第1話:『悲劇』の終着
その少女は悲しき運命に翻弄され、まだ幼き命を失ってしまった…はずだった。
ーーーーーーーー
「…ねえ、ちょっと!
しっかりして!」
地球とは違った、ある程度文明レベルの進んだと推測がつく世界…その中の比較的自然に溢れる場所。
眼前に横たわる少女へ必死に声をかけるのは、やや年上の印象の少女。
やや茶色がかったセミショートの銀髪に、桃色という方が近い赤の双眸。
洗練された顔だちをより一層引き立てる白い肌…紛うことなき“美少女”である。
「ぅ…ん、ここは…?」
銀髪少女の声に反応し、目を醒ますもうひとりの少女…こちらは長く垂らした金髪に深紅の瞳、同じく雪の如き白い肌が印象的。
…2人とも相応の年齢へ成長した際には、絶世の美女と称されるくらいに美しくなっている…それはほぼ間違いないだろう。
「よかった…心配したよ、このまま目を醒まさないんじゃないか…ってね。
でも…何でこんなところに倒れてたの?」
銀髪少女に問いかけられ金髪少女は記憶の底を手繰る…だが。
「なんで、って…っ、わ、わからない…!」
「わからないって…思い出せないってコト?」
「…(こくん)」
返ってきたのはある意味予想通りの反応…銀髪少女もそれを想定していたのか、ごく小さな溜息をつく。
「そっか…じゃあ仕方ないね、とりあえず私のウチに来なよ…どっちにしろこのまま見捨てられないし」
「えっ!?」
「だいじょーぶ…パパもママも、あなたのコトを嫌がるような人じゃないから♪」
驚く金髪少女の腕をとって、なかば強引に自分の家へ誘う銀髪少女。
…これが後に、紡がれてゆくひとつの“伝説”…その始まりとなるのであった。
ーーーーーーーー
活発そうな印象の銀髪少女に腕を引かれ、草原ともいえる平原を進む金髪少女。
程なく、周囲の風景にぴったりとあった印象を持つ家へ辿りついた2人…大きさから察するに、間取りは3LDKというところだろうか。
「ココが私の家だよ…さ、入って入って!」
「きゃ…!?」
先程と同じように強引に、今度は金髪少女の後方へ回りこんで背中を押す銀髪少女。
建物へ入り、日本でいう洋室のリビングの扉を開けるとそこには…まだ若い一組の男女が2人を待っていたかのような雰囲気で座っていた。
「ただいま~!」
「おかえりなさい」
銀髪少女の挨拶に、少女と同じ色の髪をした女性が先に反応して返す。
「おかえり、セレス…その子が?」
穏やかな口調で娘の帰還を歓ぶ黒髪の男性…この2人がセレスと呼ばれた銀髪少女の両親らしい。
そして…どうやら2人は、金髪少女のことを既に知っていたようである。
「うん、近くの池のほとり…そこに倒れてたの」
「そうか…ともかく話を聞くのは後にしよう、何にせよ今は体と心をリフレッシュさせる方がいい」
「ええ…まずは見た目を綺麗にしないと、まだ少し早いけどお風呂に入ろうね…セレス、手伝ってあげて?」
「は~い♪」
「…」
自分が把握するより早く、話を進める3人…最後には、なかば諦めて3人に従うことにした金髪少女。
ちなみに入浴中…セレスがスキンシップと称して、金髪少女の肌に積極的…いや過剰に触れようとするのだが、金髪少女はそれを頑なに防ぐのであった。
登場した3人家族は、察しのいい人には気づかれてしまうかもしれない要素を持ってます。
3人の簡単なプロフィールは次話の後書きで。