ウマとドラゴン、ときどき奇跡。   作:何もかんもダルい

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こういうファンタジーはファンタジーなんだけどどこか実在性のある話が見たいと幾星霜。
あの世界ガチの神秘の1匹くらいひっそり生きてるやろとぶち込んだ。


ドラゴン、御歳1000歳。

Q, お前これから生き返るけど何が欲しい?

A, おそらとびたい

 

 こんなことをほざいた覚えがある。次の瞬間には赤子だった。

 

 ただし、ドラゴンの。

 

 火は吹けない、不思議な力はない、ただし死ぬほど速く飛べる。マッハ1か2なら休日の散歩と同じくらい余裕である。本気で飛べばユーラシアの端から端まで1時間でかっ飛べるんじゃなかろうか。

 

 死ぬほど鬱陶しい空気抵抗とその摩擦熱は硬く軟らかいという未知の性質を秘めたドラゴンボディがガン無視。飛びたいときに飛びたいだけ、それこそ数ヶ月着陸無しでも飛んでいられる無尽蔵のスタミナと究極の低燃費。航空関係の研究者が見たら地団駄踏みながら憤死しかねない理不尽と不条理の権化。

 それが私です。

 

 今日も今日とて天と地の境界、雲の途絶える成層圏をぶっちぎる。競争相手もいなければ同族もいない寂しい世界だが、生憎暇潰しと趣味を合わせてこいつしか持っちゃいない。

 

 天空と海原の知り合いは皆どこかへ行ってしまったし、陸など尚更。21世紀の今も尚地球に残っているのは私と、友人の息子のクラ坊くらいなもんじゃなかろうか。アイツはアイツで独り広い海を漂ってるわけだから、心配にならないわけでもない。

 

 時代はヒトのもので、怪物などお呼びじゃないのだ。そう思わざるを得ない。地球ウン十億年の歴史からすれば人類の歴史など味噌っ滓だろうが、それでも今の地球代表は人間なのだ。

 とやかく言う気はないし、そもそもそんなことを気にするタチでもない。

 

 

 

 さて、こんな私であるが。実を言うと今年で年齢が4桁に突入してしまうのだ。深海生物が尻尾を巻いて逃げ出すような長命、流石我が肉体。もうちょっと加減してくれても良かったのよ?

 おかげで昔はジャリだの若造だの言われていたのに虹の橋を渡った奴らの誰よりも年上になってしまった。

 

 生き返る前の記憶などもはや残るはずもなく、何なら300歳くらいまでの思い出をもうほとんど思い出せやしないのである。空飛ぶ認知症にならないあたりはありがたいが、こうまで長い人生はもはや寂しい。

 

 かつての……メリ子?アル子? まあいいや忘れた。あ奴のようにとにかく人間に構いたがる人外がいる理由がようやく分かったというもの。先程言った通り、寂しいのだ。

 共有できる話題も感性もなく、共感できる景色もなく。ただ独りでのみ見聞きし感じられる世界に浸り続ける。それはある種頂点に立ち得る存在にのみ許される栄誉であり、同時にどうにもならない呪縛だ。

 単純に強ければ強いほどその呪いは強くなり、また強者では解決できなくなる。

 

 だから、弱者へその救いを求めようとしてしまう。

 寂しい、辛い、苦しい、それを一時でも癒してくれる、自身を害さないもの。たとえその果てに命を奪われようとも心の大穴を埋めてくれるのなら願ってもないと、それは半ば自滅願望に近い。

 死にたいとまでいかずとも、心のどこかに癌のように巣食う空洞。なまじ何でもできる存在ほど、その「玉についた傷」をどうにかしようと必死になってしまう。

 

 私はもう、諦めてしまった。

 私に並べる者は、その可能性は、もう500年は前に途絶えた。

 私の血を継ぐ可能性もまた同じ。現存する一族一科一種、更に一個体。いつまで生きていられるかのチキンレースでしかない。

 

 だからだろうか。

 私もまた、無意識に寂しさを埋めてくれる誰かを求めていたのかもしれない。

 

 ◇

 

 私の住処は地上に有る。

 日本の北海道、北米の荒野、そしてアイルランド、あと南極。全て分かりづらいように横穴を掘って整えてねぐらにしている。

 私自身は多少汚れても積乱雲を突っ切れば自然と綺麗になるので住処の具合はあまり問題視していない。そうでなくとも泥汚れや氷点下の吹雪程度で病気になるヤワな体ではない。

 では何故整えているかと言われれば、それは勿論来客が居るからである。それもどうにも断りにくいタチの客人だ。

 

 

「ドラゴン様! 今日も来ちゃいました!」

「毎度毎度思うのだがね、何をどうやったら歴戦の護衛を振り切って森へ一直線に突っ込めるのだね?」

 

 やたらと行動力のある子供。

 

「竜神さまー! アケビの実採るの手伝ってほしいべ!」

「ふふ、君が昨日ここら一帯食い尽くしたじゃないか。私の分まで」

 

 天真爛漫はいいがとてつもない大食漢の子供。

 

「ドラゴンさん、お覚悟!」

「ほらほら、まだまだ甘い」

 

 アメリカだというのにやたら日本に馴染んで武道が様になっている子供。

 

 ……大人なら、いや分別のつく時分になった子供でもまだマシだ。だが、まだ10にもならない子供というのは昔からどうにも苦手なのだ。

 純真な分、此方の有害無害を直感的に見抜いてくる。それでいて打算も無しに懐いて毎日のように突撃してくる。打算や裏表がないから断りづらい。

 長く生きて、人の持つ弱さゆえの狡猾さには強くなった。だが、その分この手の純粋さに滅法弱くなってしまったとほとほと思うのだ。

 

 皆も覚えておくといい。

 長く生きた竜は、正直な心に弱いものだ。




・竜
ドラゴン。今年1000歳になった。
達観したようなことを言ってはいるが、何だかんだと構いたがり。

世界中の成層圏の向こう側を飛んでいる。

昔は競争相手が居た。
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