【完結】愛慾のヒーローもどき   作:土屋 四方

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(前話ラストの被身子の件は数話先までお待ち下さい)


間章Ⅳ
火伊那さんとお喋り(1/2)〜新技能/新カリナの話


 

 

■十一月十四日・午前

 

 

 霧さんと霑くんの了解がとれた*ので霙理ちゃんの因子をもらった。もちろん霙理ちゃんにはキワドい部分を見せもしないまま(私の性器に直接触れたのは百だけ)、受け取るべきものは受け取れた。

 

 さて、そしたらいよいよ火伊那さんだ。

 

「待て待て待て。私も今のやり方で出来るんだろ」

「出来るは出来ますね」

「じゃあそれで良いじゃねぇか」

イヤですえっちしたい。

 逆に火伊那さんはしたくないんですか」

 

 はい言葉に詰まった。一度は頷いたんだし、逃げる機会は沢山あったし、何より火伊那さんは大人だ。

 真っ直ぐ目を見て宣言する──こういうのに弱いっぽいから。

 

「あなたを抱きます。それが必要だし、そうしたいし、あなたにも悦んで貰えるようにしますから」

「…………」

 

 ちなみにこの時、被身子たちの心は一つになっていたらしい。『まるで安心材料みたいに言ってるけど“悦ばせる”の部分が一番タチの悪い罠だよね』と。何のことだろう不思議だなぁ。

 

 

♡♡

♡♡

 

 

「カリナさん、そろそろ」

「──う、うん。止めてくれてありがと」

 

 百の言葉でようやく人間に戻れた感じ。もうちょっとライトにするはずだったのに必要以上にねっちょりしてしまった。もちろんどろっどろに優しくはしたけど。

 

「お、ま……やくそくと、ちがぁうだ、ろ……」

 

 うわエッロ……火伊那さんに誘い受けの素質があり過ぎる。こういう決めつけあんまりしたくないけど絶対悦んでるじゃないですか。

 危うく三回戦に突入するところだったよ全くもう。名残惜しいけど今は“技能”が優先だ。

 後でいくらでもできるし。後でいくらでもできるし!

 

 

 新技能の適合、もちろん一ヶ月なんてかけてらんない。【高速起動】を思いっきり使えばかなり圧縮できそうだけど……。

 

「うーん……一応六時間くらいかけようかな。今から妊婦さんモードになりまーす」

 

 ベッドに半身を起こしてお腹を膨らませると、栓を抜いた風船みたいにみるみる性慾がしぼんでいく。代わりになんとなく神聖な気持ちになるのは不思議なものだ。

 みんなもエロい感じの触れ合いは控えてくれて、一気にプラトニックな雰囲気になった。

 

 ……いや、すぐそこには息も絶え絶えな火伊那さんが百に介助されてたりもするんだけど。

 お茶子がイジメたそうにウズウズしてるのを駄目だよーと抱き寄せたら、お腹を圧迫しないようにごろんとズレながら訊いてきた。

 

「時間かけるって、なんかマズいん?」

「マズいというか特殊というか──そうだね、どうせしばらくお喋りしかできないから、どんな“技能”なのか話しとこうか。火伊那さんは……聴く余裕があればで」

 

 軽く咳払いなんかしつつ、解説モードのスイッチオン。内容は昨夜から考えてたし、要点だけ挙げていこう。

 

 今回の“技能”は……名前、要らないかも?

 一回限りの使い切り。私自身を永続的に強化するだけ、それが済んだら無くなるも同然だから。

 この“技能”、『作るイコール使う』みたいなとこあるから、両方含めて六時間ね。

 

 効果はこの身体の()()()

 今()()には四組──つまり八人分の因子があるけど、実はどれも馴染みきってないの。【自己再誕】って中二の夏じゃなくて四歳頃には目覚めてたみたいでさ。

 うん、何かできたわけでもない実質無個性の頃ね。たぶん二次性徴前は働こうにも働けなかったんじゃないかな……でもこの“個性”は、ずうっと因子を求めてた

 

 ──納得? まぁうん、私も。えへ。

 

 今回の新技はそこんところを覆す。

 “個性”に目覚めた頃から今に至るまで、八人分の因子をじゃぶじゃぶ取り込み続けてたら今頃こうなってるって肉体を実現する──みたいな。

 

 〔熱遷移〕は使えたって多用する気はないけどね。でも〔身体変造〕と〔ベクトル透過〕を十年ずっと鍛え続けた状態ってのが大きい。

 筋肉も骨も今よりずっと高密度・高効率に作り変えられるから、素の身体機能だけでも相当なレベルのはずだよ。

 

 戦闘能力? 一言で言っちゃえばオールマイト。

 筋肉の量と質、形態変化による一点集中、あと〔ベクトル透過〕で空気抵抗も受けない。普通の人なら目で追うこともできないでしょ。

 

 ──あー、うん、そうだね。

 やっぱりバレるか。でもあんまり心配しないで欲しいな。

 

 確かに百が言った通り、傷の修復も劇的に速まる。目にも止まらぬ、それこそみんなも気付けない位にね。だから『壊しながら治す』みたいなこと、しないって約束はできない。もちろんしないで済む時はしないけどさ。

 ただ安心材料が二つあって、一つは骨や神経の再建も速まる*こと──ぇ、“余計に無茶する”? そんなに信用ないの私? ぶーぶー。

 じゃあ分かった、もう一つの方ね。

 

 ……重大発表です!

 

 今は“技能”を使う度に消費しちゃって、修復の回数制限にもなっちゃってる皆の因子。

 これを取り込むことが劇的に簡単になるので、事実上いくらでも使えるようになります!

 

 仮にこれをお父さん辺りが聞いていたら。

 純粋に安全や戦力の問題と捉えるだろう。もちろん『劇的に簡単な補充方法』がどんなものかは確認されるだろうけど、ともかく真面目な話が続くはずだ。

 

 だけど実際は違う。可愛い可愛い恋人たちは、もう治崎のことなんかどうでも良い感じになっていた。

 

「もしやカリナさんの性慾が(おさ)まる……?」

「はい百せいか──」

「いえそんなわけございませんわね……?」

「──正解だよ! 治まるの!」

 

 失礼しちゃうぜ!

 

「治まるって“個性”由来の分だけでしょ?」

「カリナちゃん自身の性慾まで消えるわけないもんなぁ」

「二人も正解!」

 

 当たり前じゃないか♡

 

「私はどっちでもいいです」

「まぁそうよね」

 

 知ってた。大した問題じゃないといえばそれはそうなんだわ。

 

「……つまり私はもうこんな目に遭わなくて済む……? ヒィッ!?♡」

 

 火伊那さんが戯言を呟いたのでにっこり微笑んでおいた。そしたら鳴いて歓ぶんだもん、本当にこの人は。

 私は我慢したけどお茶子がますますウズウズしてる。ステイステイ。

 

「なんでだよ! 因子は簡単に渡せるんだろ──いや待て、お前らの常識はもう信じない。“劇的に簡単”って具体的にどういうことだ」

 

 常識全否定いただきました。不思議。

 

「髪の毛です」

「──髪の毛?」

「はい。火伊那さんや皆から髪の毛をちょっとずつ……長さは数センチ、一束分くらいもらって、それを私の髪に絡ませます。それだけです」

「……他には?」

「それだけですって」

 

 再適合が終わった後の私は、八人分の因子に浸り切って育った結晶体だ。だから因子提供者の身体の一部なら大体なんであっても因子を絞り出せる。中でも髪は特別。火伊那さんの影響だろう。

 

「切り離して貰いやすいのは爪もですが、貰ったのが爪だと私の爪に触れさせとく必要があるので……戦闘中に取れちゃいそうなんですよね」

「え、てことはリナちゃん、()()()の毛だったら」

「そりゃ私も()()()に繋げるんだよ。大切な皆からの貰い物をそんな風にするのは何となくヤだけど、そうしないと多分ムリ」

 

 造りとしてはほとんど同じだから行けるかな? どうだろ。

 これについては“技能”自体の効果っていうよりその結果みたいなものだからちょっとはっきりしない。

 

「そうか髪の毛だけか……なら私がこの淫獄にいる必要も」

「現実を受け入れましょう火伊那さん。既にこの淫獄はあなたの日常なんです」

「否定しろよ淫獄を!

 そもそもなんだよ淫獄って!!」

「自分で言い出したんでしょ!?」

 

 文句たらたらなのがポーズにしか見えないの、ちょっと後で真面目にお話しましょうね。その本音を聞き出すことさえ羞恥プレイになりかねないけど。

 きっと平気だろう──火伊那さんは訊ねて来ないから。

 

『お前らどうしてそんなに嬉しそうなんだ?』

 

 みたいなことを。

 言われなくても彼女は分かってるんだ。“個性”の慾動で抱かれるよりも私の愛慾で抱かれる方がずっと嬉しいって。一回戦より二回戦の方が反応良かったもんね?

 ……まぁその捉え方を正解とは言えないけど。

 

 〈【自己再誕】が鎮まることを被身子たちは喜んでいる〉、これはその通り。

 それを〈私個人の愛情をよりはっきり感じられるから〉だとする彼女の解釈も間違いではない……けど本質的でもないかな。“個性”の衝動がある位で疑われるような愛し方はしてないつもりだから。

 じゃあ何を喜ぶかって、そりゃもちろん〈性格も知らない誰かさんに一目で魅かれるようなことが無くなるから〉であり〈ポッと出の新入りが持つ巨大なアドバンテージが無くなるから〉だよ。

 火伊那さん自身のことだから分かんなくても無理はないか。

 

 

「あれ? ごめんなさいリナちゃん、どの辺が“重大発表”でした?」

「……ん、まぁ……みんなとえっちなことしまくるのは変わらないから……」

「なら大した話でもないやん」

「カリナさんは勢いで話しがちですからね」

「もーリナリナったらー」

 

 そんな風にふざけあって、そして順当にツッコミを頂く。

 

「いや、自分の怪我をほぼ無限に治せるって方が明らかに重要だろ……?」

 

 これは百以上のツッコミ役になれそうな逸材。

 常識に囚われてると胃は痛むかも知れないけど。

 

「そんな性能、治崎ぶちのめしたら出番なくなりますし」

「…………」

 

 おっと、これでトゥンクしちゃう辺りチョロさは非常識かも。

 それと痛むのは腰もだね。

 

 


 

 

 最後に付け加えて、私の髪をみんなに渡したらこんな風になるんじゃないかなー的な予想も話した。新技能について今言えるのはこんなところだ(あんまり話すと【巻戻し】の輪郭をかなり露わにしてしまう)。

 私の髪の色がゆっくりゆっくり変わり始めてるみたいだけど、完了まではまだかなり時間があって。でも説明すべきことも尽きていて。

 

 だから自然、火伊那さん周りの話になる。といっても彼女を話題にするというよりは──

 

「なんだか【ライフル】と関係なさそうです? あっ訊いちゃマズイ感じですかね」

「んー、霙理ちゃんについては言えないけど……火伊那さんは主に髪から、“硬く撚り合わせる”みたいなところを貰ったのかも。後はたぶん私の、【自己再誕】の適性かな」

 

──彼女に聞かせるための、私たちの紹介を念頭においたような話。

 

「【自己再誕】の適性、ですか?」

「ほら、私の“技能”ってどれも『超常を体の外に働かせること』がほとんどできないでしょ」

「言われてみると……私の【無重力】は触ったものにも効くけど、〔ベクトル透過〕はカリナちゃんだけよね」

「私は……【透明化】は自分だけだけど〔(イン)(パー)(ミー)〕なら身体の外に出せてるなぁ」

 

 お茶子と透の言葉が妙に説明的なのは火伊那さんのためだ。

 こっちはそうでもないけど彼女は年齢差も気にしてそうだし、仮に同年代でも五人グループに後から加わるとか結構ハードル高い。

 だからって逃がす気はない!

 

「ごめんだけどさ、劣化版“個性”にもはっきり得手不得手があって……」

「別に怒ったりせぇへんよー。カリナちゃん【無重力】ほとんど使わんもんな?」

「ほとんど使えないのよ……【氷河期】もだけど」

「そこは少々意外ですわね。わたくしの【創造】や被身子さんの【変身】は体内ですか」

 

 火伊那さんは私たちの“個性”や“技能”の話をとても真剣に聞いてくれている。ちょっと難しい顔で。

 それはもしかしたら『狙撃するとしたらどうやるか』みたいな思考(プランニング)なのかも知れない。でも悪意は感じないし、正直カッコいい印象さえある──不器用なほど真面目な仕事人間っていうか。かわいいね♡

 それに極端な話、今はコミュニケーション取れるならなんだって構わない。……とか思ってたんだけど──

 

「ぶーぶー。私は表面、百ちゃんの方が中、お父様の方がもっと中です」

 

──火伊那さんは気付いてしまった。被身子ですら不味いことを言ったと口ごもるほどの、触れてはならぬ深淵に。

 

「渡我の父親?」

「あ、太郎さんのこ……と……」

「…………そういえばお前、さっき【氷河期】も苦手だとか……」

 

 心の底から忌避する目を向けられた。本気で悲しい。

 

「違いますからね!? 霙理ちゃんの時みたいなことを一度やったきりですから!!」

「なんでそんな話になったんだよ」

 

 もちろん誠心誠意説明した。雄英に入るためには【先物代謝】が必要不可欠だったのだと。

 火伊那さんは最後まできちんと聞いた上で、改めてドン引きした。あれぇ?

 

「そういえばマーサさんも難しい“個性”とか言ってたな……。

 話は分かった、そう生まれついたのはお前のせいじゃないし誰の罪でもない。無差別に襲わないために同意のある相手を抱く──理解はしたよ」

「ありがとうございます」

「でもお前、楽しんでるだろ?」

「ありがとうございます♡」

「褒めてねえ」

 

 えー? それじゃ被身子や百に性慾を治めて貰いつつ『私はこんなに不幸……』とかさめざめ泣いてろって?

 そんなの二人に失礼だし、ていうかあんまり不幸だとか思ったことないし。むしろめちゃくちゃ幸運でしょ私。

 

「私が人生楽しむことで誰かを苦しめてるんなら反省もしますけど」

「私は?」

「苦しめてるんなら、反省もしますけど」

 

 私の人生経験(セックスライフ)のおかげで思いっきり快感を得ていた火伊那さんに仰られましてもー。

 

「なんつーのかな、お前……掴めそうで掴めねえな」

「どうぞ?」

「胸の話じゃねえよ! 性格とか価値観とか、こう……(とお)すべきお前なりの判断()基準()があるらしいのは、分かった。意味わかんないほど独特みてえだが」

「そんなの知り合ったばっかりじゃ掴めないの普通じゃないですかね。火伊那さんが“おっぱい”とか言うのを恥ずかしがるのだって私には新鮮な驚きですよ」

「そんなのと同列の扱いか……こら、ニヤニヤするな」

 

 いやぁ頬は緩んじゃいますよ。だってこっちに興味持ってくれてる証拠だもん。

 だけど私だけよりはみんなとも仲良くなって欲しいし、一人だけ頭おかしいみたいに思われるのもちょっと心外

 

「じゃあこうしましょう。この四人だって私に負けず劣らず独特なことをお見せします」

「え、なんか知るの怖いんだが。……頼むから八百万だけは常識人であってくれ」

「「それはありません」」

酷いですわ!?

 

 私と被身子から言われるのは甘んじて受けなさいよ。

 

*
164話「嘘じゃないよ本当だよ」

*
筋肉や皮膚に比べそれらの再生には時間がかかっていた。

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