愛慾過多状態になっています。
合宿二日目、夜。
どうにか晩ご飯を終えたら就寝前のお楽しみ。
お風呂である!!
あんなに〔身体変造〕を使い続けたのも、因子はあるのに因子切れみたいな気分になるのも初めてのこと。
昨日はこんなじゃなかったけど、被身子たちの裸を見たらもう──周りに隠す余裕なんて吹っ飛んでしまった。
恋人たちはそんな私を前後左右から囲んでくれる。
なんて素晴らしいご褒美。流石に因子を取り込むような触れ合いまではしないけど、泣き出しそうだった気持ちが満たされていく。
これで明日も頑張れそう。
はぁ、被身子の身体は甘いなぁ……♡
「リナちゃ、きゃん♡ みんな見てますよう?」
「とっくに皆にバレてたって。今更だよ」
左手にしがみつくように眠気と戦う百、右手にからみついて誘ってくる被身子、それぞれに違ったマッサージで応じる私。
(心が)ぎゅんぎゅんと潤う。(心が)びちょびちょだわー。
「ついに開き直ったよコイツ!」
「あ、梅雨ちゃんどうだったー?」
「ケロ、大丈夫よ。
「ごめんね梅雨ちゃん、リナリナがこんなんで」
響香、三奈、梅雨ちゃんが慌ただしいと思ったらそれを確かめてたのか。そんなの聞きにいかなくてもお湯の残り香で分かるのにね。
いくら私だって、子供に見られるかも知れない時はこんなことしないよ。その位の常識はあるんだから。
「あの……カリナちゃん、目が……」
「なぁにお茶子、私に見られるのはイヤ?」
正面ではお茶子が裸身を晒している。どうも私が響香たちを見ないよう壁になるつもりらしく、両腕を開いているので──うららかな膨らみはもちろんのこと、脇の下についた
私のいやらしい視線に身をよじるお茶子はたまらなくえっちである。
「リナリナ、流石に周りへの刺激が強すぎるんじゃ……」
「
そんなこと言いながら、背後にいる透の両手は私のきわどい所をなぞってるんだけど?
そりゃ透の手は周りから見えないけど、見えなきゃ良いってものだっけ?──いいかも。
「そーお?じゃないよ! あんたら少しは慎みあったはずでしょ!?」
「ケロ、声が大きいわ耳郎ちゃん」
「気持ちは分かるけど男湯に聞かれたらマズいっしょー」
エキサイトして
代わりに被身子が応える。
「ごめんねぇ、一泊までなら我慢できたけど、ここまで日数があると必要なのです」
「必要、って言われても……」
ちなみに響香は、被身子を先輩扱いする傾向がクラスで一番強い。女子では唯一未だに『渡我さん』て呼んでるし。
それもあってかあっさりトーンダウンした。上下関係ってほどではないと思うけど、勢いよく責め立てるのは遠慮しちゃうようだ。
「ケロ。何か事情があるのね?」
梅雨ちゃんはいつも察しが良い。
視線で問うてくる被身子に目だけで頷き返す。もうここにいるメンバーに隠すつもりはないし、既にバラしてるも同然だし。
だけど被身子は説明まではしない。いつも通り面倒臭がって、何度か百をつついて解説役を投げようとして──無理っぽいと判断するや、切り替えて私の耳に吸い付いた。
「ひうっ♡」
「リナちゃん、リナちゃん……♡」
脳が
「ケロ……よっぽど深刻な事情なのね」
「いやいやいや。渡我さんに弱みでも握られてんの?」
「あれはしたくてしてるだけにしか見えないよね〜」
呆れと照れの混じった三奈の言葉に、お茶子が私の唇を解放した──と思ったら今度は透に塞がれた。
……私に喋らせたら誰かを口説くと思ってるんだなコレ!?
「たはは……苦し紛れの嘘とかではないんよ? 必要なのは本当。……だからってイヤイヤとか渋々ではないんやけど」
「それは見たら分かるし」
響香のツッコミはもっともで、それにはお茶子も照れ笑いしただけだけど──
「お茶子ちゃんが
──梅雨ちゃんの言葉には首を傾げた。あぁ、自分では気付いてないのか。
手探りでお茶子の脇をとんとんと叩く。多分お風呂に入ったことで縄の痕が目立ってるんだよ、と。
「やぁ♡ くすぐったいよカリナちゃん♡」
「「「
私を含む何人かのツッコミが重なって、お茶子はようやく自身に目をやった。
一瞬で真っ赤に染まるお茶子。
恥ずかしさ三割、気持ち悦さが七割くらいかな。
「♡ひゃ──」
嬌声をあげそうになったので口を塞ごうとして──でも、私の掌は間に合わなかった。
結果的には、お茶子のえっちな声が男子達に聴かれることこそ無かったけれど。
キィン、と。
マイクのハウリングをもっと酷くしたような、音にさえ感じられない振動波。
「わっ!?」
「ケロ!?」
「っぐ……!」
お茶子と百を除くみんなが一斉に耳を塞いだ。特に耳の良い響香はつらそうだ。
「、あぅ! あかんあかん、ごめんみんな」
「え、今の超音波みたいなやつ麗日が出したの」
「ちょっとミスってもうた、ほんまにごめん」
今のはお茶子の──〔ベクトル透過〕による“技能”。良かったよ〔
かといって〔超音波〕とかでもないんだけどね。
幸い、音圧は大したものじゃなかった。人間の肺活量で──肺活量による圧力が、
「落ち着いてお茶子。今のは
「え、
「ごめんね、練習しにくくて。でも咄嗟の発動はできてたよ」
お茶子の新技習得は二つの理由で難航している。
私からの因子補給に(今はまだ)手間がかかることと、そもそもの
「んー……難しいなぁ」
大まかに言うと二 ✕ 二で四
現段階でちゃんと分かってるのは百だけじゃないかなぁ。お父さんでさえ専門外らしいし。
──なので、初めて知った響香が怪訝に思うのは当たり前。お茶子の判断ミスも仕方がない。
かくいう私もかなり感覚的に理解してるから……上手く説明できる自信はあんまり無い。
「えーっと、なんて言えば良いんだろ」
言葉に迷っていると、
「音波は…………
──内容は的確だけどそれだけで分かったら苦労はしないね?
けれど百は一言で限界だったらしく。こてりと私の胸に吸い付いた。久々の甘えん坊モードだ、かーわいい。
これまでは二人きりの夜にしか見られなくて、だから最近は機会が無かった──というか私が縮んでからは初めてな気がする。傍目にはますますインモラルな絵面になってそうだ。
「ヤオモモまで……もうこのクラスはダメなんじゃ……」
響香が揺れる声で嘆くけれど、私たち別に年齢制限のかかるようなことはしてないんだよ?
お風呂で裸なのは当たり前だし。
性器には触れてないし。
縄は合宿前に解いてあったし。
おっぱいは性的なだけで性器ではない、イイネ?
とはいえ、
「…………そうね……」
「梅雨ちゃんガチトーンだよ!?」
──三奈の反応通り、梅雨ちゃんは本気で憂えているようだ。となれば一旦いちゃつきは中断しとこう。
いやほら、三奈はあんまり隠さずこっちを観察してたし。
響香のあれは興味津々の裏返しなのがバレバレだし。
この年頃ならみんな興味あるだろうから、別に構わないかなー的な居直りがあったんだけどね。
本気で嫌がってる人に見せつけるのは普通に気が咎める。
「ごめんね梅雨ちゃん。説明させてほしい、聞いてくれる?」
「もちろんよ」
私も我慢はつらいけど、だからこそ梅雨ちゃんに我慢を強いたいわけじゃない。
まずは私や被身子の “個性” が秘める『衝動』のことを知ってもらおう。
…………あ、身体に
──この時、男子風呂では。
少し時間を巻き戻そう。
別に男子たちは聞き耳を立てていたわけではなかった。
本当に偶然、たまたま会話が途切れた瞬間に、壁の向こうでカリナが被身子の肌に吸い付いたのだ。
「きゃん♡」
((((
──覗きなどは言うまでもないが、入浴の様子を想像するような行いも慎むべきである。そのことは大半の男子が当然と考えていた。
しかし続けて、今度は響香の声が聴こえてしまった。
「ついに開き直ったよコイツ!」
((((…………))))
男子全員、思い浮かべた人物はぴたりと一致。流石に考えたことまでは『今まで隠してたつもりだったのか』や『開き直ってはマズいだろう!?』、『
──壁の向こうから、具体的な言葉は聴こえてこない。しかし耳を澄ませば、どこか弾んだ吐息が聞こえてくる、ような……?
そんな不埒な想像を自覚して、数人がわざとらしく咳払いを交わす。みな罪人なので他人を責められる者はいなかった。
「あ〜その、それにしても仲が良いよなぁアイツ等!」
「だ、だよね! 良いことだよね!」
「若干度を越している気もするんだが……?」
カリナの周囲は──別にいつでも一緒なわけではないし、他の交友関係も決して狭くはないのだが──親密な関係にあることは傍目にも明らかだった。
響香のいう“開き直り”が何を指すかは分からないが、普段から人前でも挨拶代わりにキスやチークキスを交わしている。いつでもどこでも、照れも隠れもせず。
かと言って相手は明確に限られているから、『同性での気安いじゃれ合い』的なものでもない。
最初は驚いた──だろうか? 大半の男子が首を傾げる。
入学当初はあんな風ではなかった。いつからか変わったのだ。
ならその変化には戸惑った……はずなのだが、何故かそういう印象は残っていない。
その違和感にポツリと答えたのは──爆豪だった。
「……体育祭からだろーが」
端的な言葉だったが、なるほどと腑に落ちる。
USJで死にかけた長身の麗人。体育祭の日は車椅子だった。騒動が片付いたら小学生サイズになっていた。
女子たちは彼女をマスコットのように可愛がり──マスコット
そういう流れがあったから、イチャついているというよりは慈しみや祈りのようなものを見出して共感もしてしまい──実際、彼女らの日頃の触れ合いは
「そーお?じゃないよ! あんたら少しは慎みあったはずでしょ!?」
壁越しに聴こえただけの男子たちは、響香よりも冷静だ。だから気づいてしまう。『学校という場にしては“慎み”が足りていなかったよな』、『改めて振り返ると普段から相当オープンだよな』、と。
──ということは、今あちらで行われているのはソレどころではない触れ合いだろうと推測され……。
「早いけどもう出ない?」
控えめながらも決然と提案したのは緑谷だった*3 。常闇や口田らはすぐに同意し、対して安定の峰田・上鳴あたりが反発する。
実際のところ彼らは覗きなど目論んでいるわけではなく、
しかし峰田らの目的はどう見ても不埒なものなので、仕方なく賑やかな会話を途切れさせないことにする。
そこへ、不意に。
「わっ」
「ん?」
「
距離と壁があった分、耳を抑えて痛がるほどではなかった。不審には思ったものの峰田のような考えの者は他に居ない。
風呂を出てから女子に聞いてみれば良いだろう。それで済む話だったのだが。
やけに高いところから、声が降ってきた。
「男子ー? 心配要らないので覗かないで下さいねぇ」
「あ、大丈夫ですよ渡我さ──渡我さん!?」
湯から上がっていた男子たちが慌てて下半身を隠す。壁の上に──目元までは見えないものの──金髪頭が飛び出していたからだ*4 。覗こうとすれば簡単に覗けるだろう。
「別に覗いたりしませんけど、ちょっとこっちは内緒話してるので。聞かれると困るんですよねぇ」
「オイラ達は昼間の疲れをのんびり癒やしてるだけだろぉ? なのに風呂あがれってのかぁ?」
「死ねば良いのでは?」
飯田らを黙らせた正論も被身子には通じない。刃物が飛んでこないだけ温情である。
「や、別に『今すぐ上がれ』じゃなくて。さっきの音を気にして様子を窺ったり聞き耳立てたりはやめて欲しいんです」
「わ、分かりました! そのようなことはさせません!」
「いつも言ってますけど飯田くん硬いですよー。まぁただの念押しで、そんなに疑ってはいませんです──」
被身子の声音は、普段よりむしろ柔らかいぐらいのものだったが。
「ミネタにせよウェイにせよ、誰か一人でも聞いたら連帯責任ですから。信じてますよ、皆さん」
((((…………))))
湯に浸かっているにも関わらず、寒気のするような念押しだった。
「出るか!」
「出よう!」
「ウム!」
峰田と上鳴は問答無用で連れ出され、その際の男子は絶えず賑やかであったという。
お茶子の技能については追々。
難解すぎて作者も分かってない説があるので。