???「ジャ…ジャ…ジャ…」
⁉︎
なんだこの鳴き声⁉︎
背筋を舐めるように這いずる気持ち悪い声だ。
ここから早く離れろ。
そう本能が訴えかけ、早足から全力で駆け出す。
死に物狂いで全力で腕と足を回転させる。
けれど、走っていられる時間は短かった。
はあ…はあ…
元々日頃から運動してないことに加え、ここまでずっと歩き続けてきたことも重なり、僕の身体がとうとう悲鳴をあげた。
心臓が強く鼓動し呼吸も苦しい。
それでもどうにか走ってきたが、ついに限界。
傾斜に足を取られ、転がり落ちてしまった。
くっ。
奇跡的にも柔らかい土の上だった為、大事に至らなかったが震える気道からなる呼吸でむせ返してしまう。
ダメだ。
もう。
一歩も動けない………。
邪悪な気配は止まることなくこちらへ迫ってくる。
ポーチの中のスパイダーフォンの振動がより緊張感を増していく。
俺は腹を括り、大の字になり天を仰ぐ。
木漏れ日がちょうど顔に当たり、とても眩しく感じた。
ここまでか…。
目を瞑り、迫り来る脅威に身を委ねようとした…その時だった。
気配が迫って来る方向とは反対側の茂みが揺れ、そこから青いジャケットを着た男が飛び出した。
プレイヤー「がっ!!くそっ!!」
男はそのまま走り出しここから離れてゆく。
それからすぐに邪悪な気配が姿を現し、逃げていった男の後を追っていた。
???「ジャ…ジャ…ジャ」
複数体が真横を通る。
奇妙な鳴き声でコミュニケーションを図っているのか、会話らしき声が聞こえる。
でも、何を言ってるかわからない。
それに醜い見た目だ。
拒絶反応が止まらない。
茂みの隙間から見える、強烈な姿。
人型の怪物がボロボロの服を着て、刃物を振りかざしていた。
邪悪な気配の正体は…ジャマト。
映像で見たジャマトと少し格好が違う気がするが、生物的な特徴からしてあのジャマトに間違いない。
山賊ジャマト「ジャ…ジャ?」
逃げた男を追っているのか。
ジャマトは茂みを挟んだ真隣で屯し、動かない。
かなり疲弊してる様子だったから、そう遠くまで離れてないはずだが…。
それはつまり、僕にも同様の危険が差し迫っているということ。
なんともタイミングの悪い巡り合わせだ。
この茂みを超えられたら、まず助からない。
その前にひとつ確認したいんだけど…。
これは、捕まって終わりだよな?
流石に命までは取られない…よね?
山賊ジャマト「ジャ!ジャ!ジャ!」
遠方からジャマトの叫び声が聞こえた。
思わず身体を丸くして息をころす。
何か呼びかけるような声。
その声を聞いてすぐそばにいるジャマトの集団が反応し、声を上げたジャマトの方へと走り出した。
蠢くジャマトたちの地面を踏み鳴らす音と鳴き声が惜しみなく耳ね入ってくる。
その中に。
人間の悲鳴が混じり始めた。
参加者「ひっ、ひい!!来るな!!」
徐々に遠のいていく移動音。
その中に混じる男の悲鳴。
その様子から、じわじわとジャマトが男に迫ってることが容易に想像できてしまった。
そして。
参加者「あーーー!!!」
先ほどまで耳を支配していた音が途絶え、訪れる静寂。
風で揺れる木々の音がやけに大きく耳に響いていた。
僕は無意識に抑えていた手を口元から離すと、少しふらつく身体に鞭打ち、その場から去った。
ーーーーーーーーーー
なんだよ。
なんなんだ。
ハタトリゲーム。
名前を聞いた時は、ただ旗をゲットしてクリアする単純なゲームだと思ってた。
追加要素の鬼ごっこシステムもゲーム性あって面白いなって思ったし。
なのに…。
まさか、こんな。
命がかかったゲームだなんて。
帰りたい。
リタイアの仕方はないのか。
震える手両手でスパイダーフォンを操作するもそれらしい項目はどこにもない。
逃げ場などない。
リタイアすることも出来ない以上生きて帰るには。
…ゲームをクリアするしかないってことだ。
当てもなく歩き続けてどれくらい経ったんだろうか。
10分?20分くらいか?
木漏れ日程度だった森のカーテンゾーンを抜け、直射にさらされる山道を歩き続けている。
幸にもジャマトに遭遇することなく動けているが、不幸にも参加者と遭遇しないため一向にクリア出来る余地がない。
このままじゃ旗を取ることは出来ない。
それはゲームをクリアすることが出来ないことを意味する。
それだけは避けなければならない。
♪♪♪
握っていたスパイダーフォンからずっと待っていた通知が届いた。
蜘蛛の糸を掴むような思いでスパイダーファンを開く。
確認してみると、画面には白い丸のアイコンが。
初めて見る反応だ。
もしかしたらこれが参加者を示すアイコンかも知れない。
方角からしてここから2時の方向。
こんな地獄から早く抜け出してやる。
アプリを頼りに進んでいくと、自分の耳でも聞こえるほどの人の気配が感じとれた。
間違いない。
やはり参加者だ。
これでようやく一歩進める。
茂みを掻き分け見晴らしのいい場所へ出られた所で、僕の希望は絶望に変わった。
参加者(男)「原島さん!ありましたよ旗!」
颯爽と目の前を横切る青いジャケットを着た参加者。
その参加者が2人。
こちらに気づくことなく駆け抜けると、レーダーに反応がなかった地点に植えられた旗を掴み取り、空は高く掲げた。
「よっしゃークリアだ!」
これほど衝撃が襲ったことがゲーム始まってからあっただろうか。
希望を抱いていたがために余計に気持ちの落差が激しい。
他の参加者がクリアする瞬間を目撃してしまうなんて。
ぼーっとする頭が回復せぬまま、僕はまた当てもなく森の中を彷徨い始めた。
○第1回戦 ハタトリゲーム○
ジャマーエリア内にいる参加者とペアを組み、旗をゲットせよ!
一、2人組のペアを作れ。ペアができたらエリア内のどこかに旗の場所が現れる。
二、旗のゲットには2人揃ってではないといけない。
三、ゲーム中ジャマトが出現するので、注意するべし。
追加ルール、新しく提示して3箇所の旗のうち1つに辿り着け。旗は早い者勝ちとなり、3つ取られた時点でゲームは終了となる。