【完結】愛慾のヒーローもどき   作:土屋 四方

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 章の変わり目です。
 感想やここすきなど反応お待ちしております(乞食)。
 また、度々誤字報告を下さる方にもこの場を借りて感謝申し上げます。いつもすみません、ありがとうございます。

 では、透ライジング章の導入から。


「バカリナ」|葉隠透:ライジング
0. プロローグ


 透とお茶子が引っ越してきて以来、真夏ながら我が世の春を謳歌している。

 

 夢にまで見た、愛と慾に爛れきった夏休み。

 禁欲はなく、我慢もなく、山ほどのシーツを洗って干したら──こう、視覚的にちょっとした密室になるわけで──もう気分的にはセックスしないと出られない部屋(概念)。

 

 五人で暮らし始めてから気付いた最っ低な本音として、被身子と百の二人だけだと私の体力には及ばなかったようだ。二人の身体を気遣って、無自覚ながらちょいちょい我慢をしてたみたい。

 それが完全に逆転した。むしろ私が気遣われる側である。〔身体変造〕で筋肉痛を治せなかったら皆に寂しい思いをさせていた所だ。

 いや違うんですよお茶子さん無限にできるって意味ではないんです許してください壊れてしまいます頼んでませんフリでもない。

 

 ──いやまぁ、二人きりでイチャつく時間とかそういう方面では、ますます皆に我慢を強いているとも言えるけれど。

 今のところはお互いの不満をちょこちょこと調整できている毎日なので(透のズボラさが百を苛立たせたり、お茶子の性的逸脱が被身子を困らせたり、その他色々)、大きな問題は起こった時に考えよう。

 

 幸せ過ぎて怖くなる、なんて感じられるほど。

 だけど八月の……二十日辺りから、かな。

 

 ──少しずつ、皆との間に壁を感じるようになった。

 これが倦怠期……!?

 

 

 なーんて、原因は分かりきってて。

 私だけ仮免持ってるせいなんだけど。

 

 


 

 

「去年もっと頑張っておけば良かったです……そしたらリナちゃんに寂しい思いさせなかったのに」

「さすがに仮免取って留年は意味不明じゃない?」

 

 被身子は本気で悔やんでいるらしい。

 透は軽くツッコミを入れたものの視線は机に落としたまま、カリカリと参考書を進めている。

 

「焦り過ぎじゃないかなぁ。仮免試験は九月だよ?」

 

 ぴりぴりした空気を和らげようとしてみたものの──、

 

「もう一ヶ月きっとるんよ!?」

「二学期が始まれば課題なども増えるでしょうしね」

 

──中々上手くいかなくて困ってしまう。今回は受験する必要が無い私の言葉じゃ飲み込みづらいだろうし、二人の言うことも事実ではあるんだけど。

 だからって、もうずっとお勉強ばっかりしてるじゃないかー。

 

 食事の支度ができたのでキッチンから号令すると、これは流石に手を止めてくれた。

 

「はい! とりあえず晩ご飯にしようよ」

「色々任せきりでごめんねぇ」

「それは全然。皆に受かって欲しいしね」

 

 てきぱきとご飯をよそって皆に渡していく。料理自体はそこそこだけど、こういう『お世話してる感』は好きな方だ。

 それにメニューの決定権も私にあるから、ここしばらくは汗をかきやすいものばかり。すると当然お風呂に入りたくなるわけで、試験まで皆のお世話係になろうと決めた私はもちろん入浴のお手伝いもする。役目なので。

 

「ここまで、して頂く必要、はっ、っ♡」

「遠慮しない遠慮しない」

 

 身体を使ってえっちなお誘いをかけると割とあっさりノッてくれるので大助かり。

 

 

 野生味エロの被身子!

 気分屋で性欲に波はあるけど、私から誘えばほとんど断らないし被身子からも積極的なタイプ。喰える時はとりあえず喰う、みたいな。

 ごく珍しい『そういう気分じゃないです』な時でもほとんど動かずに身を任せてくれるの、控えめに言ってめっちゃ興奮する。

 ちなみに特にえっちな気分になると、普段は大切に仕舞っているカチューシャを持ち出してくるんだよね。それが中学生の頃に百が創った(何度かリファインはしている)猫耳カチューシャなの最高じゃない?

 ──そう言えば、これまでは保留にしてた尻尾。誕生日(このまえ)の反応を踏まえると、創ってもらうのもアリかな……?

 

 むっつりエロの百!

 自分から誘ってくることは滅多にないけど私からの誘いも断らないタイプ。反応から察する限りでは『気分じゃない』みたいなことも無さそう。いつでも大いに盛り上がる。

 というか、わざと我慢するとかして自分を盛り上げることに長けてるって方が近いかな。つまりえっちなことしてない時でも楽しくえっちするための前フリだったりするし、頭の中は割とおピンクだったりする。むっつりだなぁ。

 この場合のむっつりはもちろん褒め言葉だ。正直このアパートでの性活生活は──特に夏休みの今は──羞恥心みたいなものがどんどん希薄になっていくから。

 休みが明けたらちゃんと学校生活に戻れるって自信を失わずにいられるのは、いつまでも新鮮に恥ずかしがってくれる百のおかげだよ。

 

 わがままエロのお茶子!──わがままというか、良く言えば素直なんだけどね、性欲に。

 もはやこの家のチャンピオン。底なし。

 攻受どちらもこなすスイッチヒッターながら自分のやりたい方しかやらないし、攻と決めたら譲らない女王様。

 被身子にだけは受け専だけど、最近は百と透にも(S)の手を伸ばしつつある──割と荒っぽい攻めもしたがるので、そういうのは私にしときなよって言ってるのに。きちんと拒否ればしっかりやめてくれるので、そこだけは安心してるけど。

 大丈夫? ちゃんと学生らしい学生に戻れる?

 

 

 ──そして。

 

「ごめんねリナリナ。焦らしてるみたいで」

「焦らされてるよー。試験終わったら覚悟しといてね」

「ひぇ……頑張ります……」

 

 ピュアラブな透。

 ……ピュアエロではない。本当に。

 

 試験へのプレッシャーもあるんだろうけど、どうやら性欲は私たちの中で一番薄いようなのだ。元々誘ってくる方ではなかったし最近はフラれ続けている。

 反面、いちゃいちゃ度はかなり高いんだけど。軽いキス──うち基準で──なら頻繁にしてるし今もお風呂で後ろからハグしてもらってるし。

 

 私の、小さいけれども骨太でムキムキな身体を、壊れ物のように優しく扱うのだ。まるで接触面積の広さを追求してるみたいにぴったりと抱き締めてくれて、頬と頬をしっとりと触れ合わせて。

 ついつい性的な触り方として受け取りたくなっちゃうけれど、透にそういう意図は無いらしい。

 私の心拍を感じたいんだって*1

 

「……ちょっと速め……?」

「恋人とお風呂はいってるんだよ?」

「うれしい。私もドキドキしてる」

 

 唇の感触は微かで、互いの呼気を絡ませる方がメインって位の、淡くて綺麗なキス。

 ──正直に言えばムラムラする、けど。

 私はもう、愛が求める触れ合いと慾に駆られる与え合いを区別できないような所があって。背中に感じる透の心拍、胸やお腹の柔らかさ、息遣い……全部愛おしくて、みんな(むさぼ)りたくなってしまうから。

 

 きっと透は、そういうつもりは無いかも知れないけど、教えてくれている。むっつりな百が羞恥心を繋ぎ留めてくれるみたいに。

 これがアガペーの方の愛なんだと。エロースばっかりに偏り過ぎるなと。

 だから私は、透がしてくれることをなるべく真似てお返しをする。目一杯の気持ちを込めて。えっちなキスになってしまわないように。

 

 

 

 ……とはいえもちろん、それはそれとして、因子補充はしてくれる。

 事務ックス、いいよね!

 

「透、じょう、ず♡」

「………………ごめん、今日は我慢できないかも」

「やった!

 

 中でも『本当はしたいのに我慢するために装う事務ックス』なんて最高だし、そこから(たが)が外れての突入とか盛り上がること間違いなしだよ。

 

 

 ──後日、百によってお風呂の防音性が強化された。リビングにまで声が届いて気が散るらしい。

 ごめんって。

 

(地下には全員が同時に入っても余裕な大浴場なんてものもある。……お湯張るのも大変だから滅多に使わないけど)

 

 


 

 

 そう言えば、忘れてるかも知れないから言っておこう。

 

「ところでさ、みんな」

 

 すっかり仮免試験を受けるつもりで──受かるつもりでいるみたいだけど。

 

「相澤先生が許可しなきゃ受験もできないからね? 普通は二年次からだって言うし」

「「「「!!!!」」」」

 

 あ、百も忘れてたのね。だから焦り過ぎだって言ったのに。

 最初に硬直が解けたのは被身子だった。

 

「わ、私は大丈夫ですよね、去年OKもらってますし」

「相澤先生だからどうかなぁ……改めての許可は必要だと思うよ」

「……そういえば去年はかなり無理言って受けさせてもらったんでした」

 

 念の為ヒーロー公安委員会の規定はチェックしてある。留年したら受けられないとかそんな定めはなかった。

 もちろん先生の許可は必要だけどね。

 

「……うーん。生徒に仮免を取らせること、相澤先生が消極的に思ってるなら微妙に私のせいもあるかも……」

「? なんでリナリナのせいなの?」

「USJの件でね」

 

 私が脳無との戦闘を委ねられたのは仮免を持ってたからで。その後、脳無とは無関係だけどあんなことになって。

 間違った判断はしていないと考えていても、生徒に死なれかけた相澤先生はかなり気にしていた。

 

 だけど四人とも、当時の先生の様子がそんなにおかしかった印象は無いという。取り繕うの上手なんだな。

 

「カリナさんが目覚めてからは体育祭のことで頭が一杯でしたものね……気がつきませんでしたわ」

「生徒から心配されたい人じゃないからいいんじゃないです?」

 

 体育祭に出られなかった被身子に限れば、単に相澤先生への興味が薄いせいっぽいけど。

 それはともかく。

 

「被身子に限らず、先生の判断待ちってこと。今年受けるつもりで許可が出なかったらがっかりだから、そんなに焦らなくてもって」

「ぅ〜ん納得やけど、そんなら早く教えてー!ってなってまう」

「ほんとだよねー!」

 

 待つしかないってのもつらいよね。

 私に任せてくれたら不安なんか忘れされてあげるよ?

 

 


♡ ♡ ♡ ♡ ♡


 

 

 先生の側も何も考えてないってことは無いはずだ。受かりそうな実力者は何人かいるんだし、『一年生だから受けさせない』なんて不合理だし。

 皆の気を紛らわせる為に可能性を挙げてみただけで、全員に許可が出るんじゃないかなぁ?

 危ういとしたら去年も受けた被身子くらい──とはいえ去年から大きく成長してるのは確実だから、きっと大丈夫。

 

 

 他は誰も…………あ。

 強いて挙げるなら透か。()()()()()()

 

 

 受験許可が下りない可能性は、ここにいる四人の中だとやや高いかも知れない。

 あるいは受けられるにしても──ちょっと問題あり、か??

*1
『またすごいフェチを身に着けたね』と言いかけて我慢した。




 次話とその次、六月頃の回想。
 濃厚な独自設定回。
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