【完結】愛慾のヒーローもどき   作:土屋 四方

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 前半はシモ方面、後半はエロ方面でR17.99注意。


7. 緑谷くんの秘密とご褒美の話

「あの、さ。答えづらいことかも知れないけど、どうしても気になっちゃって──兵怜さんや葉隠さん、あと渡我さんもかな。みんなの“個性”って、ちょっと──かなり、変わってる、よね? 珍しいって意味じゃなくて、その」

 

 緑谷出久と兵怜カリナ。

 この二人はどちらも“個性”に関する知識が豊富と言える。

 だからカリナとしても、彼が自分たちの“個性”に抱いた『変わってるな・珍しいな』という印象には共感できた。カリナ自身おかしな“個性”だと感じる毎日である。

 

 ただしこの二人、知っていることの中身はかなりの差異がある。そして今抱いている懸念の方向性も。

 

 だからこの会話は──全くのすれ違いに終わる。

 

「変化してる、というか。ただ渡我さんのはまだ【変身】の延長線上だとしても、葉隠さんの見えない壁は【透明化】とはかけ離れてる気がして、その、いやあくまでもしかしてなんだけど──」

 

 噛み合わない最大の要因は前提知識の差だが、緑谷のコミュニケーション能力にも問題が無くはない。ただし。

 

「あ、そのやっぱり聞かない方が良かった!? だよねゴメン無理強いするつもりとかないから答えたくなければ僕は全然──」

「緑谷くん、一旦ストップ」

「アッハイ」

 

 カリナの側の問題も……決して否定できないのであった。

 

 

 

 どんどん早口になっていく緑谷を一旦黙らせて、カリナは百に演習場の入り口を閉めてもらった。あまり人に聞かれたい話ではないだろうと気遣った──つもりである。

 

「緑谷くん、あのね。偉そうで悪いんですけど、色々ダメ出しして良いでしょうか」

「ヴッ…………な、なんでしょう」

 

「どう言ったら良いですかね……指摘したいのは二つです。

 一つは緑谷くんが暴こうとしているものについて。もう一つは()()()()()()()について」

 

 カリナは本心から困っている。

 困った挙げ句そのままぶつけることを選んだ。

 

「正直、今すごく反応に困ってるんですよ。あまりにもアレな質問のせいで、緑谷くんが()()()()()()()()()()()()を想像できてしまったので」

「──っ!?」

 

 緑谷のあわあわとした問いかけは、それ自体がぼろぼろと情報を溢していたんだぞ、と。

 自身でも秘密を抱えているカリナは、言葉にされない裏側を察してしまう。暴くつもりなど無くても、半ば無意識に。緑谷の性急さや焦燥感はそれほどに雄弁だった。

 

 何か重い秘密があること。

 絶対に隠さねばという決意。

 それは“個性”に関係している、などなど。

 

 もちろん緑谷は焦る。

 どうにかして口止めしなければ、しかしこの場には百も透もいる、そしてその透は──と、頭が真っ白になりかけた。

 

 ところがこの時、カリナの推測は完全に的を外している。“個性”に関する前提知識からして大きな隔たりがあるせいで。

 

 

 緑谷は体育災の後でオールマイトから色々と聞かされた。【OFA】の成り立ちとAFOという巨悪の()()。『“個性”を奪い与える』という常識外れの異能。その本人はUSJで斃したものの、ギガントマキアのような忠臣が他に居ないとは限らないとも。

 そして、もし“個性”の複数持ちがいたら──それはAFOの関係者かも知れない、とも。

 

 つまり彼の様子がおかしいのは、透の〔不透膜(インパーミー)〕が【透明化】とは別の“個性”としか思えなかったからだ。

 まさかクラスメイトにAFOの手先が交じっていたのか? そうであって欲しくない。そういう危機感と狼狽である。

 

 

 対してカリナは。

 太郎(ちち)の影響で広く深い知識を持つが、それは全て表側の──つまり秘匿されない範囲だけ。そしてその中で言うと緑谷の懸念は……言葉を選ばずに言えば、創作(フィクション)に毒された妄想に近い。

 (遺伝は別として)人から人へ“個性”を移すなど“ありえない”し、そんなことはヒーローオタクの緑谷だって重々承知のはずだ。またカリナは〔不透膜〕が“個性”ではないことを確信もしている*1 。『後天的な複数個性』なんて疑いがかかっているとは思いもしない。

 

 USJで戦った脳無の“個性”は【超回復】しか把握していないし、AFOの異常さは記憶がかなり曖昧な上に太郎が伏せている。

 明らかに異常だったギガントマキアが唯一の例外。それもカリナの知識からは突然変異的かつ先天的な特徴だろうとしか解釈できないのだ。

 

 緑谷や【OFA】の事情も、世界の闇についても、カリナは知らない。

 あくまで知っている範囲の知識と自身の経験から想像して……なるほど、と。

 

 桃色(おピンク)の脳細胞は一つの仮説に辿り着いた。

 

 ──もちろん、前提が大きく食い違っているので全く的外れな説に過ぎない。

 【OFA】(ワンフォーオール)の秘密は安泰である。

 

 


 

 

 私が初めて“個性”を使ったのは中学二年生になってからだけど、個性因子は幼い頃から目覚めていた。必要な臓器(しきゅう)が成熟するまで使えなかったってだけだ。

 

 去年か一昨年まで無個性だと思われてたなら、()()()()()()()()()()()()に違いない。

 そしてそういう実体験があるなら、〔不透膜〕も透の身体的な成長に基づいて追加的に目覚めたと誤解するのも無理はないだろう。

 

 考えるだけなら何も言わないよ。

 

 だからって『葉隠さんは()()()()()()()()()()』なんてセクハラは非常に良くない。

 

「緑谷くんの恥ずかしい秘密は口外しないので安心してください。

 でもどんな事情があれ、女の子の生理にそんな食い付くのはダメですよ」

「せぃ……なんの話さ!?」

「え、精通が遅かったのを恥ずかしがってるんですよね? 大丈夫、個人差の範疇ですって」

「だから本当に何の話!!??」

 

 そんな真っ赤な顔で誤魔化されても。

 中二か中三まで“個性”が使えなかったってことは『そういうこと』でしょ、超常生理学的に考えて*2

 【超パワー】なんて曖昧な名前で誤魔化しておきたくもなるよね。気持ちは分かるよ。本当は『精力を貯めた分だけ超強化する』とかそんな感じ?──つまり彼は奥手なだけで実は…………是非ともそのまま隠しておいて欲しい。

 

 

 ……なんだか、緑谷くんには凄く物言いたげな顔をされてしまった。元はと言えば自分が透にセクハラかましたんでしょうが。

 

 

 

 

 一時間ほど後にやった決勝戦は、透を視認できる私にとって楽勝だった──なんてことは全然ない。勝ったことは勝ったけど。

 

 先に被身子との試合を観てたおかげで〔不透膜〕の理屈には幾つか予測が立ったしその一つが当たっていた。シンプルに『不透過にする面積が狭いほど硬くなる』。

 だから私は細剣をメインに使った。

 

「その壁が格子状なのは見えてたからね!」

〈ポイント、兵怜!〉

 

 被身子の攻撃を防いだカラクリはそういうこと。単なる壁ではなく格子のように肉抜きしたことで、効果面積を減らし〔不透膜〕を強固にしている。

 

「だからってこんな狭い隙間狙って通す!?」

「通さなきゃ勝てないでしょうよ!」

 

 悲鳴と共に隙間の無い壁を作られたけど、それは全力で殴ったら突破できた。強度がまるで違う。

 それでも透は諦めなかった。

 光を通さない膜で目隠しをしてきたり。

 

「っ!?」

「これならリナリナにも見えないでしょ!」

「喋ったら意味ないじゃん」

「ぎゃー!?」

 

 重力を遮断する膜で宙に浮いてみたり。

 

「はーっ、はーっ、ここなら届かな──」

「……〔ベクトル透過〕」

「無慈悲!」

 

 正直言うと、内心は冷や汗ものだった。今の透は〔不透膜〕を一箇所にしか展開できないし、二つ以上のものを不透過に設定することもできない。物体を遮断しても気体とかの微粒子は出入りするらしいし。

 でもその辺は鍛えれば鍛えられるものだ。そして透はまだまだ全然初心者さんなのである。

 例えば光と音と臭いを全部同時に奪えるようになったら? あるいは空気も通さない膜で頭をすっぽり覆えたら?

 やばいよね。またしても暗殺者適性が高そうで怖いけど、使い勝手の広さは【創造】にさえ並ぶ可能性がある。

 

 だから出来る限りの速攻で決めた。時間と経験を与えるとひっくり返されると思ったから。

 

〈勝負アリ! 三対〇デ兵怜カリナノ勝利!〉

 

 スコアこそ完勝ではあったけど内容はそこまで一方的じゃない。

 熱戦だった。少なくともバクゴーが文句言ってこない程度には。

 

「あぁー……」

「お疲れ透。すごかったよ、惚れ直しちゃった」

「ほんと!? 私にもご褒美ある!?」

「う、うん。考えてなかったけど、いいよ」

 

 

 

 透はそこまで悔しそうではなかった。家に帰ってから訊いたら、透明でも視える私相手には最初から勝てると思ってなかったんだって。

 自己評価が低い! ご褒美は皆で囲んで愛し尽くすことに決定。

 

 ──透がへばったらそれを理由に先送りにできないかなぁ。

 そんな思いは百に看破されていたので、被身子へのご褒美が先ということになった。

 

 それはつまり、【先物代謝】の限界測定である。

 

 

♡←♡♡♡♡

 

 

「…………」

 

 なるべく早くその時が来るように【先物代謝】を全開で駆動する。体感覚は薄くなり、性感も布団を隔てたみたいに遠いモノになる──身体中に色々取り付けられてるにも関わらず。

 手足は硬く固定され、何台ものカメラと八つの瞳が私を見下ろして……いや普通に怖いからねコレ。

 

「カリナちゃん、震えとるん?」

「震えもしますよホントに。自分でもどこが限界か分かんなくて、でも絶対に限界はあるんですから」

「リナリナが敬語キャラになってる!」

「余裕無い時は割とこうですよね……♡」

 

 別に被身子の真似をしてるわけじゃなくてもうなんか怖くて許して欲しくてついつい敬語になるっていうアレなのでうっとりされても困る。

 あと被身子、普段なら敏感になってすぐ硬くなる場所が(感覚を先送りしてるせいで)柔らかいまんまなのが面白いのは分かったから、そんな優しく遊び続けるのやめて欲しい後が怖い。

 

 ちなみに百は点滴とかの準備をしている。この子が一番ヒドくないかな。でも無茶できるのは彼女のおかげ。愛してる。

 

 透とお茶子は初めてだから驚くと思う。お茶子とはいえ羨ましそうにしてられるのは今の内じゃないかな。

 

「でも……気持ちええんよな?」

「正直決壊した時はそんな余裕ないです」

「……♡」

「待ってお茶子その顔な──ヒッ」

 

 

 

 

 

「待っ……(ゆる)……」

「【先物代謝】解けないんですか?」

「異…………ォン……」*3

「百ちゃん、どうですか?」

「心拍も血圧も乱れたのは数秒間だけですわ。今はほぼ平常値です」

「ならイケますね!」

「  」

 

 

♡←♡♡♡♡

 

 

「ええなぁカリナちゃん、怖くて逃げ出したくて許して欲しいんよね? 気持ち良さそう。替わってあげたいくらい────え、何()うてるの私は【先物代謝】なんて使えへんよ。カリナちゃんは絶対逃げられへんから……あぁでも、諦めてまうのは面白くないよねぇ?」

 

「(お茶子さんの様子が……?)」

「(ヤバいってリナリナあれマジ泣きじゃない!?)」

「(マゾはサドを知るってヤツですかね。あ、透ちゃん安心してくださいリナちゃんも結構なマゾですから)」

 

あっ、もう来る、もうムリムリ無理────

 

 

 

 

「うわぁ……打ち上げられた魚みたいになってる」

「【先物代謝】は解けた状態ですね。で、()()()()()()()()()()全身ビンカン状態です」

「ななななななんのこと!?」

「今さら隠さなくても。はいどうぞ、リナちゃんもお気に入りのローションですよ」

「…………ヤオモモ、本当に平気なんだよね?」

「請け負いますわ」

 

 

♡←♡♡♡♡

 

 


 


 


 

 

 被身子達は一ミリも反省してないし透は悪ノリするしお茶子はSっ気にも目覚めるしで、本当に喉と腰が辛い。死ぬかと思った。

 あと【先物代謝】は使い慣れたのか成長したのか容量自体は増えてる気がする。死ぬかと思った。

 

 もちろん翌日は逆襲だ。殺しはしないとも。

 

 

♡→♡♡♡♡

 

 

「リナちゃ!?──っは、ふ──んんあっ♡!? ウソウソもう────は、ふ」

「やだなぁ、被身子だってバクゴー戦の解説で言ってたじゃない。私の爪が入学前と同じなわけない、でしょ?」

 

 いや爪というか触手に近いけれども。

 中学生の頃はまだね、()()を傷つけちゃうリスクがゼロじゃなかったし、何より触覚が鈍かったのでダメダメだったけど。

 今の私なら片手で二人ずつ相手できるからさ。

 

「ほら、百と透も遠慮せずこっちおいでぇ……?」

「ヤオモモどうしよ怖い怖い怖い」

「カリナさんは怒ってるわけではございませんからご安心を!」

「じゃあなんで私を盾にするのさ!?」

()()被身子さんがあっと言う間にやっつけられてるのにわたくしが相手になるわ──」

 

 ガタガタ抜かしてる百の脚を掴んで一瞬で引き寄せる。悲鳴も嬌声も全部私が飲み込んであげよう。ほら、首を必死に横に振りながら瞳を黒く澱ませながら、百の身体はどこまでも仰け反って幸せそうに涙を漏らしてるじゃないか。

 そして部屋の隅には、ゾンビ映画のラストで一人だけ生き残ってしまったような絶望に震える透。

 

「ぁ、ぁ、ぁ…………」

「ほら、透もおいで。ちゃんと手加減してあげるから」

「そのお茶子ちゃんの様子を見ると信用しにくいんだけど!」

 

 お茶子? あぁうん、わざわざ()()()()()()()()()()()お茶子たっての希望が無間絶頂地獄なのは()()()()()()()()()()()()からそれに応えてるだけで。

 

「そんな雑なことしないって。透には透専用の、どろどろイチャラブコースでお相手するからさ」

「えっ、う、それなら……」

「おいで♡」

 

 私は嘘なんて一つも吐いていない。ただちょっと、何時間コースなのかを省略しただけで。

 

 

♡→♡♡♡♡

 

♡→♡♡♡♡

 

 

 被身子へのご褒美が済んだら、もちろん準優勝の透の番である。

 

「お待たせ透、今日は皆でご奉仕するね」

「私まだ腰痛いんだけど!?」

「昨日は私からの仕返し。今日は皆からのお祝い。受け取ってくれるよね?」

「四人とも笑顔が怖いよぉ!」

 

 

♡♡♡♡→♡

 

 

「そういえば、優勝したカリナさんにもご褒美というかお祝いをしませんこと?」

「えっちなこと無しで皆で仲良くぐっすり寝たい……」

「大賛成!!」

 

 百への返答は本気と冗談が半々のつもりだけど、透が半泣きで推してきたのでそれに決定。

 

 ただ穏やかなだけの触れ合い。これはこれで楽しいし、何より幸せなものである。

 

 

 

 明け方にこっそり、被身子が血を求めてきた。

 吸血は当然えっちな行為には含まれないから、私は拒まなかった。

 

 

♡♡

♡♡♡

♡♡♡♡

 

 

「腰が……痛い…………」

「ねぇ、リナリナひょっとしてバカなの?」

 

*1
自身の因子が切れれば使えなくなることは被身子と百で立証されているため。

*2
太郎『カリナはなんでも性に結びつけて……』

*3
『異常事態すぎて生命の危機と勘違いしちゃってオンで固定されちゃってるから本当にちょっと待ってください』

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