できたよ先生。生徒がとびっきりの悪夢を見る装置だ!   作:フォトンうさぎ

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一之瀬アスナ:欠落

「もー! どこまで行っても見つからないよー! ご主人様ー!」

 

 一之瀬アスナは一人で荒野をさまよっていた。砂漠化が進むアビドスの区域でなく、廃墟が残る区域でもなく、キヴォトスの外。区域という言葉すら存在しないような、遠く離れた外側。

 キヴォトスの外の景色はどこまでも同じで、荒れ果てた褐色の大地がこれでもかと続き、文明の痕跡すら何も無い。

 

 ミレニアムサイエンススクールを卒業したアスナは、そんな虚無の大地を歩き続けてずっとずうっと探している。キヴォトスで暗躍するゲマトリアを打倒し、行方不明の連邦生徒会長を発見し、役目を終えて先生という座を降りて『外』に帰っていったご主人様のことを。

 

 平和になったキヴォトスは相変わらず騒がしいことが続くが、アスナは先生が去ってからずっと不満足だった。大好きな仲間達と一緒にいても、大好きな戦闘が起こっても、大好きなご主人様である先生がいない。

 

 大事なピースが欠落して、永遠に完成することのないパズルを何度もやり直しているかのよう。そんな日常に我慢できなくなった彼女は、気づけばキヴォトスという地を飛び出して外の世界を練り歩いていた。

 

「んー、あれなんだろ?」

 

 なだらかな傾斜の丘を登ると、まだどこまでも広がる荒野の途中に、ポツンとガレージじみた建物が存在していた。あそこに何かがあるなと直感が頭の中を駆け抜けて、アスナはそこ目掛けてまっすぐに走り出す。きっと、あそこには何かがある。

 

 四角く鈍い銀色のガレージは所々が錆びていて、中には薄汚れた機器がいくつか置かれていた。しかし勘の鋭いアスナは、機器の間で(ほこり)の積もっている量が異なる場所を発見する。

 きっとスイッチや基盤を隠すならここだろうと適当にあさってみると、やはり機能している操作パネルがあり、地下へと続く階段が床を割って姿を現した。左右の壁にぼやっとした電灯が灯っており、ガレージ内の埃から考えると、出入りは少ないが生きている施設だということを知らせる。

 

 アスナは物怖じせずにアサルトライフルをいつでも撃てるように構え、飛び降りるかのような勢いで階段を下りていった。対人戦を考慮して銃を構えるのは久しぶりな気がした。

 

「なんだろ、ここ」

 

 施設の構造はアリの巣のようになっていて、各部屋にはアスナとって無価値な研究資料や機器が置いてあった。人を全く見かけないが、施設が生きているということは確か。

 

 たぶんこっち、と適当に進んでいく。きっとここな気がする、とある部屋の自動ドアを開ける。すると、椅子に腰かけている眼鏡姿の男性と、その正面に立つ白衣の男性と出くわしてしまった。しかし、眼鏡姿の男性はアスナがずっと探し続けていた人で――

 

「ご主人様!」

 

 嬉しすぎて、アスナは脇目もふらず大好きなご主人様に飛びついた。ああ、ちょっと変わった感じがするけどご主人様の匂いと感触だ。涙が溢れそうになりそうなアスナの顔を見て、男性は一言告げた。

 

 どなた、ですか?

 

 アスナの心が、再び凍り付いた。

 

 


 

 

「ご、ご主人様? アスナだよ? ご主人様のアスナだよ!?」

 

 わけがわからないという顔をする眼鏡姿の男性。男性の向かいに立っている研究者はアスナを払いのけることもなく、自身の顎に手を当てて撫でている。

 やがて研究者はアスナがキヴォトスの者だということを認識すると、震える瞳でただご主人様を見つめるだけの彼女に、淡々と説明していった。

 

 研究者は述べる。キヴォトスにいた先生という存在は、人工的に生み出された人間の一体であるということ。役目を果たした先生という存在は、綺麗さっぱり記憶・人格・経験を『処分』したということ。

 

 大人のカードなんていうデメリットがキツイ存在を、大事な大人に使わせるわけにはいかないだろう? だから、こうやってリセット・再構築するんだ。研究者は呆然とただ立ち尽くすアスナへ淡々と説明していく。

 

 つまり、アスナの目の前に立っている存在は、先生であってもう先生ではない。

 

 彼女なりの鋭い直感が、残酷に気づきをもたらす。ああ、大切なパズルのピースは、失われてもう二度と帰ってこないのだと。 

 

 この個体が欲しいのであれば、スペアの中からどれか一体を――

 

 研究者の言葉をそこまで聞いて、アスナはドアを蹴り破り脱兎のごとく部屋を飛び出した。これ以上は研究者の言葉を聞いてはいられなかった、現実が信じられなかった。

 

 心のパズルはこれから先、永遠に完成しない。

 

 


【後書き】

 

 大型犬、一之瀬アスナ、いっくよー! 犬と言えばそう! 学習性無力感の実験ー!!

 

 キャラもビジュアルもイカすんだこれが。広告とかプロモーションをあんまり見かけなかったブルアカが、駅前広告や短編アニメを提供できるようになったのって、バニーアスナの実装のおかげでは……? バニ神様ありがたや、拝んでおこう。

 

 しかしなんて乳だ。うぅアスナ、先生のバズーカ砲をそのやわらかおっぱいで『エッチはダメ! 死刑!』して……。頼んだら快く笑顔でやってくれそう。C&Cの子達は、先生が土下座したら『ダメ! 死刑!』してくれそう。

 

 さて、C&Cの子達は絶望や喪失を体験しても、また強く立ち上がりそうですよね。ネルとアカネは辛さを背負っててもすぐに歩き出しますし、カリンも2人の背中を苦しくても追っていきそう。

 えっ、つまり先生をどれだけ酷い目に遭わせてもいいのか!? 実質先生のライフが無限……ってコト!?

 

 でもなんかアスナは違う。一番大事なものを失うと、心にぽっかりと大きな穴が空いて元の元気さを取り戻せなさそうです。笑顔にはなれるんだけど、なんか違う笑顔! チェキ1枚ください。

 

 そんな状態で戦闘してみましょう。あれ、戦い方が違いますね。真顔で相手の顔面を殴っている、殴る、殴る、殴る、(うめ)く相手を投げ捨てる。

 コワイ。先生は最強のエージェントをその命をかけて立派に育て上げてくれました。最強アスナ完成です。元気なキャラは本編後のストーリーで酷い目に遭ったり闇落ちするって相場が決まっているんだ。

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