モチベーションがね……
あ、あとあとがきは見なくてもいいです。作者の極めて趣味的な話なので。
お前は私を知っても私の手を握りしめてくれた、私の太陽だ。
シャディクからの汚れ仕事をこなしていると知っても、それでもまだ私を抱きしめてくれる。
お前は私の全てなんだ。
だから、私から居なくならないでくれ。
その為なら何でもするから───。
ふわ、とあくびが漏れる。貴方は、放課後は矢張り眠たくなってしまうのであった。これはいかん。そう思い、きょろきょろと辺りを見回す貴方。誰もいないことを確認して胸ポケットから取り出したのは───
───煙草であった。
貴方は慣れた手つきで箱から一本、煙草を取り出し咥え、そこに葉巻などで使う火力の強いライターで火を当ててやる。
息を大きく吸い込み、吐き出す。近頃は輸入担当の職員にも、煙草の物価上昇のせいで手に入りにくくなっていると聞く。この分では、いつ煙草が吸えなくなってもおかしくは無い。そうなると、そこそこの喫煙者である貴方にとって、精神的氷河期時代が到来する事は避けられなかった。
息を吸い込む。
煙草は旨い。随分良い物だ。貴方は己の父から施された碌でも無い特殊部隊の訓練───父はグラスレーのちょっと言えない所の人間だった───を思い出していた。
拳銃の握り方。突撃銃の狙い方、分解、構築の仕方。クリアリングの仕方、ハンドサイン、エトセトラエトセトラ………それらは全て、長い記憶ながらも貴方の根底に染みついた良き経験であった。
その能力を買われて、シャディクとか言うボンボンから───貴方の主観的な表現だ───から内密な依頼(どうやら周りに囲ってある? 女達にも知らせていないらしい)でちょっとした小遣い稼ぎもできる。
すぱすぱ煙草を吸う。あなたにとって一番に近い至福の時が今ここにはあった。
「相変わらずだな」
紫の特徴的な髪が見えた。サビーナ・ファルディン。貴方の恋人であった。
「一本もらうぞ」
箱から一本煙草が抜き取られる。すると彼女は、あなたの咥えている煙草に、抜き取った煙草を押し当てた。シガーキスだ。彼女はあなたの隣に座り込んだ。
「あまりこればかり吸っていると体に悪いぞ」
―――お前が言えたことじゃあないな。
「それはそうだ……………あぁ、そうだ。この後部屋に来ないか? いいコーヒーを貰った。分けるよ」
その言葉にあなたは顔を顰めた。汚れ仕事の戦場で培ったカン―――もとい、獣が獲物を捕食するときの殺気に近い何かを感じ取ったからだ。
そもそも、こうやって部屋に誘われ、ホイホイついていった暁には、否応なく衣服をはがれベッドへダイブ―――というのが一連の流れなので、行くつもりは無い。いや、やめておくよ―――あなたは確かにそう言った。
「そうか、それじゃあ行こう」
サビーナは貴方の手を取り歩き出した。
―――えっちょっと待
あなたの意識はそこで途切れた。
次に目に飛び込んだのは、一糸纏わぬ姿で貴方の上に倒れこんでいるサビーナ。情けのないことに貴方はまたもや彼女に押し倒されたのであった。
けだものの様に交わりあったのだろう、辺りに立ち込める淫らな臭いがあなたの鼻をつんとさしていた。
貴方はまたやってしまった、ななどと思いながら暗闇の中、虚空を見つめた。サビーナと交際をして半年。分かったことは、彼女は病的な依存体質だということだ。
何故そうなったのか、その根本的な原因はわからない。だが、彼女は己を見つめてくれる『誰か』に貴方を充てている。己を愛してくれる誰かを、彼女は欲している。
ではなぜこんな風に―――ケダモノの様に事を致すのか。それはおそらく、彼女の依存体質によるものだろう、あなたはそう考えている。誰かと―――特に、女性とコミュニケーションを取ろうものならばこれだ。
彼女は恐れている。他の誰かに貴方を奪われることを、彼女は恐れている。だからきっと彼女はこうなるまで乱れるのだ。
彼女はいつ何時であろうと言う。
「なぁ……私から、離れないでいてくれるか?」
あなたはただそれに応じ続けている。だから、気づけていない。この全てが彼女の罠だと、貴方は気づけない。
貴方もまた彼女に依存しているのだから。
だから、彼女は心の中でいつまでも呟く。
―――もう二度と離さない。
アーマードコア、発売日が発表されましたね…………
八月二十五日を私は待ち続ける。新参者は勿論歓迎しよう。盛大にな。
あ、次回はちょっと変わった趣向を凝らしてみるつもりなので、それにあたって注意点が一つ。
今までの"貴方"に仮初ながら名前が付きますので、「そんなのやめとけ~」って方は次回あたりはご覧になられないほうがよろしいかと。