すごい。
何が起こったんだ今のは。
今起きたことをありのまま話すと…
周りの景色が変わって場所を移動した。
言ってる意味がわかるかい?
何ふざけたことを言ってるんだと思っただろう?
でもほんとに今目の前で起こったんだ。
まるでホログラムが解除されて、外の景色が現れた…みたいな。
そして僕は今、そのトンデモ移動手段を経て、飄々と生い茂った森の中にいる。
手入れされてる様子はなく、まさに野生、自然という感じ。
そのせいか高々と天へ伸びる木々が空を覆っていて少しばかり薄暗い。
耳にすっと入ってくるそよ風は少し冷たく、時折背筋をゾクっとさせる。
…先程までいた人たちはどこに行ったのだろうか。
周りには誰もおらず、ここにいるのは僕1人だけ。
それに、今自分が身に纏っている服に関しても無視はできない点が。
先程まで来ていた学校の制服から、謎の青い迷彩柄のジャケットに衣替えしてた。
見たことないデザインのジャケットだったが、右腕にあるロゴを見て瞬時に理解する。
そこにはデカデカと『DGP』の文字が入った刺繍があしらえられていた。
どうやらこれがここでの正装というわけか。
だとしたらいったいどんな場面での?
そういえば移動が始まる際、神殿でツムリが何かを始める合図を出していたな。
なるほど。
この服装はこれから始まる何かへ正装。
と言ったところか。
ツムリ『運命の第1回戦!最初のゲームは〜ハタトリゲーム!』
びっくりした!
どこから声が聞こえてきたと思えばツムリの声が『上』から聞こえてきたぞ。
近くから。スピーカーから。イヤホンから。
そういった所からではなく、
文字通り『上』から聞こえてきた。
ツムリ『これから皆さんにはジャマトに奪われた旗を取り返していただきます。旗の位置は皆さんのいるジャマーエリアのどこかに出現します。隠されている旗を皆さんで見つけ出してください!』
早速説明が始まった。
見知らぬ場所で見たことない服装に着替えさせられ、参加させられるイベント。
どんな手品かわからない手法でここまでの摩訶不思議を演出してくる番組サイド。
番組の内容よりももっと手前段階の説明が欲しいところだが、どうやらその願いは今叶いそうにないようだ。
もしかしたら身の危険が襲ってくることもあるかもしれない。
我が身のためにも、ここからは少し集中して話を聞いた方が良さそうだ。
ツムリ『旗の場所を突き止めるにはまず参加者とペアを組むことが必要です!エリアの全貌、参加者の情報はお手元のスパイダーフォンにお送りしました!情報を頼りにジャマトに襲われぬよう、ミッションを達成してください!』
これから始まるというハタトリゲーム説明を進めてゆく
攻略の手順に話が移った所で腰元に装着していたポーチがぶるぶると震える。
おいおい。何か入ってるのかよ。
恐る恐る開けてみると、そこには蜘蛛の形を模した携帯端末が入っていた。
すごい。
これ…
ツムリ曰くスパイダーフォンという名称らしいが。
起動するとゲームのタイトル画面が大きくでた。
そしてボタンを操作してスクロールしていくと、ゲームの詳細が載ってるページが現れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○第1回戦 ハタトリゲーム○
ジャマーエリア内にいる参加者とペアを組み、奪われた旗を取り返せ!
一、2人組のペアを作れ。ペアができたらエリア内のどこかに旗の場所が現れる。
二、旗のゲット条件は2人揃ってではないといけない。
三、ゲーム中ジャマトが出現するので、注意するべし。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ツムリ『ゲーム中、旗を奪われまいと奮闘するジャマトたちが出現します!気をつけて挑んで下さいね!』
ジャマトって。
さっき説明のあった怪物のことか?
ほーう。
ただのハタトリゲームじゃなく、サバイバル要素も盛り込まれてるのか。
まあ、ただのハタトリゲームってならそりゃ視聴者からしたらつまらないか。
説明は終わったのかこれ以上ツムリから説明がされる事はなかった。
よーし。
色々と不満はあるが、やらされるからには負けたくないな。
ハタトリゲーム。
クリアするためにはらジャマトなる敵からの襲撃を避けつつ旗を奪うこと。
その為にはまず相方を見つけなければならない、ということか。
この自然生い茂る森の中。
どれくらい広さのある場所がわからない所で闇雲に探すことはとても得策とは言えない。
こういう場合参加者に有利なミッションだったりツールがあったりするもの。
つまりは…
この中にゲームクリアとなるヒントが隠されているはず。
スパイダーフォンを起動して数秒。
予想的中。ビンゴだ。
スパイダーファンの中には、ゲームのルールが載っていた『DGP』というアプリの他に地図アプリがインストールされていた。
アプリを起動すると、簡易的なマップが出てきて、現在位置を知らせるアイコンが点滅していた。
うーん。
なんて質素なアプリなんだ。
地図は大体の地理しか表示されず、現在地を知らせるアイコンも見えづらい。
一昔前の携帯みたいだ。
ここがどこでエリアがどれくらいの広さなのか。
これじゃ詳細がわからない。
現在地を知らせるアイコンをよく見てみると、そのアイコンを中心に波状に広がるサークルが出ていた。
何かを観測しているのか。
相場で言えばGPSによる現在地。
もしくは、一定の距離が縮まると他の参加者の場所を知らせるシステム。
どちらかか、またはその両方。
これだけ低機能だと、どちらかあればマシか。
とりあえず歩いてみること数分。
アプリを起動しながら移動しているものの変化なし。
漠然と広い森の中を、生い茂る草木を掻き分け進んでゆく。
道なき道を歩いてさらに数分後。
ここでようやく動きがあった。
♪♪♪
期待していたアプリの反応。
音声を聞くや否やすぐにスパイダーファンの画面を見て見るとそこには見たことのない黒いアイコンが自分の近くに表示されていた。
こっから東の方角。
これはなんだ。
黒い鬼?
………。
嫌な予感がして表示されたアイコンとは逆の方向へ踵を返す。
しかし、鬼のアイコンが僕のペースを上回る速さで近づいてくると、アプリの振動が止まった。
そして。
訪れた静寂の中。
後方から。
草木を掻き分ける音と共に。
何かの鳴き声が聞こえてきた。
○第1回戦 ハタトリゲーム○
ジャマーエリア内にいる参加者とペアを組み、旗をゲットせよ!
一、2人組のペアを作れ。ペアができたらエリア内のどこかに旗の場所が現れる。
二、旗のゲットには2人揃ってではないといけない。
三、ゲーム中ジャマトが出現するので、注意するべし。