愉悦系外道麻婆神父になりたくて!   作:伊勢うこ

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 感想、高評価などを下さった皆様、ありがとうございます!
 予想以上にたくさんの方に応援して頂けて嬉しいです。

 1話を書いてる時にガチャ回したらラス峰神父引けました。
 書いたら当たるってマジなんすね・・・。


キレイ・コトミネ

 

 己をそうであると自覚したのは何時のことだったか。

 

 

 歳がようやく片手の指の数を満たそうとした頃。

 ふと姿見で自分の姿を見た。

 

 そこに映っていたのは、死んだ眼を持つ子供。

 一切の光も宿さぬ、深淵の底のような重苦しいその瞳。

 

 そして、極め付けは「キレイ」と名付けられた自身の名。

 

 間違いない、これは────

 

 

 

外道神父やんけ!!?

 

 

「どうしたのだ、キレイ?」

「ウェホン……いえ。何でもありません、父上」

 

 

 

 ────言峰綺礼。

 

 大人気作品Fateシリーズにおける神父。

 聖杯を巡る魔術師とそのサーヴァントによる大儀式・聖杯戦争の監督役として登場する。

 万人が美しいと思えるものをそうとは感じられず、人の不幸でしか自分を実感出来ないという聖職者としても一人間としても不遇な性を持って生まれたために、若き日はその歪んだ己の性質をどうにかしようと懊悩したという過去をもつ。

 教会の清き教えを深く理解出来てしまったことが、彼にとって最大の不幸だったとも言えよう。

 

 尤も最終的には己の歪みを受け入れた上で愉悦っていたが。

 そして好物は紅州宴歳館・泰山特製の激辛麻婆豆腐(重要)。

 

 

 自分がいま、彼とそっくりな少年になったと悟った瞬間。

 脳に溢れる前世の記憶。

 膨大な情報の濁流に暫く苦しみつつ、同時に一つのことを悟った。

 

 

 神は言っている。

「オマエ外道麻婆神父ロールヤレ」と。

 

 

 そう決めた俺、否、私は早速外道神父になりきるべく行動を開始した。

 

 この世界(Fate時空ではないらしい)で最大規模の宗教組織である聖教の中でもそれなりの地位についていた父。

 その父の仕事に積極的についていき、聖教の教えを学んだ。

 それと同時にかつては腕利きの魔剣士(この世界で魔力を扱う剣士の総称。騎士などもこれにあたる)であった父から戦いの術を教わる。

 

 残念ながら拳法、というより八極拳に関してはこちらの世界には存在しなかったので、前世の記憶頼りに独自で研鑽する他なかった。

 目指せマジ狩る☆八極拳! 

 ぶっちゃけ剣で斬るよりも殴った方が早くね? (脳筋)

 

 

 そうして幾年に渡り修行を積んだ。

 確かに強くはなっただろう。

 しかしそれだけでは不足だった。

 私が求める基準は、あくまで人外並みの戦闘能力を有する代行者。

 

 今のままでは遠く及ばない。

 そこで密かに魔力操作を磨く訓練を始めた。

 

 魔力操作が重要な要素であることには気付いていた。

 何せ魔剣士は魔力で身体を強化することで非魔剣士に対するアドバンテージを保っているのだ。

 その魔力操作を怠って良い道理は無いだろう。

 八極拳の訓練の際も、体内で練り上げた魔力で身体能力を向上させた方が威力が増したのだから。

 

 体の内側での操作はそれなりのものになったが、問題は体の外側だった。

 この世界では魔力は体から一度離れると途端に霧散してしまう。

 戦闘において、魔力の用途が身体機能向上と武器の強化以外に碌なものがないのもこれが原因。

 よって外側へ魔力を作用させるには直接触れる他ない。

 魔力を流し、それがどのような影響を与えられるか把握する。

 

 そこで私が目をつけたのが、悪魔憑きだった。

 

 

 悪魔憑き。

 前世の所謂空想上の存在であった悪魔が人に乗り移るものとは異なり、こちらでは病という認識だ。

 体が黒く変色し、腐っていく不治の病。

 症状が進行すると醜い異形の存在に成り果てるため、発症者は属していたコミュニティから排斥され悪魔祓いとして教会に送られる。

 一度教会に送られると、二度と元の場所には戻れない。

「浄化」という体で始末するからだ。

 

 教会が発症者を集める本当の理由は後で語る団体に関係があるのだが、それはまぁいいだろう。

 

 

 

 教会の人間の目を盗み、幾度かの実験の末に発症の原因は魔力の暴走であると判明。

 そして発症するのは優れた魔力量を有する者であることも分かった。

 

 驚いたのはこの後だった。

 その日も教会に一人の悪魔憑きが運ばれ、私はこっそり実験を開始。

 魔力が暴走して発症するなら、外部から魔力をコントロールし暴走を抑制すればいいのではないか。

 そうして魔力の暴走を抑えるようとした際、つい興が乗って「洗礼詠唱」を試みたのだった。

 ロールプレイヤーの醍醐味を味わいたかったんだよ! 

 

 すると驚きの結果に。

 何ということでしょう。

 白い光に包まれ、悪魔憑きの少女は白髪の美少女になったではありませんか。

 これには匠もビックリ。

 どういうことだ・・・!?(困惑)

 

 

 いきなり人の姿に戻ったので滅茶苦茶驚いたが、少女が目を覚ます前に慌てて近くの村にこっそり届けた。

 仮説の証明に成功したこともそうだが、この世界でも洗礼詠唱が使えると知れたことは大きい。

 これで外道神父ぶりに磨きがかかるというもの。

 

 当然、捕まえていた筈の悪魔憑きの少女がいなくなったと知った教会は大混乱。

 慌てふためく彼らの姿に、つい込み上げるものを感じたことは内緒だぜ。

 ただ、その日飲んだワインは美味しかったです(愉悦)。

 

 

 外部への魔力操作を覚えたことで、訓練と並行して武器の開発にも着手した。

 型月の聖職者の武器といえばやはり「黒鍵」。

 近距離戦メインのこの世界でも白兵戦の武器としてはあまり期待できないが、これは本来遠距離武器。

 

 あの魔力を流すことで刃が生えるロマン投擲武器の材料探しから始めたが、意外なものだった。

 

 スライムである。

 最弱モンスターの印象が強いが、なんとこちらの世界のスライムは魔力伝導率が脅威の99%。

 しかも魔力を流せば大きさや形、硬度まで自由自在ときた。

 まさにうってつけの素材。

 これならいけるかもと試行錯誤を然程繰り返すこともなく形だけだが一応完成。

 癖があるので熟練の使い手になるには訓練が不可欠だし、本来は霊的存在用だが洗礼もされてない。

 本当の完成はもう少し先になると理解しつつ、とりあえず指に挟んで訓練しまくった。

 

 

 そんな感じでロールプレイを始め早十数年。

 私は無事拳一つで自分の背丈以上の岩を粉砕できる程度には強くなった。

 

 成長した私は聖教の神父が身につける白い修道服の着用を許されたが、これを固辞。

 代わりに着たのは当然、黒い修道服。

 外道神父ロールプレイヤーとして、これは譲るわけにはいかない。

 父からは最初反対されるも、「信仰とは見た目や格好によるものではなく云々」と自らの熱い信仰心(笑)を語って説得すると「お前の信仰がそれほどだったとは。嬉しく思うぞ」とあっさり許可が降りた。

 

 計 画 通 り(ゲス顔)。

 

 

 その後は父の仕事を手伝いながら各地を転々とした。

 聖教関係の式典に呼ばれることも多い父についていく傍らで王族とも顔を合わせ、その一部とは今に至るまでなんやかんや関係が続いたが割愛。

 父が没した後はミドガル王国の王都で一つの教会を預かることになる。

 

 

 

 以上が私、キレイ・コトミネの大まかな半生だ。

 顔や背丈といった見た目や格好、実力まで最大限あの外道神父に近づけるべくあらゆる努力を惜しみなくしてきた。

 

 だが、私は彼とは違う。

 いくら格好や強さといった諸々を真似しようとも。

 私は彼になれないと、他でもない私自身が一番よく理解していた。

 何故か? 

 

 

 それは、私は人並みの幸福を()()()()()()()()からである。

 万人が美しいと思うものを見れば美しく感じる。

 若き日の彼が追い求めた普通の感性を、私は確かに有していた。

 

 人の不幸を見て悦びを得ることは確かにあった。

 だが、そうではないのだ。

 

 人の不幸でしか悦びを感じられなかった彼と、人の幸福も同じように感じられる私。

 そこには大きな隔たりが存在する。

 外側だけでなく、内側まで模倣しなければ真のロールプレイとは言えないのではないか。

 しかし「人並みの幸福を感じられる」という幸福を捨てるということは、彼がかつて求めた理想を自ら捨て去るということだ。

 彼にとっては許せざる行い。

 

 ロールプレイヤーとして、どちらの道を選ぶべきか。

 

 

 いつも考えないようにしていた。

 考えないように、修練に、ロールプレイにのめり込んだ。

 彼になりきるべく、話し方や立ち振る舞いまで徹底的に意識した。

 自己暗示をかけ、精神そのものを書き換えようとしたこともあったが徒労に終わった。

 

 

 そして。

 もうこれ以上彼に近づくことは出来ないと悟り。

 私は失意の底へと落ちていった。

 

 

 

 王都にある教会の神父となって数年後。

 私はその日、偶には外食でもするかと着替えて外に出た。

 時刻は丁度、昼餉時。

 通りにある店は人で混雑するので、一歩外れた道にある飲食店を探し────

 

 

 ────そこで運命に出会う。

 

 

「莫迦なっ……!?」

 

 

 バァアアアアン! と鳴り響く銅鑼の音が聞こえた気がした。

 

 其処には、この世界には存在し得ない筈の店が。

 そしてその店では、この世界に未だ存在しない筈の品が提供されていた。

 

 店の名は「タイザン」。

 そしてその店の名物料理「激辛マーボードウフ」。

 

 言峰綺礼の好物が、其処にはあった。

 

 

 迂闊だった。

 何故忘れていたのだ。

 いや、違う。思い込んでいたのだ。

 この世界には存在しないとばかり。

 

 かつて懸命に探し求めた。

 仕事でミドガル王国以外の国にも足を運んだ際に、合間を縫って探したこともあった。

 しかし何処にも無かった。

 故に知らず知らず探すことすら諦めていたのだ。

 

 確かめなければならない。

 迷わず入店し、注文した。

 運ばれてきたそれは、まさしくマーボー。

「殺人的」「外道」と称されるに相応しい赤さ。

 そして嗅ぐだけで脳髄が痺れるような辛さ。

 

 一口食べ、理解した。

 

 ────これは本物で、己は偽物に過ぎないと。

 

 しかしこうも感じた。

 確かに私は彼にはなれないかもしれない。

 だが、それでいい。

 たとえ本物になれずとも、偽物は偽物なりに歩んでいける、と。

 己の中の葛藤を、私はその日受け入れたのだった。

 

 

 なお、完食出来るようになるまで暫く通い続けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 神父を続けていくうちに。

 マーボーとは比べるべくもないどうでもいい、取り止めもない些細なことだが、ディアボロス教団とかいう頭のおかしい集団が教会内に巣食っていることに気づいた。

 なにやら伝説の魔人ディアボロスの力を私物化し、世界を手中に収めようとしているとか。

 教会が悪魔憑き集めにあれだけ必死になっていたのもその関係らしい。

 

 個人的には教団にも魔人にもそこまで興味はない。

 それが「この世全ての悪」と言えるような存在なら是非もないが、さて。

 だがまぁ、愉悦る為の玩具くらいにはなるかと、私は悪魔憑きとなった者とその疑いがある者の居場所を調査した。

 

 時に教団にその位置を教え、時に彼らと敵対する地下組織にその情報を流したりと。

 二つの組織の相争う様を愉しませてもらった。

 

 悪くない。

 しかしまだだ。まだ足りない。

 もっと愉しませてくれ。

 私が、キレイ・コトミネが、己を実感するために。

 

 

 さぁ。

 今日も祈りを捧げよう、諸君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、俺結婚してなかった(ガバ)

 娘もおらんやん(ガバ)

 

 ……。

 俺、娘が出来たらカレンって名付けるんだぁ……(白目)

 




 ガバガバロールプレイヤー、キレイ・コトミネさんでしたー。
 あと綺礼って難しいよねっていう話。

 主人公が外道神父になりきるとかいうこの世の歪みみたいな作品ですが、よろしければ感想、高評価などいただければ幸いです。
 よろしくお願いします。
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