【完結】愛慾のヒーローもどき   作:土屋 四方

11 / 202
 評価乞食をしたらぽこぽこと入れて頂けました。ありがとうございます!
 今回は……安全対策のお話。


2.性欲裁判

 個性把握テストを終えて放課後、校門を出て少し歩いたところで百が訊いてきた。

 

「体調は如何ですか? 少し無理をしているようですが」

「体調ってなんのことー?」

「怒りますわよ?」

 

 もちろん性衝動の話なのは分かってる。百に言わせてみたかっただけだ。

 

「んー、まぁ昂ってはいるかな。でも抑制はしっかりできてるよ、【先物代謝】様々だね」

「本当ですの? 先程から目つきが、その……」

「これは百だからだよ」

 

 ギラついた目をしてる自覚はあるし、半分はわざとだ。恥ずかしがる百ってどうしてこんなにえっちなんだろう。その媚態を愉しんでいると背後から声がかかった。

 

「二人とも……ここ路上ですよ」

(サカ)ってたのはカリナさんだけですわよ!」

「大声で盛ってたとか止めてくれるかな」

 

 盛ってはいたけれど。いるけれど。

 まだ見ぬ担任教師(本物)と話していただろう被身子も追いついてきたし、早く帰って発散しようそうしよう。

 

 

 

 ちなみに現在、私達は一つ屋根の下に暮らしている。親元を離れた子供達が助け合えるようにという名目で、同じアパートで一人暮らし……いやもう明らかに三人暮らしだけどね。

 

 素晴らしいスイートホームである!……と思ったけど前言撤回、きわめて憂鬱。

 

 必要性は理解しているけど。してるけども。恋人プラス両親(テレビ通話越し)の計四人に、『クラスメイトそれぞれにどのくらい性欲を感じたか』を報告しなきゃいけないってあまりにも地獄じゃない? つらい。

 まぁやるしかないから整理していこうか……。

 

「実を言うとね、覚悟してたほどじゃなかったんだ。強く惹かれたのは三人。ちょっと気がかりな人が……これも三人かな。他は、私にとってはありふれた“個性”だったみたい」

 

 一位は迷わない。【黒影】の常闇くんだ。アレは強い、本当に強い。もしかすると私の“個性”は畏れている。本来なら二〇〇くらい湧くはずの欲求が恐怖のせいで減衰されて、それでも一五〇ある、みたいに感じられた。

 二位は……【無重力】の麗日さん。次が僅差で【半冷半燃】の轟くん、かな。常闇くんを一五〇として麗日さんが一〇〇、轟くんは……九八、ぐらいの感覚。

 

「数字はあくまでなんとなくね? でも大体そんな感じ」

 

 そう告げると、被身子達は首を傾げた。

 

「少し意外……ですわね?」

「テストの順位とはあんまり関係ないんですねぇ」

 

 その三人がどんな“個性”なのか、お父さんが百に訊いて詳しく書き留めている。百とも二年弱の付き合いになるとはいえ、あからさまに娘の方が信頼度が低くて悲しい。

 お母さんからは別の質問だった。

 

「轟っていうと、エンデヴァーの子供かね」

「んー? あぁ、そう言えばそうらしいね」

「リナちゃん今日あの人と話してましたっけ?」

「推薦入試の時にちらっと聴こえただけ。忘れてたよ、炎は使ってなかったから」

 

 目に見える形で炎を出してたらすぐに連想できただろうけど、推薦の入試でも今日のテストでも氷ばかり使ってた。その後始末もしてたから、高熱は扱えるみたいだけど。

 

「炎司の子が氷……? あのバカタレめ……」

 

 わ、なんかお母さんが凄い不機嫌。触れないでおこう。

 丁度お父さん達も終わったようで、続きを促してきた。

 

「『気がかりな三人』について教えて欲しい」

「はーい。まず一人目の葉隠さんは判断不能って感じ。全く目に見えないから衝動もゼロ。なんも分かんない。

 見えたけど妙だったのが……青山くんと、緑谷くん」

「妙だった、かい?」

 

 お父さんに答えるべき言葉に悩む。何て言えば良いんだろう。

 どちらも強力な“個性”だったとは思う。なのに私の衝動は不思議なくらい反応が鈍かった。たぶん、【超パワー】と【ネビルレーザー】には何かを混ぜることができない──言葉にするなら何だろうな。

 

「“個性”が濁ってる? みたいな?」

「ふむ? 他の子は濁っていない?」

「あ〜〜、ごめん濁って感じるだけなら沢山いたな……上手く言えない」

 

 少なくともはっきりしてるのは、後に挙げた三人に私が襲いかかるリスクは低いってこと。名前を挙げなかった皆の方がまだ危ないと言える。

 

「分かりました、そのつもりで警戒いたします」

「済まないけど頼むよ、八百万さん」

「お任せ下さいませ!」

 

 お父さんからの信頼度よ……。

 

「ねぇリナちゃん、あのバクゴーとか【エンジン】の人はどうなんです?」

「あぁ、あの二人はね──」

 

 被身子が爆豪くん──バクゴーで良いか──と天哉くんを挙げたのは、テストの総合順位が高かったからだろう。

 その二人が弱いとは言わない。麗日さんと戦えばきっと彼らが勝つ。でもそれは“個性”の強さによるものではないんじゃないかな。

 

「──“個性”の使い方が上手いんだよ。特にバクゴー。あいつの【爆破】、力の配分としては勿体ないなって思うよ」

「勿体ない、ですか?」

 

 どういうこと? と問うてくる視線に頷き返しつつ、頭の中で言葉を探す。

 ぱっと思い浮かぶのはお父さんが使うような専門用語で、そのまんま言っても被身子にはちょっと通じにくいから。

 

 仮に、『無個性の人間にはできないようなこと』を超常性と呼ぶことにする。

 麗日さんの超常性は触れたものの重さを消せる、ただそれだけ。逆に言えば彼女の持つ超常性は全てそこに集約されてる。

 バクゴーは違う。あんな爆破、無個性の人だったら身体が保たないよね。超常性の半分くらいは掌や骨格の強化に割り振られてるんじゃないかな。その半分であの威力なんだから凄いっちゃ凄いんだけど。

 天哉くんも同じだ。目に見える超常性はふくらはぎだけでも、見えない部分の強化は全身に及んでるはず。基本的に超常性はその人自身を守ろうとするっぽい。

 その点、轟くんは多分かなりのレアケースで。彼の身体は麗日さんと同じで、超常性に守られてないのかも知れない。少なくとも低温には特別強くなさそうな様子だった。防御を捨てた分の超常性がもし攻撃に偏ってるとしたら凄そうではある──まぁあんまり強い火力も困りものだけど。

 

「それで言うと……わたくし達も?」

「百は無個性の人よりもちょっとだけ消化器系が強そうかな。でもほとんど麗日さんや轟くんタイプだと思う」

「あ、分かっちゃいました。私とリナちゃんは同じタイプですね?」

「正解〜」

 

 私や被身子……それと、もしかしたら常闇くんも。『無個性の人間には普通()()()ようなこと』が()()()()──耐え難い──という、マイナスの超常性を抱えている。抑えきれない衝動も“個性”の一部なんだ。

 前に百が調べてくれた記録にはヴィランも多くいたけれど、こういう例は使いこなせれば強力なことが多い、らしい。

 必ずしもマイナスな結果を招くわけじゃないんだけどね。それでも困るというか、注意が必要なのは確かだ。喩えていうなら私の身体を私じゃない誰かが操る(ことがある)みたいな感触だから。

 

「今日の感じを総合すると、私の“個性”が高く評価するのは戦闘能力や応用性じゃなくて、ポテンシャルが一極集中してることなのかな。ついでにデメリットがあっても気にしないっぽい、と」

 

 ふぅ。

 地獄みたいな時間だったけど、割と綺麗にまとまったのでここまでにしよう。

 

 と、そう思ったんだけど。

 

「…………とすると、見えなかった葉隠さんも危険ですわね。透明なだけだと仰っていましたから」

 

 百の言葉で、四人はジト目でこちらを眺めた後、溜め息混じりに頷きあった。

 確かにそういう趣旨で話したことだけど、私を性犯罪予備軍みたいに扱わないでくれるかなぁ!?

 

「私まだ何もしてないのに……」

「“まだ”そうですわね」

「そういうとこですよリナちゃん」

 




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 次話、戦闘訓練。

カリナ
『オールマイトを生で見て性欲が限界越えたらどうしよう……』
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