水星の病んでる魔女   作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ

5 / 14
読者「作者⁉︎ 死んだはずじゃ…⁉︎」

ワイ「残念だったな……トリックだよ」


ソフィ・プロネの壊れた愛情

 ソフィ・プロネは "魔女" である。ガンダム・ルブリス・ウルを駆るパイロットだ。当然ながらガンダムなのだからGUNDフォーマットの負荷を受けるのは当然。なんとか彼女の精神の正常保たねばならない。それ故に彼女には一人、専属の精神科医がいた。

 

 

 

 肉と肉がぶつかり合う音が鼓膜の内側でこだましている気がした。そんな訳はない。ありもしない幻聴である。もし実際に聞こえているのだとしても、それは貴方の隣ですうすう、と可愛らしい寝息を立てているはずのソフィ・プロネの行為による物だろう。

 

 重い瞼を開ける。ぼんやりとした意識の中貴方は此方を覗き込む闇をそこに見た。そんな闇はありはしない。そもそももう昼前だろう。そんな中で闇とはなんなのか。決まっている。彼女───ソフィの瞳だ。彼女は光の宿らない瞳を此方へ向けていた。恐らく───というかきっと───彼女はずっとこうしていたのだろう。寝息に聞こえたそれも、彼女の高度な偽装なのだ。

 

「…………ふふふっ、おはよ」

 

 少女が陽気に笑う。貴方は思う。ああ、彼女はこうも愛おしく、恐ろしく、可愛らしい。

 

 貴方は精神科医である。そうある以上対話や何かしらのコミュニケーションで彼女の精神安定を図るのは当然であった。しかしそれで彼女は満足しない。苦しみや辛さ、物理的な痛みに生きている感覚を見出す彼女は、それを自分に与えるように頼み込んだ。闇に関わる彼女に関わる貴方もまた闇の住人である。だが、精神科医としての良心、人としての偽善はそれを許さない。ソフィは強硬手段に出た。

 

 初めては激しかった。ベッドの軋みはまだ鮮明に記憶に残っている。彼女の無防備な姿を見ると、己の中の何か嗜虐的なものが刺激され、結局彼女の要求にノリノリであったのは言うまい。

 

「………何考えてんの? うーん……」

 

 彼女と出会い、こんな関係になったばかりの頃を思い出す貴方。しかし、彼女は結局貴方のそれは別のものだと判断した。

 

 右腕を強く抱きしめ彼女が言う。「女?」

 

 貴方は首をぶんぶん振って否定し、説明する。しかしそれでも彼女は納得しなかった。たが、納得されなかったからと言って説明を諦めるわけにはいかぬ。貴方は根気強く説明した。

 

「ふぅ〜ん。女の事を考えてないなら───できるよね?」

 

 結局、貴方は日が高いというのに彼女にたっぷり虐められた。

 

 

 

 貴方は精神科医である。再三言うが精神科医なのだ。それを生業にしているのには理由がある。貴方はアーシアン、すなわち地球に住んでいる。スペーシアンのアーシアン差別は日に日に激しくなってゆく。それに加えて重労働。まともなアーシアンはすぐに死ぬ。

 

 そこで精神科医というのが出てくる。彼らの精神をケアし、そして社会復帰させる貴方のような輩は少なくない。つまるところメジャーな役職であった。

 

 稼ぎは悪くないものの、今ひとつ将来を考えると不安が貴方はあった。増税、重労働の加速が見られる地球で生活に困窮する、というのは難しくない。

 

 もう少し稼ぎたい。

 

 結果、こうなるのは必然であった。しかし、しかしである。だからと言って患者に襲われるのはあんまりである。それに何より、普通の職務の中で患者に女性が多いのは何故なのか。

 

 

 

「ああああのっ! これ! 受け取ってください!」

 

 バレンタインデー、悪夢のようなイベントである。女性からチョコを貰うのは別に構わない。問題は彼女である。そう、バレていないと思っているのか、通路の角からじっと此方を見ている彼女である。

 

 とは言え己に向けられた好意を無下にするのもいけすかない、結局貴方はそのチョコを受け取ったのだった。

 

 

 

「チョコ、美味しかった?」

 

 怒気を孕んだ声で彼女がそう語りかける。貴方は弁解を始めた。

 

───いや、誤解だ。確かにチョコはもらったけど食べてない。

 

 彼女が貴方をまじまじと見る。瞳には、嫉妬と独占欲からくる狂愛の炎が見てとれた。

 

「ま、別に食べててもいいよー」

 

 間の抜けた返事をしたのは言うまでもあるまい。

 

 

 

 目が覚める。額には大きな玉汗がびっしりとあった。毎度毎度悪夢に魘されるのでは精神科医失格だが、こればかりはどうにもならなかったのであった。

 

 食卓に向かい、コップに水を注いでから、それを喉の奥に流し込む。嫌に目が覚めて、もう一度眠る気にはなれなかった。仕方なく、テレビをつける。

 

 偶々、ニュース番組があった。しかし、深夜なので恐らくは昼に放送された物の再放送であろう。テレビからはアナウンサーの声が聞こえていた。

 

『本日午後五時辺り、ブロックナインの路地裏で、二十代後半と見られる女性の死体が見つかりました。女性は顔面が原型を留めないほど殴打されており、警察は殺人事件として捜査を進めています』

 

 背筋に鉄針が入れられたような感覚が走る。もしや、もしかしたならば、いや、そんな訳が。そんな考えが頭の中で湧き出る。

 

「どうしたの?」

 

 不意に後ろを見るとそこにはソフィがいた。

 

 あなたは問うた。何処に行っていたのかと。

 

「うーん?ちょっと豚を捌きに行ってたのよ」

 

 あぁ、そうだったのか。貴方は何だか知らぬがホッとした。ならば顔に返り血がついていてもおかしくは無い。

 

 彼女が貴方に近づいて、耳元で囁いた。

 

 

 ───貴方に這い寄る雌豚を捌いて来たの。

 




はい、ナナウラ回と見せかけてソフィ回です。
投稿が遅れ、申し訳ありません。推薦には受かっていたので、本来なら一週間すれば投稿できたんですけど、一度消えたモチベが戻るまで時間がかかったのと、その間にAPEXばっかりしてたせいで遅れました。
許せ…読者ァ……
これからはゆっくりとですが投稿していくので、改めて、こんな駄文をどうかよろしくお願いいたします。

あ、あと余談なんですけど日刊ランキングの下の方に載ってたみたいですね。それもこれも全て読者様のお陰です!ありがとうございます!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。