【完結】愛慾のヒーローもどき   作:土屋 四方

10 / 202
※早めのお知らせ※
 本作は、USJ編で発生する重大な原作乖離をきっかけに様々な前提がドミノ倒しで激変するため、USJ以降はオリジナル展開が増えていきます。予めご了承ください。


入学〜USJ
1.個性把握テスト──地味な激闘


 雄英高校、入学初日。

 私は百と()()()教室に入った。そこで久しぶりの顔を見つける。

 

「あ、天哉くんもA組なんですね。よろしくです」

「兵怜さん! 君が同級生になるとは……いや、高い目標が身近にいることを嬉しく思うよ。改めてよろしく!」

 

 百が怪訝そうにしているので「インゲニウムの弟さんだよ」と紹介しておく。あの人には一昨年、短い間だけどお世話になった。天哉くんと知り合ったのもその時だ。

 

「兵怜さんがいるからだろうか。ヒーロー科は一クラス二〇人のはずなのに、席が二セットも多くあるんだ」

「あー、それは……」

 

 首を傾げる天哉くんに、心当たりのある私と百は口籠る。被身子の学年が大量除籍になったことは普通に話しちゃっても良いんだろうか。

 適当に誤魔化しながら話している間にチャイムが鳴り、同時に無精髭の男性が教室に()()()()()。そのまま一方的に「着替えてグラウンドに集合」と告げる。

 自己紹介は「担任の相澤消太だ」の一言だけだった。

 

 


 

 

 急き立てられるように個性把握テストが始まった。

 入学式やガイダンスだとか、最下位は除籍だとか、A組の人数だとか──疑問は山ほどあるが充分な説明はない。

 

 カリナと百だけは人数について承知している。被身子が留年して一年生をやり直すため、人数が奇数にならないよう二一名を入学させたのだと。

 一方で二人だけが不可解に思う点もある。『担任の相澤』を名乗る人物が、雄英高校の教師ではないという大問題だ。

 

「(……あれ、被身子さんですわよね?)」

「(間違いないね。先に出たのってこの為か)」

「(本来の教師の方に何かあったのでしょうか)」

「(んー、どうかな)」

 

 担任教師・相澤消太として振る舞うその人物は、実に巧妙に演じているものの【変身】した被身子である。捕縛布は使いこなすが当然【抹消】は使えない。

 

「(被身子はミスター合理性って呼んでた。なら無駄を省いたとかかな。被身子が去年やったことをそのまんまやらせとけーみたいな)」

「(それは合理的というか……随分と型破りですわね?)」

「(被身子の独断だったりして)」

 

 もちろん本物の雄英教師による指示に決まっている。二人は密やかにクスクスと笑いあった。

 しかしじわじわと不安に曇る百の顔色。常識的にありえないことでも被身子の場合は言い切れないからだ。見かねたカリナがあちらこちらを指さして宥めにかかった。

 

「(ほら、幾つかカメラがこっち向いてるし、あっちの木陰からも誰か見てるっぽいからさ、他の先生が知らないわけじゃないはずだよ)」

「(そう……ですわね。流石に任せきりにはしませんわよね)」

 

 実のところ、木陰にいるオールマイト(トゥルーフォーム)を含め雄英教師の大半は、相澤本人がテストを監督しているものと思っている。

 本物は当然、体力の温存中だ。

 

 


 

 

 個性把握テスト。百と私は真剣に競おうと誓い合った。

 

 

 短距離走。

 裸足+自前のスパイク(爪)でダッシュ。結果は五秒をぎりぎり切る位。百に惜敗。天哉くんには大敗。種目六位。

 

 握力。

 筋肉で百の機械的な万力と競ってみた。また負けた。種目三位。

 

 立ち幅跳び、反復横跳び。これは普通に身体能力で挑む人が多かったな。私もそうした。

 どっちも百には勝ったけど、クラス順位はそこそこ。

 

 遠投。

 何をしても良いというから爪の先に刺して、その爪を伸ばしてみた。ぎゅいんと。

 

「あー、スマン兵怜。一部でも触れてると計測が始まらんようだ」

「あ、そうでしたか」

 

 投げてないと言われちゃその通りだから、仕方ないと爪を縮……あ。

 

「やば、抜けちゃった」

「お、測定されてるぞ」

 

 遠くの空中でぽろりと落ちたボールが、ほぼ垂直に落ちて──記録、一m。ニヤニヤしながら結果を見せてきた被身子先生を睨み返す。

 

「まさか今のも結果になるんですか?」

「二回やって良い方だけ残す。ほれ早よ」

「(今夜覚えてろ)」

「(きゃー♡)」

「(その姿でその表情やめて怖い)」

 

 あまりアイコンタクトを続けていると周りから不審がられる。渋々二投目の準備に入った。

 裸足になって足の爪を変形させる。軸脚は真っ直ぐ突き立てて固定し、蹴り脚で独楽のように回転し、てェッ!!

 結果は八〇〇mちょいで種目三位。

 一般入試トップだったからと最初にデモンストレーションをした百の記録には届かなかった。

 一位、麗日さんの∞はしょーがない。素直に脱帽だ。

 

 んー、私も四位の緑谷くんみたいにパワーで攻めた方が記録は伸びたかもな。

 〔身体変造〕の扱いにも随分慣れて、筋量を大幅に増やしたパワースタイルも一応はモノにした。使う気はないけど自傷とお説教覚悟の過剰強化スタイルも用意はしてある。

 それでも、指一本で七〇〇越えってのは真似できない気が……緑谷くん凄いな? 最初に腕一本つぶしかけてた件もかなりヤバいけど。強引に止めた被身子GJ。

 

 持久走。

 百のスクーターには敵わなかったよ……あと天哉くんにもまた負けた。走りで彼に勝つのは厳しいな。

 爆豪くんとかいうお子様とは僅差になったけど、どうにか種目三位。

 遠投で緑谷くんに絡んだ時といい、こいつのメンタル本当に高校生か? 私が苛立ちを見せたら被身子が粛清しかねないから笑顔で流してあげてんだからね?

 

 上体起こし。これも普通に挑む生徒がほとんどだった。

 あからさまに対抗意識を燃やす爆豪くんが絡んできたので必要以上に頑張ってしまった気がする。初のクラストップ。一つくらいは獲りたかったから安心した。

 

 ラスト、長座体前屈。通常の人体構造だと、どう頑張っても七〇cmには達しない。この範疇のトップは七位の芦戸さん。身体柔らかいなー。

 僅差の六位は千切れそうなくらい【イヤホンジャック】を伸ばした耳郎さんで、五位は障子くん。【複製腕】を目いっぱい重ねて頑張ってたけど……蛙吹さんの舌に敗北。その蛙吹さんも常闇くんの【黒影】には敵わなかった。

 

 長座体前屈なんて地味な種目とは思えないほどの接戦。でも──ごめんね、ぶっちぎりの一位&二位は私と百で予約済みなんだ。

 計測に挑む前、被身子先生に確認する。体育館の遠い方の壁を指差して。

 

「先生、私達あっちの壁まで余裕で届きますけど」

「なら同率一位……いや、よーいドンで速さでも競え」

「お、良いですね」

「でしたらわたくしから挑戦しますわ」

 

 不敵な笑みを交わして、準備に入る百を見送る。

 レギュレーションは被身子先生が手早く決めてくれた。『コの字型の計測器は“上半身で”押すこと』、『計測開始後に創った物に限り道具を使っても良いが、【創造】もその操作も“上半身で”行うこと』。

 足の爪を伸ばすとか足裏からの【創造】はNGってことだね。

 一応は“前屈”なんだから上半身を使えというのは道理だけど──少しばかり、百に厳しいルールかな。

 【創造】には皮膚の面積が重要で、指先から創れるのは細いものだけだ。でも向こうの壁はそれなりに遠く、細すぎる棒だと自重で折れかねない。かといって掌から生成すると僅かにスタートラインが後退してしまうのがスピード勝負では気になるところ。

 私は指先にある爪を伸ばすに決まっているからね。身体の柔軟性も私の方が上だし。

 

 見守るクラスメイト。一瞬の沈黙。

 百は片方の腕だけを真っ直ぐ、指先までびしっと前に伸ばしている。どうするつもりだろう?

 鳴り響く合図と、幾つかの異音。最後の衝突音は──床を滑った計測器が壁にぶつかった音だ。スタートの合図から二秒も経っていない。

 ……頭の柔らかさで負けてたなぁ。

 

「え、今何がどうなったん?」

「兵怜、解説してよ解説」

 

 麗日さんと耳郎さんに促されて、ぐったりとだるそうにしている百を指差す。正確にはその横に降ろされた箱状の物体を。

 百は、伸ばしていた腕の前方ではなく上側全体──手の甲から二の腕辺りまでを使って【創造】を発動した。

 

「あの長い箱はいわば砲台です。計測器が壊れてないので何か柔らかい弾頭を発射したんでしょう。器用だなぁ……」

「砲台って、でも火薬の炸裂音なんてしなかったわ?」

「電磁加速でしたから」

 

 蛙吹さんの問いに答えると、周りで聴いていた男子勢が謎の盛り上がりを見せた。レールガンとかコイルガンとか大好きだね君達。

 ちなみに火薬は法律的な縛りも面倒だし事故も起こりやすいので、時間のあるシチュエーションでしか創らないと決めているらしい。だから発射系はない──と思ってたんだけど。やられたなぁ。

 

 元々【創造】は発電が得意ではない。やろうと思うと、磁石を動かす機構にコイルにコンデンサに……色んな細かい部品が必要になるからだ。でも今回、百が創った砲台の構造はある意味シンプル。だからあの一瞬で創れた。

 シンプル過ぎて工学系の人は分解しても動力が分かんないかも。あれは言わばバイオパーツ……デンキウナギとかの発電板に近いものだ。

 そう、〔身体変造〕ができたことで進化した【創造】の新たな力。疑似血液とかを創れるようになったとは聞いてたけど、こんな隠し玉まで持ってたなんて。

 

「やるじゃん、百」

 

 言葉を交わしながらすれ違う。今度は私の番だ。

 

「カリナさんの全力を見せて下さいまし」

「言われなくても」

 

 良いね、すごく良い。今すぐ抱きたい──それは帰ってから。もうちょっとだけ我慢だ。

 

 

 

 結果、本当にぎりぎりで私の勝ち。

 雄英のモットーに則ったまでである。……根性論とも言うけど。思いっきり爪を伸ばしただけなんだけど。頑張ったのだ。

 難しい作戦とか秘策とか無くて悪かったね!

 

 でも総合一位は百に獲られた。無念。




 普段は我慢していますが章の区切りを越えたので乞食をさせてください。
 感想・ブクマ・特に評価。飢えております。

 低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)!
 なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ!

 次話、カリナの性欲の話(いつも通り)。
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