コイツはオリジムシですか?いいや尾晶蠍です 作:ゲルゲルググ
広大なる大地、テラ。だが広大であるだけで、その大地の半分程は砂と岩で敷き詰められた荒野であり、地面からそびえ立つ巨大な都市も、緑の森も少ないと言っていい。
だが、別に人が生きていない訳では無いし、巨大な都市もちゃんと存在している。ただ、それらは常に移動しているのだ。
理由は1つ。天災と呼ばれる災害の回避。どれだけ家を建て発展しても、天災は全てを奪い去って行く。だからこの大地の人々は、都市を移動させると言った方法を取った。
それ故に、この大地の約半分は荒野なのだ。イェラグの様な天災が少ないと言う理由で我々がよく知る都市を築いている国家もあるにはあるが、本当にごく少数である。
そんな傍迷惑の権化の様な天災。だいたいは隕石という形で発生するが、場所によっては様々な形を取る。例えば洪水、雪害、豪雨に暴風。そして…………
荒野のど真ん中に、砂埃を舞い上げながら疾走する四輪駆動車が1台。
運転手は青い髪で、天使の輪っかと結晶の様な羽が特徴であるサンクタ族の女性。だが、そのサンクタ族の特徴とは別に、黒い角と細い尻尾という、サルカズ族の特徴も持った不思議な女性だった。
車内には彼女1人……だというのに、彼女は何故か時折口を動かしている。
【アレは数年前まで遡る。あの時ワイはこの世界に生まれ落ち、右も左も分からぬ状態だった。故に、その巨体であっちこっち行ってしまってなぁ、イェラグに迷い込んだ時は見つかった末に全力で討伐されかけて死ぬかと思いました。いやマジで怖かった。あの黒いキャプリニー元々ハンターか何かだっただろ絶対】
「確か、カジミエーシュの騎士だったんじゃなかったっけ?」
【騎士ィ?いいや違う、あの野蛮極まりながらも目標を討伐するために洗練されきった動き、アレは紛れもなくハンターだ。ワイの目は誤魔化せんぞ】
「ハンターって、今じゃ珍しい駄獣とかを狩って暮らしてる狩人の事だよね?もう極東の田舎にしかいないって話も聞くけど、君はその彼らをなんだと思っているんだい?」
【高い所から落ちても傷一つ負わず、毒に侵されても数分で体内で無毒化するどころか、そもそも効かない奴もいて、源石の様な体内を侵食するウィルスを撃ち込まれたとしても敵を殴り続ける事で克服して己の力と成す存在で御座います】
「…………いったいどんな怪物なんだい?」
【いや、普通に人間だけど】
「…………」
暫しの沈黙。
「世界にはまだまだ知らない事が多いんだね〜」
【まぁアレこそ百聞は一見に如かずな存在居ないからな。実物見せたい所だが……】
「いや見せなくていいから」
即答で断られた。
堕天使は会話を打ち切るかの様にアクセルを強く踏む。四輪駆動車の走行速度が上がると同時に、先程から彼女の頭の中に響く声が悲鳴を上げた。
【おいゴルルァ!!免許持ってんのか?!急に速度をオワァァァァ?!!ヤベェ落ちる!】
「ハハハ、もうちょっと我慢してね。そろそろ…………、………………ん?」
暫くアクセルを踏んでいた堕天使は、怪訝な表情を浮かべると同時に躊躇なくブレーキを踏んだ。
【ギャァァァァァァ?!!?】
駆動車の急停止と共に、ボンネットに黒い塊がゴシャン!と落ちてきた。コイツがさっきから堕天使の頭の中へ直接話しかけている正体。
「丸まってると本当にオリジムシみたいだね」
【オリジムシじゃねぇ!尾晶蠍だッッ!!!】
目の前の蠍の様なオリジムシ?は尻尾を丸めながら力を込め、ぴょんっと……ぴょんっと……脚をジタバタ捺せながらソレを数回繰り返し、漸くひっくり返った状態から立ち上がると、堕天使に向かって両方の鋏を振り上げ、威嚇行動を取る。
【何やってんだモスティマァ?!】
「う〜ん、ちょっと待ってよ?」
【おうよ】
モスティマと呼ばれた堕天使が運転席と助手席の間に配置されている機械を何やらカチカチと弄りだす。その行為が暫く続いた後、彼女は徐ろに顔を上げ……
「ごめん、カーナビ壊れたかも」
【……ファ?!】
「う〜ん……いったい何処で壊れたんだろ?源石結晶を迂回する時に磁場か何かにあてられて壊れちゃったかな?」
【イカれた原因絶対ソレだろ】
「それなら不味いな、天災の影響で目印にしてたか岩とか吹き飛ばされてるかもって事で頼ってたのに。これじゃあ安魂祭に間に合わないよ」
【ウッソだろオイ!早く直せよこんなモン!叩けばイケるって!】
「それ、もっと悪化するだけだと思うよ」
読み込ませた記録情報を元に、地形や目的地に設定された移動都市の位置を予測して正確にマッピング。この広大な大地での旅をナビゲートしてくれる凄いカーナビなのだが、どうやらソレが壊れてしまった様だ。それに加え、カーナビの誤ったルートを進んでいたのか、何処にいるのかも分からない状態。非常に不味い。
【どうするよ?】
「う〜ん……ねぇ君」
【なんだよ?……オイまさか】
モスティマは、目の前の尾晶蠍に向かって両手を合わせて上半身を少し傾け、少しニヤけながら片目を瞑る。
「何時もの、お願い出来るかな」
【チクショウ!龍門に着いたら、ジェイの団子を2人分だからな!?】
「うん、約束だ」
尾晶蠍はボンネットからぴょんっと地面へ飛び降りると、そのまま地面へと潜って行った。
少しして
昼が過ぎ始めようかと言う頃、四輪駆動車のそばの土が盛り上がり、小さな尾晶蠍が姿を現す。
「どうだった?」
【向こうの方に、鉱山みてぇなのがあった。距離も近いし、もしかしたら此処がどの場所が聞けるかもな】
「ありがと。じゃあ、早速行こうか」
モスティマは流れる様に運転席へ乗り込み、尾晶蠍は荷台へ跳躍して飛ばされないように荷物を留めてる留め具の紐部分を掴む。
少ししてから、四輪駆動車は尾晶蠍が指さした方向へ発進した。
モンスター転生系の小説って、戦闘シーンにならんとモンスター要素があんま無いのよな。別にだからどうしたって話だが。
んじゃ、また皆が忘れた頃に投稿するわ。じゃあの