超昂大戦SS 新春奉納! ダイビートかくし芸大会・ここに開演!   作:環 藍河

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※2023年1月開催イベント「天岩戸のお年玉伝説」に関するネタバレが含まれます。気にされるかたはご注意ください。


前編 新年会やり直し要求! 超昂戦士のかくし芸乱舞(全力フルスイング)

§1 当直シフト組・阿鼻叫喚の新年会

 

「へえ〜、そ〜お〜で〜す〜か〜…。

よ〜お、ございました、ねえ〜。」

 

仕事始めの1月4日。元日宿泊組の楽しい(?)温泉宿ツアーの様子を聞かされたライカは、頭領相手にあるまじき、ご立腹であった。

「ライカー、松の内も明けないうちにゴネると、幸せが逃げる。」

「うっさい。これを仕事始めでスルーされたら、年のはじめにケチがつくんですー。」

 

「…第一、君たち元日勤務シフト組も、交替で同じ温泉に宿泊してきただろう…?」

トキサダにとってはあくまで、問題なしの構え。

だが…

 

「私らの1泊2日はっ! たった1人に! 完膚なきまでに破壊されましたっ!」

 

NAUが買収し、毎年正月に厚意でダイビートに提供する温泉宿。ライカたちにも当然、日程をずらして宿泊旅行を進呈しているのだが…。

「ただでさえ、こっちの班にはゴウカ様やフウカ様…うわばみ軍団勢揃いだったのに…!

何なんですかっ、あの大トラの姐さんはっ!」

 

そう。

酒呑童子の因子を持つ…もとい異能力を持つ、魔女でも幻魔でもない、久世の『元』七暴。

酒の匂いを嗅ぎつけて、やって来ましたフーテンのちいちゃん。

 

〈うへへえ〜〜い、さすがに九州熊本の焼酎呑みにゃあ、このちいちゃん、もっぱら清酒ばっかしの、秋田ののんべ程度じゃ、敵いませんってばよお〜。〉 

 

(うくっ…)

確かにゴウカは、もっぱら球磨焼酎をスルスル~と呑んでいた。が。

 

〔…あなた…の、飲み過ぎよ…?〕

同じく酒豪のフウカが、目を白黒。

 

ちいちゃんの周辺に転がる空き瓶…もとい。

ビールは瓶ではなく、サーバー用の樽ごと。

日本酒は大吟醸の一升瓶ゴロゴロ、さらに御年賀の樽まるごと。

焼酎はマグナムボトル(4L)。

ウイスキーは業務用(5L)。

 

…想破七閃の酒豪2人が戦慄し…制止を試みる。

〈あははは〜っ、あい、わかった〜、わっかりましたあ〜。〉

ようやくグラスを置くちいちゃん。

一瞬の安堵も束の間。

 

どんっ!!

〈…わかったからあ、飲むぞおおっ!〉

びくっ!!

 

さっきグラスを置いたばかりの手には、ディスプレイ用のはずだった、ワインのマグナムボトル(6L)が握られていた。

〈この土佐のいごっそうに、酒を止めるなんてえヤボはあ、許さんぜよお〜〜っ!!〉

 

(…わかって、ないよなあ…。)

〔出身地が変わったわねえ…?〕

 

……

「ゴウカ様もフウカ様も、酔い潰されはしなかったけど、いつブチ切れるか周囲はハラハラでしたよ!」

「そうか? カジノ以来で楽しかったぞ! ライカ、何が不満?」

「不満も不満、大不満よっ!

おかげで宿のお酒は高いのから安いのまで全部呑まれて!

らんちき騒ぎで周辺住民から苦情出まくりで!!

しまいにゃ、酔いに任せて装身してっ!!!

ヘタすれば私ら、来年から出禁ですよっ、出禁っ!!!!」

 

「ライカ…2つだけ、言わせてくれ。」

(頭領…?)

 

「1つ。俺たちは呼んでない。」

勝手に寄られて、勝手に飲まれた。

 

「2つ。建造物損壊は未然に阻止した。さすが七閃。」

…これでも十分、穏当に宴の幕を下ろせた部類。

 

「そ…そんなこと言われても、あれじゃ慰安が慰安になってませんよおっ! 頭領、補填してくださいよおっ! ほーてーんーっ!!」

 

「…だからな、俺から妥協案を1つ。」

「はい?」

「明日の晩、ここの食堂で新年会を任意参加・ノンアルコールで開催する。まあ、懇親会だと思ってくれ。そこでかくし芸大会をやるんだが、その優勝賞品に、あの温泉宿のペアチケットを出そう。」

 

「ほほう…っ!」

にやり。

 

「宴会を楽しみ…その上で、補償が欲しければ、自ら掴み取れ、と…。

いいでしょう、そのチケット、私とイノリが貰い受けましょう!」

 

「おおっ? よーしライカー、がんばれー。」

「何を他人事みたいに…。」

「ライカが一発芸を頑張って、私が棚ぼた。

これでうぃんうぃん。違う?」

 

がしっ。

「あんたが芸をやんなきゃ、温泉宿なんて穫れるわけ、ないでしょお〜〜っ?!」

両肩を鷲掴みにし、メンチを切るように、ライカがイノリに因果を含める。

「おおっ、ライカの顔芸も悪くないぞ?」

 

こうして、ダイビート新春かくし芸大会に【イノリちゃんテイマー】ライカの参戦が決定。

 

ちなみに。

「ライカはお酒、飲みたかった?」

「別にー。みーんなベロンベロンに酔っ払ったどさくさ紛れに、未開栓の程よいヤツをパチって質流しにすると、結構なお小遣いになるだけー。」

(やっぱりコイツはアウトだあっ!)

 

 

§2 獅子は舞い、唐傘は回り、虎は漢道を往く

 

ダイビート食堂で改めて開催された新年会の余興・かくし芸大会は、新春らしくめでたい芸が繰り広げられた。

 

切り込み隊長はこの人。

「おうおう、閃忍マユリ様と狐狗狸號の初走り、めでてえ新春の獅子舞カスタムだぜえ! アタマ噛まれてえ奴は前に出やがれえ!」

想破の傀儡操者・マユリが操るのは、いつもは騎乗し戦場を縦横無尽に駆け巡る、絡繰り人形・狐狗狸號。

そして今日は機体に唐草模様のローブを纏わせ、ヘッドに獅子の頭を猛々しくあしらったスペシャルチューン。

 

「うひゃあああっ、しびれるうっ!

マユリさんっ、あたいの愛車とタンデムしてくれよっ! なっ?」

「おうっ、こいつの良さがわかるたあ、見どころあるじゃねえか?」

マッハのバイク魂には、突き刺さるものがあったようだ。

 

なお。

(キツネでイヌでタヌキの、獅子舞とは…?)

疑問は浮かんだが、野暮なので腹に収めたトキサダだった。

 

「ほほう、太神楽じゃなあ。」

「だい…かぐら?」

「何じゃ、エリーは知らなんだか。」

「し…獅子舞は知ってるわよ! でも…」

 

こほん。

「太神楽はのう、厄払いを祈願して神様に捧げる舞や曲芸から成る、この国の大衆演芸じゃよ。獅子舞はその一つ、ということじゃな。

それこそ、アメノウズメがアマテラスを天の岩戸から誘い出した踊りも、太神楽じゃぞ?」

「そ…そうだったんだ…。」

 

「ほっほっほっ。では若者の後学のためにも、太神楽の曲芸も見せぬとなあ。

ディープアセンション・ミヤビ・ウィッチ!」

 

  しゃきいいん…!

 

「皆のもの、新春おめでとう!」

 

ばさっ。

雪女の魔力因子を持つ雅の唐傘が、美しく開く。

 

「エレンちゃん、ちょいと借りるぞい。」

「えっ…? あっ、あたしのアタッシェケース!」

 

ばっ、とととっ、くるくるくるくるくる…!

 

「ほおれほれ、末広がりの傘の上、札束溢れる鞄が回り、これで皆の金回りもよろしくなろうというものよ! めでたや、めでたやあ!」

 

 わあ……!!

 

一糸乱れぬ所作で、傘が踊り、鞄が回る。

その美しさに、観る誰もが息を呑み、見入った。

それにしても…詐欺師・神騎プラチネルのアタッシェケースをいとも容易く手玉にとるとは…。

 

「ではどんどん行こうかのう?」

 

雅は目につく品を、手当たり次第に傘で回していく。

続いては、エスカリバースの朱塗りの盃。

「五合枡ならますます繁盛(半升)、ではこの盃なら、どうじゃろう? のう、ユカちゃんや?」

「面白え、ますます酒好き(さかずき)ってかあ?」

「ほっほっほっ、美酒に恵まれる新年になるとよいのう?」

 

最後は、アカリの破魔矢・ディスリン。

「恋も愛も、回り回って巡り巡って、やがて堅いえにしを結ぶもの。

アカリちゃん、い〜っぱい恋して、目一杯いい女になるのじゃぞい?」

「わっわっわっ、わーーーっ! 

もうワイ、自我が戻ってますさかいっ! 雅はん、カンニンしてえ〜〜っ!!」

(あ…あはは…っ。)

 

熟練の技と、含蓄のある雅のトークに魅せられる参加者一同であった。

 

 

「えっさー!」「ほいさー!」「えっさー!」「ほいさー!」

 

 【《(えええーーーっっ!!?)》】

 

元日の神事でも活躍した干支少女が杵を担ぎ、その師匠(幻魔)が臼を担ぎ入場。会場どよめく。

 

「宴もたけなわ、ここで我ら『クールジョー』が、漢の弥栄を祈願して餅をつく!」

「ダイビートの戦士諸君、卯年もますます漢たれっ!」

 

 【《(新春恒例ーーーっっ!!?)》】

 

「寅年はまた11年後! だが真の漢は、卯年も熱く燃えている!」

「おう! 師匠! お願いしますっ!」

 

そう言って弟子・タイガージョナは杵を師匠・タイガージョーに差し出し、自らは返し手として臼の横で構えをとる。

 

「うむ! 弟子よ! 世の中ではどんな漢が新年を迎えているのだ!」

「はい! 年賀状を欠かさず送る漢がいます!」

 

ぴたっ。

 

 「…この、大馬鹿者がああああっ!!!」

 

【《(ひいいいいっっ!!?)》】

タイガージョーの咆吼が会場を震わせ、ダイビート全員が萎縮する。

 

 「漢は黙って!」「肉体言語!」

 「漢なら!」「新春の喜びも拳で語れっ!」

(…道場破りか…!?)

かつてタイガージョーと拳で語り合ったトキサダだが…元旦早々はマジ勘弁であった。

 

「次っ!」

「はい! 給料もお年玉も宝探しの賞金も、お菓子にムダ遣いする超昂戦士がいます!」

【《(…あっ。)》】

全員が全員、ぐうたらロリ巫女を思い浮かべていた。

 

ぴたっ。

 

 「…この、愚か者がああああっ!!!」

 

 「漢は黙って!」「プロテイン!」

 「漢なら!」「筋肉こそ至高のお年玉と知れっ!」

 

(のののが…マッチョに…?)

…想像してはならない。

 

「最後っ!」

「はい! 給料をありったけ、猫カフェにつぎ込む超昂戦士がいます!」

【《(ぎゃあああーーーっっ!!?)》】

この正月にキャラが崩壊してしまった超昂戦士が一人いたなあ…。

 

ぴたっ。

 

 「…この、たわけ者がああああっ!!!」

 

 「漢は黙って!」「虎の穴っ!」

 「漢なら!」「猫など可愛がらず、虎の可愛がりに耐えてみよっ!」

 

(…新弟子募集?)

 

がたんっ。

「フラックスプロージョン・ビートチェンジ。」

 

  しゃきいい…ん!

 

「よお〜し、お前らちょっと表に出ろや。

お望み通り、可愛がり返してやっからよお。」

「『あっ…!』」

漢の道を求める師弟は…。

虎のくせに、ダイビートでも指折りの、恐〜い虎の尾を踏んでしまった。

(…やっちまったなあ…。)

……

〘オラあっ、可愛がってやんぞお!

ヴァルハラ・エスカレーションっ!!!〙

 

  どごおおおっ!

「『ぐはあああーーーっ!!!』」

 

(私は…タイガージョーさんにも、ジョナちゃんにも、生きていて、ほしいけど…!)

トレーニングルームの方から響く轟音と悲鳴に、虎2頭の無事を祈るアカリだった。

 

 

(クックックッ…こいつらは所詮、我らの前座よのお…!)

(ライカー、新年早々、顔が悪どい。)

自信満々のライカと、重労働の9割を担う方のイノリが舞台袖でスタンバイ。

果たしてこの閃忍コンビに、静かでゴージャスな慰安旅行は恵まれるのだろうか…?

【後編に続く】




筆者の環藍河です。
原作は2023年新春イベント「天岩戸のお年玉伝説」に続き、復刻イベント「裸いっぱい温泉旅行」が始まりました。

…まだ正月ネタ、有効期限内…ですよね?

そんな思いで、新年そうそう「マジメかー!」系新作SSを2本連続投稿しました後ゆえ、今回は脳みそショートカット、全力フルスイングのギャグSSをお届けの運びと相成りました。

「バカじゃないの。」「…あたおか?」
…読者諸兄におかれましては、頭からっぽにして、御神酒片手に毒づきながらお楽しみいただければ幸いです。
※ルビー好きの環は、首尾良く正月ルビーをお迎えできて、本日ホクホクであります。今日は何を言われても笑って流せる気がします…!!

厳密には4章構成ですが、1章あたりが半端に短いので、前後編で2章ずつお届けです。
後半も明日か明後日にはお届け予定、そちらもお読みいただけますれば、これ幸いと存じます。ではまた!
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