夜兎が如く   作:さいとーん

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       ジュエルシード編
男子がする女子同士の喧嘩の仲裁はやめといた方がいい。マジで


 気付けば、この世界に転生してから4年という月日が経過していた。

4年も経過すれば、めでたく幼稚園児から小学生になってるはずだよ。

 

 未だに「かめはめ波」を撃てないのは誠に遺憾だが、俺は元気だ。

ギャリック砲、魔慣光殺砲、魔閃光、気円斬、バーニングアタック……

 

 おかしいな。どれか一つくらい撃ててもいい頃合いなんだけどな。

毎日毎日、精神統一をして自分の気を引き出す努力を惜しんでないというのに…

 

「ッ! 波ァ」

 

 俺は渾身の構えで「気」を解放する。

そして、そのまま「かめはめ波」を撃つ構えを……

 

「お母さん、あのお兄ちゃんって何してるの?」

「しっ! 真似しちゃダメだからね!」

 

 おぉっふ……朝っぱらから精神を削りにきよった。

 

 俺の朝練は、悲しい気分で幕を閉じたのである。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「起立、礼!」

「「「「「おはようございます」」」」」

 

 ここは私立聖祥大学付属小学校の3年生の教室。

俺の席は窓際とは正反対の廊下側の1番後ろの席だ。

 

 この席、実はクジで決まったというワケではなくて……

 

『かっはぁぁあ………』

『先生! ハルちゃんが白目剥いてます!!』

『さ、冴島くーーーーん!?』

 

 あれは入学したばかりの一年生のときだった。

クラスの席順のクジ引きで見事に窓際を獲得してしまった俺は、憎き怨敵“太陽”の陽射しに晒されてしまった。俺も目立ちたくはなかったから多少陽射しに晒されても我慢してたの。でもその我慢がいけなかった。いらない痩せ我慢をしてしまった代償は、中々に高くついたとだけ言っておこう。当時、なのはが気付いてくれなかったら、危うく救急車呼ばれて病院送りになってただろうしな。

 

 とにかく俺の陽射しに弱いという体質は担任は勿論、クラスメイトも把握していることだ。

 

「では、教科書の22ページの図1を見てみましょう」

 

 授業は問題なく進み、気付けば昼休憩になった。

元大人の俺は授業なんか受けなくても正直良いんだが、流石は私立の名門というべきか。

前世で通った公立の小学校と一緒にしていたら、テストで“動かない。まるで屍のようだ”になるだろう。

 

 だから、俺は悪ふざけ抜きで真面目に授業を受けてる。ちくしょうめェ……

 

「あー、勉強したくねー」

「なに馬鹿なこと言ってんのよ」

「なんだよ。本当のことだろ」

 

 俺のボヤキに反応したのは、クラスメイトの「アリサ・バニングス」

昼休憩だからダラりと机に突っ伏している俺を見て、アリサは呆れていた。

 

「シャキッとしなさいよ!」

「嫌だもん。外、曇りじゃなくて快晴だもん。やる気起きないもん」

「アンタだけよ! 晴れの天気でやる気を起こさないのは!!」

 

 俺の好きな天気は【晴れ以外】と声高らかに宣言してやろうか。

 

「アリサちゃん、晴人くんも好きでお日様が嫌いじゃないんだから」

「そうだぞ。無警戒&ノーガードで歩いたら、日焼けは確実なんだぞ」

「悟りを開いた顔で何言ってるのよ!?」

 

 今にも飛びかかってきそうな暴走お嬢様を宥めたのは「月村すずか」

アリサとすずか。この2人との付き合いは小学一年生から続いている。

 

 一年生の当時、アリサは我が儘なだけお嬢様だった。すずかはアリサにイジメらてたし。

 

『返して。返してよ』

『嫌よ。これ、今日から私のなんだから』

(ジャイアンだ。女のジャイアンだ。だからジャイ子だ)

 

 ある日、アリサがすずかの物を取り上げてる場面に遭遇した。

俺はアリサのジャイアニズムに蔑みを意味を込め、心の内でジャイ子と命名していた。

 

『なのは、帰ろうぜ』

 

 あのとき、たまたまなのはと一緒だった。

俺は巻き込まれたら敵わんと、その場を離れようとアリサとすずかに背を向けた。

でも、あのとき背を向けたのが俺だけだったのをすぐに思い知らされることになる。

 

『やめなよ』

 

 と、なのはの口から今まで聞いたことない低い声が俺の耳に届いた。

 

『は?』

 

 俺がどういう意味だと振り返ったときには全てが遅かった。

 

『痛い! 何するのよ!!』

『謝りなよ!!』

 

 パァンという音が辺りに響く。

俺の目に飛び込んできたのは、もうなのはがアリサの頬をビンタした後。

当然、アリサはなのはにやり返すために喧嘩になるし。なのはもなのはで喧嘩上等だった。

 

 一瞬、すずかと視線が合ってお互い沈黙してたけど、俺は解決のために動いた。

 

「おい馬鹿。やり過ぎだって!」

 

 とっ組み合いの喧嘩に発展し始める2人の間に無理に割り込む。

このとき、俺は夜兎の能力で怪我させないようにと意識を偏らせてた。

 

 それがいけなかったと、今では思う。

 

「ぬぁああアッ!?」

「「あっ……」」

 

 不意になのはとアリサの黄金の右(ビンタ)が俺の顔面を綺麗に捉えた。

顔面に痛恨の一撃を貰ったせいで、俺はその場で顔を押さえながら女の子座りになった。

 

 少しの間、沈黙がその場を支配した。

 

「………酷い! 親父にもブタれたことないのに!!」

 

 居た堪れなくなった俺は、その場で思いついたアムロのワンシーンの台詞を借りたが、ネタが1mmも分からない3人には全く伝わらず、沈黙がさらにその場を支配したのは忘れたい忌まわしい過去だ。

 

「私、アリサよ」

「なのはだよ。その……ゴメンね?」

「いいのよ。私もゴメンね」

 

 女の子座りのままの俺を無視し、2人は仲直りをした。

 

「えっとその、これ返すね」

「あ、ありがと」

「お礼言わなくてもいいのよ。私が悪いんだから」

 

 アリサの心変わりに俺は心の中で拍手を贈る。

さて、順当にいけば次は俺の番だよな。なのはと一緒に早く懺悔せぇや。

 

「えっと、アンタも……」

 

 ん? どうしたんや。早く謝ろうネ……

 

「ご、ごごめn……バカじゃないの? いつまで女の子座りしてんのよ?」

 

 照れ隠しで言っても、俺は水には流さないぞ小娘ェ!

 

「俺だって好きでしてるんじゃねぇわ!!」

「何よ! 男の子でしょ? さっさと立ちなさいよ!」

「言われなくても立つわ! でも、立ったとき覚えてろ!!」

 

 俺は素早く立ち上がり、一気にアリサへと間を詰める。

 

「な、なによ! お、怒ることないじゃないの!」

「あぁ!? 素直に謝らないヤツに言われたくありませんー!」

 

 俺とアリサの喧嘩が本格化しそうな手前、なのはが俺とアリサの間に割って入った。

 

「なのは、止めるなって! キッチリ謝らせて……」

「お父さんとお兄ちゃんに言うけど、いいの?」

 

 そっと耳元で囁かれた内容に、俺は膝から崩れて落ちて土下座を敢行した。

 

「ありさちゃん、ごめんなサイ☆」

「ええ!? き、急にどうしたのよ!?」

「きにしないデ。ボクがワルかっタんダヨ☆」

「せ、せめて、普通に喋りなさいよ!!」

 

 結局、アリサが許してくれるまで俺は土下座をやめなかった。

脳裏によぎった厳しい訓練を思い出すと、胃から吐瀉物が込み上げてくる。

 

「ハルちゃん、ちゃんと謝れたね」

 

 ウん。ボク、いい子ダかラ、2人に言ワなイデ。

 

 この出来事から、よく4人で過ごすようになった気がする。

でも、すずかはともかくアリサにはなんとなく苦手意識があるんだよな。

俺が隠れてサボったりしてると、いつも真っ先に注意してくるし。

 

「ハルちゃん」

 

 昔のことで物思いに耽っていたら、なのはが呼んできた。

 

「お父さんとお兄ちゃんがね、久しぶりに……」

「良い天気だ。日向ぼっこには持ってこいだな!」

「バカ晴人! アンタ、本当に倒れるわよ!!」

 

 俺を止めるなアリサ! 寧ろ今からブッ倒れたいんだから!!

厳しい特訓で倒れるのと陽射しで倒れるのだったら、僅差で後者を選ぶ。

 

「? 久しぶりにご飯食べにこないかって?」

「よーし。日向ぼっこもいいけど、弁当食べようぜー」

 

 厳しい特訓が抜きで桃子さんの料理が食べれるなら、陽射しなんざクソくらえじゃ。

 

 後、アリサさん。納得いかないからって、チョップしないでくれたまえ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「なのはが嘘ついたぁーーー(泣」

「ははは。最近、一緒に身体を動かしてなかったからね」

「年貢の納め時ね。まぁ頑張りなさいよ」

「ファ、ファイトだよ。晴人くん」

 

 放課後。

私とすずかとなのはの3人は、帰りに塾に行かなきゃいけないから一緒になったんだけど、晴人だけは迎えが来ていた。それはなのはのお父さんの「高町士郎」さん。士郎さんの顔を見た途端、脱兎の如くという言葉の通り、晴人は何の迷いもなく士郎さんから逃げるために走り出したんだけど。

 

「また速くなったね、晴人くん!」

「なんで追いつかれるのか、もう分かんねぇよ!?」

 

 数秒で士郎さんに追いつかれた挙句、すぐに肩に担がれてた……

 

「士郎さん、店長でしょ!? 翠屋はどうしたんですか!?」

「桃子がな。最近晴人くんが遊びにこないわ。士郎さん、迎えに行ってきてって」

「まさかの黒幕が桃子さん!?」

 

 士郎さんの答えに晴人がさらに狼狽える。

 

「じゃ行こうか」

「あ、ちょっ……このまま行くんですか!?」

「そうだよ。楽しみだな! 晴人くんの成長が見られるんだからね!」

「一週間前とあまり変わりませんからぁ!!」

 

 晴人は焦った表情を隠さずに、肩に担がれたまま連れていかれていく。

私達に「たすけて」と視線を送ってきたけど、私達3人は阿吽の呼吸で決して晴人と目を合わせなかった。

 

「アイツも大変ねー」

「ねぇ晴人くんの特訓ってそんなに厳しいの?」

「うーん…」

 

 帰り道、ふとすずかがなのはに問いかけた。

私も気になってなのはの方を見るけど、なのはは難しい顔をしていた。

 

「なのは、どうしたのよ?」

「えっとね、ハルちゃんが大袈裟に騒いでるだけの気もするけど……」

 

 なんだ。アイツが構ってほしいから騒いでるだけなのね。

 

「でもね、よく分からないんだ」

「よく分からない?」

 

 なのはの呟きにすずかが反応する。

 

「最近ね、ハルちゃんは竹刀を振ってないの」

「え? なのはの家の道場って確か剣道よね?」

「えっと、剣道より剣術って言った方がいいかもね」

 

 私は不思議に思った。

仮にも晴人は剣道を習ってるんでしょ?

なのに、なんで竹刀を振ってないって話になるのよ。

 

「最近はね、空手じゃないんだけど、素手で試合してるの」

「空手じゃない?」

「うん。ルール無用じゃないけど、なんでもありの試合みたいな」

「なによそれ?」

 

 晴人って一体何を目指してるのよ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「さぁ、どこからでもかかっておいで!!」

(ボク、おウチ帰リタいヨォ……)

 

※特に何も目指してません。

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