ぼっち・ざ・ろっく!VSダイナミックコード 戦士の休息編 作:GT(EW版)
大手音楽事務所兼レコード会社「
ロックとポップを融合させたプログレッシブなロックサウンドで独特の世界観を表現している
静かな中にも激しさを感じさせるエモーショナルなロックサウンドで注目を集めている
激しさを持ちつつも妖艶なロックサウンドと圧倒的な演奏力で魅せる
ダンスナンバーとロックをミックスさせたサウンドで中高生に圧倒的な人気を誇る
特に「KYOHSO」は海外での活動も精力的に行っている国内最高峰のロックバンドであり、近年ではエジプトのスフィンクスの隣でライブを成功させるなど話題に事欠かさない。
毎年冬に開催されるダイナミックコード主催のクリスマスライブでは、それぞれのバンドが新曲を披露することが恒例行事になっていた。
スキャンダル、スランプ、失踪、葛藤、事故、喧嘩、村祭り。
彼ら16人の奏でる彼らだけの音楽は、彼ら自身が一年で向き合ってきた日常の仕事や問題に対するそれぞれの「答え」を披露する場でもある。
そんなライブを見ることは、お金が好きなリョウをしてもお金で買えない価値があると言わしめるほど、崇高で熱狂的なイベントだった。
今やダイナミックコードは、この日本を代表するレーベルの一つと言えるだろう。
「ちょっとリョウ……それじゃまるで、失踪やスキャンダルがダイナーの日常みたいな言い方じゃん」
「? そうだけど」
「マジで!?」
「うん、マジ。虹夏みたいなライトなファンには意外に知られていないみたいだけど、あそこのバンドマンは毎シーズン誰かしら失踪してるから凄いよ。今季もそろそろ、誰かいなくなってしまう」
「……神隠しでも起こってるの?」
「いや、単に解散騒動とか上司へのボイコットとか怪我とか、遊んでいたせいで新曲の作成が遅れたりとかで」
「思ったより生々しい! だけど最後のはしょうもなっ!」
誰もが知る人気バンドの実情に、「知りたくなかった」と虹夏がげんなりとした顔を浮かべる。普段は涼しい顔で嘘を吐く山田リョウであるが、彼女は推しのレーベルに関してだけは妙に真摯であることを理解していた為、虹夏はその言葉を疑わなかった。
確かに一流のアーティストは誰かしら尖ったところがあるというイメージはある。故に、そのような大物たちが一堂に会する大手ならさもありなんということか。村祭り。
しかし彼らの場合は単なる傍迷惑な失踪癖とはまた少し違うという事実を、リョウが苦笑しながら語った。
「……だけどちゃんと、大事なライブの日には全員揃って必ず成功させるんだ。人気バンドだから色々と良くない噂もあるけど、ファンをガッカリさせるようなことは絶対にしない。私が初めて見たクリスマスライブも、例によって何人か遅刻しそうだったけど大成功だった。しかもそういうゴタゴタが解決した時は何故か、前のライブより成長して上手くなってる」
「……苦難の後に成長とか、漫画の主人公みたい。みんな時間ギリギリまで、山篭もりの修行でもしてるのかな?」
「そういう噂もあるよ」
「あるんかい!」
ライト層が抱いているイメージよりも、案外愉快な兄ちゃんたちなのかもしれない。虹夏は有名人たちに抱いていた近寄りがたい認識を、ほんの少しだけ改めた。
大事なライブの直前までギリギリまで来ないことがあると言うのは、裏方さんたちの涙ぐましい努力を思うと決して肯定できる話ではない。
しかし、彼らはそれを含めてのバンドマンなのだ。
ライブにおいてファンの期待は裏切らず、常に大盛況の最高の形で終わらせてしまう。それが彼ら「ダイナミックコード」の個性なのだとリョウは語った。静かながらも、熱く。その様子は彼女自身のベース捌きにも通じるものがあった。
「それにしてもリョウは、ダイナミックコードの話になると饒舌だね」
「最近だとレヴァフェとか曲が面白くて好き。紫の血潮……」
「作詞の圧が凄いよね、レヴァフェ」
同じくバンドマンであるリョウと虹夏もまた、そんな彼らの奏でる独創的な音楽を気に入っていた。特にリョウは初めて巡り会ったライブがKYOHSOのライブだったということもあり、ライト層の虹夏がたじろぐほど年季の入ったコアなファンだ。
「そんなに詳しいのに、メンバーの名前は全然わからないんだよね?」
「顔は覚えてるし……名前だって、KYOHSOのヨリトさんとかレヴァフェのレオンとか知ってるから」
「じゃあ問題。KYOHSOのドラムの名前は?」
「? ドヤムでしょ。そのぐらいわかる」
「……駄目だこりゃ……私もヴォーカルとドラムの名前ぐらいしかわからないけど」
「顔を見ればわかるんだけど、名前が一致しない。あの人たちって改めて自己紹介とかしないし」
所属メンバーは全員美男揃いということもあってか虹夏たちの世代の女子は皆、顔を見るだけでもキャーキャー、スッテピーと色めき立つものだ。しかしリョウと虹夏が関心を寄せているのはあくまでも彼らの音楽に対してであり、異性としては自分でも不思議なほど興味が湧かなかった。
その点に関して言えば、二人は案外似た者同士なのかもしれない。
「ま、リョウの言いたいことはわかったよ。そういう凄い人たちでも、メンバーの間で問題が起こることはある。だからギター一人に逃げられたくらいで、リーダーがあわあわするなってことでしょ?」
「ちょっと違うけど、大体そんな感じ。この際だから笑い話として、MCのネタにでもすればいいんじゃないかな」
「……リョウって時々、大人っぽいこと言うよね」
「私年寄りかぁ……」
「そこまで言ってないって!」
STARRYの結束バンドとして、この厳しい世界で長いことやっていこうと言うのだ。確かに理不尽な出来事は、この先もいくらでも起こるだろう。これぐらいのことを乗り越えられなければ目標の達成は夢のまた夢だと、虹夏は自身を鼓舞した。
出会いと秘密。
アーティスト。
彼らの気持ち。
村祭り。
そして輝き続ける一握りのバンドが、KYOHSOのようなトップアーティストに名を連ねられるのだ。
今のところ虹夏もリョウも自分たちがそこまでの世界を目指すほどの熱を持ってはいないが……それでもここは一つ、メンバーの先手失踪という展開の見本として見習っていこう──と、そう思った。
「……いや、よく考えたらこの状況、何も解決してないじゃん! って言うかさっきから挟まる村祭りって何!?」
「村祭りだよ」
「ああ、村祭りだな」
「村祭りですねー」
「お姉ちゃんたちまで何言ってるの!?」
自分たちの大先輩であり現役の成功者のエピソードを一つ知っても、ギターヴォーカルが不在な状態で初ライブを行わなければならないという根本的な問題は何も解決していなかった。
確かに失敗してもまた立て直すことはできるかもしれないが、そもそも虹夏は結束バンドの初ライブをライブ以前の状態で終わらせたくなかったのである。
故にリョウの語ったダイナミックエピソードは、一見為になるようであまり役に立っていなかった。
「ちっ、気づいたか」
確信犯である。
内心これでなんとかいい感じに言いくるめられないかなと思っていたリョウは、動揺してもなお聡明な虹夏の思考に舌打ちした。
「山田ァ!」
「ごめん……」
「……いや、本当に申し訳なさそうな顔しないでよ。私の方こそ、怒鳴ってごめん。あと……元気づけようとしてくれて、ありがと」
「ん」
しかし彼女のおかげで、虹夏の中で「メンバーに逃げられた」ことに関しての精神的なダメージは間違いなく緩和されていた。
人気バンドの輝かしい活躍の裏にも、自分たちのようなグダグダなアクシデントは起こっていたのだ──と、その事実をポジティブに解釈することで、伊地知虹夏は普段の自分を取り戻したのだ。
そんな彼女が、ほんの少しだけ不安そうな顔でリョウを見て、踵を返した。
「リョウはこのバンドから……ううん、何でもない!」
「ヴォーカルは最悪リョウがやるとして……誰かギターできる人いないか、捜してくるねー!」と、そう言い渡して虹夏は一人、ライブハウスを飛び出していった。
「もう一時間もないのにどこ行くんだアイツ……」
「青春ですねー」
いかにサブカルチャーの街下北沢とは言え、そう都合良く協力してくれるギタリストが道端に落ちているとは正直思えないが、彼女らしいポジティブな行動だとリョウは思う。やっぱり虹夏は、こうでなくちゃと安心する自分がいた。
(……心配しなくても、私はこのバンドから逃げないよ。虹夏がやめない限りは)
一部始終を見守っていたSTARRYのPAが何を思っているのやら、ニヤニヤとこちらの心情を見透かしたような視線をこちらに向ける。
そんな彼女の視線から逃げるように、リョウは虹夏が帰ってくるまでの手持ち無沙汰な時間をベースの調整に当てたのだった。
「あっ、そう言えばまた、楽しい思い出話せなかった……」
何故かいつも、肝心な話を切り出す前に終わっちゃうんだよなと残念そうに呟く。
ダイナミックコードの失踪エピソードはリョウ的には愉快な話の一つではあるが、彼女自身話したかった思い出話はそれとは別の話だったりする。
しかし今回は虹夏が元気を取り戻してくれたので、それは次の機会に回すことでヨシとした。
元々リョウは、自分から他の誰かに長話をするのは得意ではないのだ。誰かにご飯を奢ってもらったり貢いで貰うのは上手いが、自然と心の距離を縮めるような人付き合いとかコミュニケーションは、寧ろ下手な方だと思っている。
「待たせてごめーん! ギター連れてきたよー!」
「ワンちゃん! わんわん逃せ~!」
──そう思っていたら、自分よりも数段コミュニケーションが終わっていそうなピンクのやべー奴が怪しい歌を歌いながらやって来たのが、虹夏が戻ってきた四十分後のことである。
「この子、後藤ひとりちゃん! 公園で熱唱してたのを拾ってきたんだー!」
「……ハッ……!? お……オハヨゴザマズ……」
「外は真っ暗なのに面白いことを言うね」
……ただ、彼女の目に留まっただけあって、今回のメンバー候補も喜多郁代に負けないぐらい、面白い奴が来たなとリョウは思った。
何故か今にも死にそうな顔をしていることは……なんか怖かったので黙っておく。
しかし彼女からは何かこう、言葉に言い表せないダイナミックなオーラを感じた。
──そんな彼女らの、運命的なファーストコンタクトである。
本来の運命とほんの少しズレたささやかな変化は、蝶の羽ばたきによってもたらされたものか──全ては少女たちのライブハウスを凜々しい眼差しで見下ろす、
こんなタイトルなのでシリアスはありません(断言)
こんなタイトルですが、ダイナミックコードのキャラは直接ぼざろ勢に関わるよりもニアミスで影響を与えていく方が多くなります。土壌おじさんとゲスおじ、道明寺辰哉は職業的に関わるかもしれませんが
こんなタイトル通り後藤ひとりは処刑されます。セルフで
村祭り