とある高校生のデザグラ体験記   作:スワンプボーイ

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第2ゲーム/ふらっぐでぃふぇんす 肆

 

ムース「はあ…はあ…はあ…」

 

シース「むり…もう動けない…」

 

ジャーコ「………。」

 

 

ツムリ『皆さんお疲れ様でした!これにて第1ウェーブが終了です!続く第2ウェーブが訪れるその時まで、しばしお待ちください!』

 

 

はあ…はあ…

身体を動かすことは愚か呼吸をすることさえ苦しい。

これでやっと第1ウェーブが終了か。

非常に厳しい戦いだった。

防衛時間ギリギリでの攻防。

もう少し終了の知らせが遅かったら、きっとこのゲームの結果は大きく変わっていただろう。

変身が解け、みんな大の字に寝転がって息を整える。

そんな中原島さんは1人、肩で大きく息をしながらも立ったまま息を整えていた。

 

 

石崎「んん…」

 

牧野「お…!日梨さん目覚めた…⁉︎」

 

 

気を失っていた石崎さんが目を覚ましたようだ。

僕が気づくより先に牧野さんが動き出すと、彼は起き上がる石崎さんの上体を支えた。

行き場を失い、未だ息が上がる身体をゆっくり腰を落としながら僕は離れたところから石崎さんの様子を伺った。

 

 

石崎「あれ…私……」

 

牧野「急に動くなって。ジャマトに襲われて倒れたんだ」

 

 

まだ朦朧としているようだけど、意識が段々とはっきりしていくように見れる。

よかった。

とりあえずは大丈夫みたいだ。

 

 

石崎「すみません…私迷惑を…」

 

牧野「大丈夫っすよ。言ったでしょ?いざという時は俺が助けに…」

 

原島「そうだな。今回は運良く防げたから良かったものの、このままじゃ足手まといだ。チームに1人でもそんな柔い奴がいたんじゃ、第2ウェーブを乗り切ることなど到底出来ない」

 

 

牧野さんの石崎さんを労わる言葉を、原島さんが遮り冷たく言い放った。

 

 

牧野「あんたさあ。こういう時くらいもっと寄り添った…」

 

原島「この結果を見ても、おまえはそれが言えるか?」

 

 

スパイダーフォンを開いて見ていた原島さんが、なおも牧野さんの言葉を遮り言い放つ。

僕らに背を向けて操作していた原島さんは『開いて見てみろ』とでも言わんばかりにこちらに向かって自身の持つスパイダーフォンを振りかざしていた。

僕と苛立ちを隠せない牧野さんは渋々といった様子で各々が待つスパイダーフォンを手にした。

 

 

牧野「ったく。なんだよ…」

 

石崎「私にも…見せて」

 

牧野「え?あ、うっす…」

 

 

画面を開くと『ランキング』なる部分が更新されたという通知が届いてた。

『DGP』と描かれたアプリを開いてみると、第1ウェーブ終了時点の途中ランキングが発表されていた。

 

 

牧野「これは…途中経過のランキングか…」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

1位 北エリア

 

『エルク ヘックホース ゴルゴラ メレオ』 

 

暫定Pt. 12,110

 

 

2位 東エリア

 

『ヒーポッポ ニッポ クローチ デュロン』

 

暫定Pt. 9,605

 

 

3位 西エリア

 

『ムース ダパーン ジャーコ シース』

 

暫定Pt. 7,030

 

 

4位 南エリア

 

『ギーツ オクタス ラゼブ モンガー』

 

暫定Pt. 6,880

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

僕たちがいるのは西エリア。

つまり順位は…現在3位ということになる。

 

 

牧野「あれだけ頑張って3位かよ…」

 

原島「これで分かったろ。今の状態じゃいくら頑張っても結果はたかが知れてる。このゲームを勝ち残る為には今以上にジャマトを倒しまくるしかないんだよ」

 

 

原島さんの言い分は理解できた。

僕たちが勝ち残る為には、より多くのジャマトを倒さないといけないということが。

でも、それでも…。

今までの態度は、状況を加味してもいくらなんでもドライすぎじゃないか。

 

 

牧野「さっきから黙って聞いてりゃ…。こんな命がかかった戦いをゲームだと?ふざけるな!自分が勝ち残るためなら他の人の命がどうなってもいいってのか!」

 

クラム「彼は間違っていませんよシース。これはゲーム。自らの理想を叶えるための命を賭けたサバイバルゲームです。故にこの大会がデザイアグランプリと呼ばれるようになった訳ですが」

 

石崎「あなたは…」

 

クラム「ご機嫌よう。プレイヤーの皆様」

 

 

林の奥から、この場にそぐわない綺麗な黄色いスーツを身に纏ったクラムが現れた。

その手にピンク色の宝箱を持って。

クラムの表情は神殿で見た時と同様、感情の乗ってないとってつけたような歪な笑顔をしていた。

 

 

原島「…運営が何の用だ?」

 

クラム「第1ウェーブ防衛成功おめでとうございます。3位で乗り切りました西エリアの皆様には報酬としてこちらのレイズバックルが送られます。どうぞ」

 

 

原島さんを除く僕たちはら互いに顔を見合わせると、クラムからピンク色の宝箱をそれぞれ受け取った。

 

 

クラム「さて。そのハテナミッションボックスの中にはいったいどんなレイズバックルが入っているんでしょう。ささ!開けてみてください」

 

石崎「…。」

 

クラム「ほう。ジャーコには『チェーンアレイ』ですか」

 

牧野「これは強いアイテム…なのか?」

 

クラム「シースには『プロペラ』」

 

原島「チッ。ハズレか」

 

クラム「ムースには『クロー』ですか…なるほど。あと1人。ダパーンは何を手にするんでしょう」

 

 

僕の箱には何が入っているんだろう。

ドキドキしながら開けてみる。

これはなんだろう。

白いバックルだ。

しかもこれは原島さんが持ってる紫のやつと同じ、大きめのバックル。

 

 

クラム「ほう…。ダパーンには『マグナム』が行き渡りましたか」

 

原島「…!」

 

クラム「それでは皆様!第2ウェーブも多大なるご活躍を期待しております。ジャマトを撲滅し、是非我々の世界の平和をお守りください。では、私は先にデザイア神殿で皆様の帰還をお待ちしております。幸運を祈りますよ。仮面ライダー」

 

 

ミッションボックスを届け役目を終えたのか、クラムはそれだけ言うと林の奥へと姿を消した。

再びこの場には4人の時間が訪れる。

また力を合わせてジャマトを倒さなくては。

そうしないといけないのに。

西エリアには、消して良いと呼べなかった雰囲気が最初と比べてより険悪なものと化していた。

そんな中。

 

 

原島「おい高校生。アイツから貰ったバックル、見せてみろ」

 

 

原島さんがはやあしでこちらに近づいてきた。

その足取りは何か危機迫るものを含んでいるように感じる。

そして目の前までやってくると、こちらの返事を聞かずしてバックルを持つ僕の右手を掴み、自身の方へと引き寄せた。

 

 

原島「これは…ほんとにマグナム…。アタリじゃねえか」

 

牧野「おい。なんだよ。ちゃんと説明しろよ」

 

 

なんだ?

この原島さんの様子の変わりようは。

牧野さんも僕と同じ違和感を覚えたらしく、語気を強め説明を求めるヤジを飛ばしてくる。

けれど原島さんはそんな声を気にする素振りを見せず、僕の目を見て訴えてきた。

 

 

原島「細かい説明は後だ。今からそれを俺に渡せ。そいつがありゃ、まだ勝機はある」

 

 

さっきまでの僕たちを突き放す態度とは僅かに違う。

このバックルにはそれほどの力か秘められているのか。

そういや原島さん、バックルを見て『アタリ』『ハズレ』とか言ってたな。

もしかして…これのバックル、原島さんの言うところの『アタリ』なんじゃ。

 

 

原島「それはマグナムレイズバックル。このゾンビと同じ、強力な力を秘めたレイズバックルだ。俺ならそれを扱える。だから俺に…」

 

 

やはりそうなのか。

それならば。

僕は未だ力強く握ってくる原島さんの腕を左手で解くと、牧野さんに支えられながら座る石崎さんの元へ向かい、マグナムレイズバックルを手渡した。

 

 

石崎「…え?」

 

原島「おい。何のつもりだ?」

 

 

原島さんが欲しがるほど力を秘めたレイスバックル…なのだとすれば。

これを使うべきなのはこの中で戦闘経験がある原島さんじゃない。

1人でも突破されればあっという間に旗を取られてしまうんだ。

パワーバランスを考慮すれば、1番相応しいのは現状戦闘スキルが低い石崎さんがベストだ。

なにより激しい運動量を求められる近距離武器と違って、マグナムは名前からして恐らく銃火器を使う形態だろう。

チェーンアレイという重たいもの振り回すよりもずっと扱いやすいに違いない。

 

 

石崎「いいの…?私が使っても」

 

 

原島さんの反応は石崎さんも見ていたはずだ。

よってこのバックルがより強力な力を秘めているであろうことも勘付いてるはず。

僕の行為はきっと、広い視野で見ればこのデザイアグランプリを勝ち抜くにあたって敵に塩を送る行為だろう。

相手の事をよく見ている石崎さんのことだ。

きっとこんな僕の考えまでお見通しなんだろうな。

だから今自分がこんな状態だというのに僕からバックルを受け取ることに対し、抵抗を覚えている。

石崎さんはつくづく優しい人だと改めて感じた。

だからこそ僕はこの人に最後まで生き抜いて欲しいと思ったんだ。

僕は不安そうに問いかけてくる石崎さんに対して視線を合わせると、力強く頷いた。

 

 

牧野「なるほど。読めたぜお前の考えが」

 

原島「…何を考えている。その女が使うよりも俺の方が確実に…」

 

牧野「別に良いじゃねえか。ゾンビも充分強え装備なんだろ?だったらそれで戦えてるオッサンには必要ねぇじゃねぇか。コイツのバックルは日梨さんが使う。そうすりゃオッサンがいう足手まといの問題は解決。これでみんな心置きなく戦えるってわけだ。何か問題あるか?」

 

原島「このクソガキ…」

 

 

ツムリ『皆さん襲撃に備えてください!山賊ジャマトの群れを確認しました!まもなく【フラッグディフェンスゲーム 第2ウェーブ】を開始します!』

 

 

ここでツムリから第2ウェーブを知らせが。

どうやらゆっくり話をしていられるのもここまでのようだ。

 

 

石崎「原島さん。私からもお願いします。もう迷惑をかけたりしません。必ずチームに貢献して見せます。それに…勝ち上がって願いを叶えたい思いはあなただけじゃないですから…」

 

原島「……。」

 

 

牧野さんに支えられていた石崎さんが自力で立ち上がり、原島さんに訴える。

原島さんは眉間に皺を寄せ、弛まない。

説得できるかわからない。

それでも、どうにか石崎に使ってもらいたいんだ。

 

 

原島「…まあいい。だが少しでも俺が使う方が良いと判断した場合有無を言わさず取り上げる。いいな」

 

石崎「はい」

 

牧野「よし。これで決まり!」

 

 

牧野さんがポンと手を叩いたのを皮切りに僕たちはまた互いに背中を任せ、陣を取るため動き出した。

林の奥からは群れをなして迫り来るジャマトの足音が聞こえてくる。

第2ウェーブがもう間も無く始まる。

最後の勝負の時間。

ここで良い結果を残さなければ勝ち残ることはできない。

現状3位の今、脱落となる最下位とのボーダーラインはすぐそこに迫っている。

少しでも多くスコアを稼いで順位を上げなければ。

 

 

石崎「ふーっ……」

 

 

石崎さんの深呼吸がこちらにまで聞こえてくる。

そんな緊張した面持ちの石崎さんが僕のところまでやってきた。

 

 

石崎「ありがとう。私、絶対負けないから。君の好意にも報いるためにもね。それとコレ。白いレイズバックルより心許ないかもしれないけど」

 

牧野「なになに。2人で内緒話?」

 

石崎「いえ。別に大したことは」

 

 

石崎さんは牧野さんがそばに来たのに気がつくと、僕の手にレイズバックルを握らせて距離を取った。

ほんのりと口角を上げて柔らかい口調で話していた石崎さん。

さっきの表情はいったいどんな思いが込められていたのだろう。

どことなく今まで向けられていたモノとは違うような。

例えるなら、挨拶だけ交わす近所に住むお姉さんから部活の先輩と後輩の間柄に変わった…みたいな。

…。

わかりづらくなったかもしれないけど要は、それまでの八方美人の接し方から、少し距離が縮まったような気がするということだ。

 

 

原島「……。」

 

牧野「説得ついでにもうひとつ。これが終わって勝ち抜いたらデザイアグランプリのこと、洗いざらい全部話してもらうからな」

 

原島「フッ。だったらいっそうのこと気を抜かないことだな。おまえも決して良い働きをしているとは言えない。チームのために少しでも多くスコアを稼ぐことに集中しろ」

 

牧野「へ。言われなくても」

 

 

ツムリ『皆様準備はよろしいですか?これより【フラッグディフェンスゲーム 第2ウェーブ】スタートです!』

 

 

少し不機嫌な様子の原島さんがこちらに背を向けて離れていく。

ツムリのナビゲートを皮切りに僕らはレイズバックルを構えると、腰に巻いているデザイアドライバーに装填した。

 

 

デザイアドライバー(ジャーコ&シース&ダパーン)『SET』

 

3人「変身」

 

 

石崎さんのは右側に『マグナム』が。

牧野さんのは右側に『プロペラ』が。

僕のは右側のスロットに『チェーンアレイ』のレイズバックルが装填された。

 

 

デザイアドライバー(シース)『ARMED PROPELLER. READY…FIGHT』

 

デザイアドライバー(ジャーコ)『MAGNUM. READY…FIGHT』

 

デザイアドライバー(ダパーン)『ARMED CHAIN ARRAY. READY…FIGHT』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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