オイラ、雄英高校一年A組の峰田実。白やピンクの百合を愛でる
ちなみに身長は
「オイラなんかが
「お恥ずかしい、身近にあるものなのに」
「こーゆーのは使わなきゃ知らないモンだろ」
■教壇
教室の最前、黒板の下にある教壇。ありふれたもののようで雄英のこれは特別製だ。だから使い方を知らなくても仕方ない。
オイラはずっと使ってたけどな、オートで昇降してくれる踏み台。ニュー兵怜ちゃん(約一四〇センチ)もこれからは世話になるだろうぜ、この学校はどこもかしこもドデケェから。
「つま先で同じ場所をトントンってな。あ、軽ぅくで平気だかんな?」
「…………気をつけます」
ますます恥じ入る兵怜ちゃん。おぉ……これまでとのギャップがすげえや。ちなみにそういうのは八百万あたりが弱いと見た。もう知ってるか、知ってるよな*1 。
何を恥ずかしがってるかって、今朝『おはよーございます!』と挨拶しながら教室の扉を壊しかけた件だ。なんでも体重が減ったから普段より力が必要だと思った、らしい。まぁすげぇ音がしただけで壊れちゃいなかったが、この教壇はメカメカしいぶん扉よりは繊細なんじゃねえか?
「とん、とん、お……お? なんだかゆっくり?」
「トトンッて速くタップするほど上がるのも速くなるんだぜ」
「あー、安全で良いですね」
ウィーンと静かな音と共に兵怜ちゃんが
「ほっといても止まるけど、一回タップすりゃ好きな高さで止まる。二回タップで──」
なめらかに説明しながら、さりげなく、あくまでさりげなく黒板から離れ……る……!?!?
オイラは予想外の精神的ダメージに崩れ落ちた。ちなみに教室の後ろの方では上鳴のやつもだ。
「えっミネタいきなりどうしたんですか!?」
「へ? 峰田くん?」
「お二人とも放っておかれませ……」
オイラのショックを理解してくれるのは八百万だけか……。
これまでずっと使ってたけど、その背もたれみたいなパーツは安全のための落下防止だと思ってたんだよ!! 純真な男子高校生を騙すなんざ、許せねえよ雄英ィ……まさかパンチラブロッカーだったなんて!!!!*2
■階段
よく知られた難所がここだ。
標準的な体型のヤツにもちょっと高く感じられる段差になっている。
「階段は自力で行きますよ、トレーニングの一環なんでしょうし」
「そりゃオイラだってそうだけどよ、下りの緊急時には仕掛けがあんのよ」
「あー、パンフには書いてあった、ような……?」
体調が悪い時でも保健室は普段通り一階にあるわけで。そして身長が低いヤツにとっては上りの面倒臭さよりも下りの恐ろしさの方が厄介なんだよな。
「まぁこの
「大丈夫そうです。使う機会はない方がいいですけどね」
その言葉に、オイラの悪癖が顔を出した。
「女子なら月イチで世話になってもおかしくねーだろ?」
全く習慣ってやつは度し難い。この最低セクハラ魔人がよォ……!
しかし、しかしだ。
「あ、私軽くて短いんで」
「カリナさん!!」
答えちまうんだなぁ兵怜ちゃん。
ちなみにわざとかは知らねーが体格と一緒に声も結構高くなってるんで、そういう──女子が気にしがちなところを堂々と踏み抜いていくような──益荒男ムーブ(?)が以前のようにはしっくり来ない。
……ギャップってのは
「そんなに怒るぅ? 個人差はあって当たり前なのに」
「そういう問題ではございません。太郎さんに報告している内容を全て公言できますか?」
「それはイヤですごめんなさい」
──美しい、ものをみた。
いやー羞恥心がちょっとアレらしい兵怜ちゃんでも恥ずかしがることを知ってるっぽいのがな。寿命が伸びる気がするわ。
それはそれで感謝しかないんだが、三人は唐突に内緒話を始めた。もちろんオイラは聞き耳を立てたりしねーぜ。
「それはそれとして、ちょっといいかな。あのね、(ひそひそ」
「え゛。リナちゃん、それは流石に(ひそひそ」
まずパイセンが驚いて、オイラの方をチラリと見る。なんだなんだ?
「いや言わないよ? 言わないけど
「あー……いやでもだからって(ひそひそ」
パイセンからの視線は、なんつーか見慣れない妙な雰囲気を帯びている。もちろん色っぽいアレじゃなくて、なんだこれ…………
首を傾げていると、八百万がぶち撒けた。こいつわざとやってんじゃねーの?
「あの、お二人共すみません。“栗の花”とか“イカ”の臭いとはなんのことですの?」
「声が大きい!!」
さっきは叱る側だった八百万が叱られてやがんの。反省しろやコラ。
なんだ、その。
これまでは爪を伸ばしたりしてたけど、実は耳を作り変えて聴覚を上げたりもできるんだとよ。てことは鼻を作り変えたら
「他の男子には秘密にしてもらえると……」
「こんな無慈悲なこと誰が言えるかってんだ!」
おいおいおいおいどうすんだコレ? オイラもう明日から兵怜ちゃんに見せる顔がねえよ!*3