして玄関前まで戻ってきたの。
「や、夜兎の足でも逃げきれんとは一体………」
「君、本当になのはと同じ幼稚園児か? 大人顔負けの走りだったぞ」
「てへっ⭐︎」
「オイ…」
「ご、ごめんなさい」
この後、お兄ちゃんがハルちゃんを家まで送っていきました。
ハルちゃんは最後の最後まで遠慮してたけど、最後までお兄ちゃんの気迫に押されてた。
ハルちゃんとの出会いはそんな感じだった。
あの後、私はお母さんとお姉ちゃんに怒られたけど、すぐに許してもらえた。
その翌日に幼稚園でハルちゃんと再会したけど、ハルちゃんは……
「お前の兄ちゃんは本当に人間か? 後、しつこく道場に勧誘してくるからやめてくれって伝えてくれ」
「にゃははは………」
その後、幼稚園で一緒の班になったり、昼休み一緒に遊ぶようになった。
ハルちゃんは、よく分からないけど、日焼けしやすい体質みたいで、滅多に外で遊ばない。
暑い日でも厚着して、お日様の光に当たらないようにしてるくらいなの。
そのせいか……
「いいな。皆、太陽の下であんなに遊べて」
「ハルちゃん、危ないからその岩を地面に下ろそうよ」
「ダメ?」
「絶対にダメだから!!」
ハルちゃんは普段は滅多に外で遊ばないくせに、凄い力持ちさんなの。
理由を聞いたら、無茶苦茶修行したとか、お前の兄ちゃんから逃げるためだとか……
お兄ちゃんは、あの時以来、ハルちゃんに道場に通わないかと勧誘してるんだけど、ハルちゃんは通いたくないみたいで、いつも全力全開でお兄ちゃんから逃げてる。でも、何回かお兄ちゃんに捕まって、悲しそうな顔で道場に連れてかれる様子は、ハルちゃんには悪いけど、いつ見ても面白いの。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺の名前は冴島晴人。
神様転生で選んだ能力は、ドラゴンボールのサイヤ人の能力。
だが、
「すまん。ドラゴンボール知らんから他のにしてくれ」
急遽、妥協に妥協を重ねた結果、銀魂の夜兎の能力を選んだ。
他のにすればよかったと後悔してるのは言うまでもない。
まさか、こんなに太陽の陽射しに弱いなんて思わんよ。
銀魂の神楽とか平気でお日様の下を歩いてたじゃん。
アレなんなの? ご都合主義にも程があるだろ。俺にはそのご都合主義が発動されたことは一度も無ぇぞ。
「超サイヤ人になってみたかったなー……」
「何か言った、ハルちゃん?」
「なんでもないですぅ〜」
夜兎の能力で色々と理想から離れてしまった俺だが、一つの望みに賭けていることがある。
それは、ギャグな要素で本当にかめはめ波が撃てるかもしれないという一縷の希望。
銀さんだって、ゲームとかでかめはめ波を撃ってるからね。
俺だって諦めなければ、いつかきっと撃てるかもしれませんもんね。
諦めないからな、俺!!
結局、俺は暫く経っても、かめはめ波を撃つことは叶わなかった。