水星の病んでる魔女   作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ

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すんごい勢いで伸びてて嬉しいですねぇ…
プレッシャーがすごいですねぇ…

今回は多大なキャラ崩壊を含む可能性がございます。ご注意ください。
てか今回は好きな人とそうじゃない人とで結構別れる気がしますね。


セセリア・ドートの壊れた愛情

 

「おや、セセリア。もう行くのかい?」

「そうですぅ───って言うかぁ、私に喋りかける暇があるならぁ、今しがたグエル先輩に負けた奴の事慰めてあげたらどうですかぁ?」

 

 皮肉たっぷりにセセリア・ドートが言う。対するシャディクはいつもと変わらないな、と苦笑する。これでもまだマシな方だ。いつもの毒舌の酷さと言えば、天よりも高く、海よりも深い。それほど酷いのだ。妙な表現だが、それが一番適切であった。

 

「つれないな…………特に最近は」

 

 ぴくり、と彼女が反応する。シャディクにとってその反応は大当たりだった。

 

 最近のセセリアは誰から見ても普段とは違っていた。決闘委員会、その委員としての職務を果たす為にラウンジに来るのを極端に嫌がり、ただただ帰りたそうにしていた。勘のいいシャディクは、そこに何か裏があるのでは、と考えていたのだった。

 

「……そうでしたぁ? 私全然分かりませんでしたぁ〜。以後気をつけますぅ」

 

 常人に苛立ちを感じさせる声で、彼女は口を開く。シャディクは肝心の理由を引き出すには至らなかった。

 

「それじゃ、私用事があるんで失礼しますぅ〜」

 

 すれ違ったグエル・ジェタークを一瞥すると、彼女はラウンジから出ていった。

 

「……あいつ、どうしたんだ?」

「さぁ…? でもま、何かしらの変化があったのは確かだね」

 

 それを聞いたグエルは、「変化か…」と呟き、何かを思い出した。

 

「どうした?」

「いや───変化といえば、アイツはどうしたんだ? ほら、ウチのとこの決闘委員のヤツ」

 

 グエルが語るのはジェターク寮所属の三年生のことである。背の高い、平凡な男がシャディクとグエルの脳裏に浮かんだ。

 

「あぁ───そう言えば最近見て………ないな……」

「…………寮の連中の話だと、誰もヤツを見ていないらしい」

 

 グエルとシャディクに最悪の予想が浮かぶ。セセリアの独占欲が常人より遥かに強いというのは薄々勘づいていた。

 

「……優秀な委員に消えられると、それはそれで困る」

「……セセリアにも最低限の仕事くらいこなしてほしいしね」

 

 二人の思惑は一致した。

 

 

 

 

 ああ、忌々しい。セセリア・ドートは苛立ちを隠さずにブリオン寮の廊下を歩いていた。

 

 どいつもこいつも、気安く私の名を呼ぶ。巫山戯るな。私の名を呼んでいいのは彼だけだ。愛しい愛しい私の彼だけなのだ。嫌がりながら私を優しく抱きしめてくれる彼だけに、私の名を呼ぶ権利がある。

 

 彼女は一心不乱に自室を目指した。自室に近づくたび、彼女の瞳から光が消えていく。もう人前じゃない。ならば、『人前のセセリア・ドート』を演じる必要もないのだ。

 

 圧縮された空気が抜ける音がして、ドアが開く。

 

「──────ただいま」

 

 セセリアらしからぬ猫撫で声が部屋に響く。それを聞いた貴方は、お帰りと応じた。勿論応じることを快諾している訳ではない。だが応じなければ何かしら『非暴力的に苛められる』以上、応じておいた方が得策であった。

 

「あぁ───この臭いイイ〜」

 

 彼女が貴方の胸に顔を埋める。

 

 人前ではまず見せない声、性格、それらをたった一人の男が独占していた。しかしそのはずの貴方は高揚感を覚えるでもなく、どうやってここから逃げ出したものか、と思案していた。こんなのは望んでいなかった───じゃらじゃらと音を鳴らす左手首につけられた手錠を見る。

 

 どうしてこうなったんだろう、貴方はまるで遠い記憶を思い出すように数日前の出来事を思い出そうとしていた。

 

 

 

 始まりは唐突であった。攫われたようなそうでない様なものだった。

 

「………ちょっと、こっち来て」

 

 いささかの怒気の様な何か含んだ声で彼女に呼ばれた貴方は、ブリオン寮の裏手まで歩いて行った。今でも足取りが重かったことを覚えている。

 

「何で、他の女を見るの?」

 

 は? 口からそんな言葉が漏れていたのだった。それからと言うものの彼女は怒りに身を任せる様に貴方を責め立てた。曰く、貴方は私のものだとか、他の女にさせてもらえないことをしてやる、などと言っていた。それくらいならば、別に無視を通せたろう。

 

 だが、極め付けはあの隠し撮りだった。グエルから手渡された委員の仕事をあれやこれやとする場面である。貴方にはその重要度がイマイチ理解できなかったが、どうやらグエル・ジェタークその人を軽く脅すことのできるくらいの影響力はある様だった。

 

 貴方は酷く悩んだ。大きな返せないほどの恩があるグエル・ジェタークを裏切るのか、否か。貴方の答えは、もう決まっていた様なものだった。

 

 

 

「んっ……」

 

 彼女が声を漏らす。キスだった。唇と唇が触れ合うだけのキス。それでは満足できぬと彼女は貴方の口内を蹂躙しようとして───

 

 ブーッ。

 

 ───来客を知らせるブザーが鳴った。いいところで水を刺されたセセリアは面倒臭そうに───明らかに不貞腐れて───来客の対応をしようとしていた。なぜだか、彼女には誰が来たのか、それが分かっていたようだった。

 

「よう、セセリア。まだまだ日は高いんでな───いくつか質問をしに来た」

「ってことだ、セセリア。ま、正直に答えてくれ」

「……………………シャディク先輩とグエル先輩じゃないですかぁ。どうしたんですかぁ?」

 

 いつものセセリアだ。貴方は思った。

 

「───そこにいる奴にも用があってな。質問は一つだ。お前は、アイツをどうする気だ」

 

 グエルが場を威圧しながら言った。貴方はそれを忌々しそうに聞いた。それではいけない。それではお前に迷惑がかかってしまうのだ、と。

 

「………これ、何かわかります?」

 

 彼女が一枚の写真を見せる。例の隠し撮りであった。それを見たグエルは一瞬こわばった表情をした。

 

「……だが、それでも俺はそこにいるアイツを───」

 

 いいや、大丈夫だ。グエルさん。

 

 貴方は口を開いた。貴方は秤にかけたのだった、グエル・ジェタークと己を。グエル・ジェタークその人に天秤は味方すると知りながら。

 

 彼が貴方を見る。彼は、貴方の瞳に宿る覚悟を見ていた。決して揺らぐことのないその炎を貴方の瞳に見ていた。

 

「……………要求は何だ」

 

 苦虫を噛み潰した様な、そんな苦渋の表情を浮かべグエルが言う。

 

「う〜ん、彼の寮を変更しろーとかは言わないですけどぉ、彼と私の関係に口を挟まないでください。それが条件ですぅ」

「……分かった」

 

 そうだ───それで良いんだ。

 貴方は一人変わらぬ決意を持ってこちらに背中を見せ、去っていくグエル・ジェタークを見つめていた。

 

 

 

「シャディク先輩、これ以上はやめておくんだな、だって。これ以上はもうないのに」

 

 彼女が貴方の胸板に頬擦りしながら語る。

 

 楽しそうに、そして嬉しげに語る彼女は、もう逃がさないという証の、貴方の首元にあるキスマークを撫でながら言った。

 

 ──────もう逃がさないから。

 




分かっておられる方が殆どだとは思いますが、各キャラクターごとの世界観は別々にしてるつもりです。要は、スレッタの話にミオリネの話に出てくる"貴方"は基本的に出てきません。病んでるキャラクターごとの話に出てくる"貴方"は別人です。まぁ、偶々機会があったらそこの絡みを書いてみても良いかも知れませんな……

あと一つ質問なんですけど、ディープキスの描写はR18ですかね?それともR15でしょうか……?ご意見ください。一応アンケートも作りますので。
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