水星の病んでる魔女   作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ

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ソフィちゃん死んじゃった…( ;∀;)
悲しいね、シチョーシャ……


ソフィ・プロネの壊れた愛情 その二(ネタバレ要素あり)

 苦しい。痛い。

 

 けれど、そう感じられるうちは生きているから、まだいい。私はいくつも欲しいものがある。

 

 暖かいご飯。

 

 ふかふかのお布団。

 

 私を受け入れてくれる家族―――いや、家族はもう彼がいたっけ。

 

 

 ずるい。みんなみんな、価値もない癖に生まれてきて、みんな平等なはずなのに、私たちだけが不平等の烙印を押されて。話しかけても話しかけても、聞いてはくれなくて。だから力ずくで奪ってやる。力ずくで―――

 

 ひどく耳にこびりつく重低音が鳴り響き、コックピットの画面が真っ黒になって、システムが落ちる。

 

「はっ!?――――――何でぇ!?」

 

 幾つものウインドウが開いて、コマンドの実行ログを流しては消え、開いて、また消えて。それが何度か繰り返されて、画面に外の景色が表示される。

 

 左側の画面に、外界の景色を数段階拡大したウインドウが開かれていた。そこには、大型のスペースランチから出ている愛しい人が移っていた。

 

 パイロットスーツを着て、手を振っている。『戻れ』のサインだ。

 

「……じゃ、仕方ないや。またね、スレッタお姉ちゃん! 次会うときは―――まいいや。じゃーねー!」

 

 一方的に通信を切ると、私は彼の元へルブリス・ウルを奔らせた。

 

 

 

 貴方はパイロットスーツの上から耳に手を当て、通信を聞くのに注意する。

 

『よし、回収を確認した。予定時刻までに合流地点に来いよ。じゃなきゃ帰れる保障はないからな―――()()()()()()()()()()()

 

 了解の旨を伝えて通信を切る。精神科医だと言うのに、こんな前線に来ているのはソフィに会うためだった。彼女は以前のプラント襲撃時から、調整をまだ終えておらず、実戦投入には少なからぬリスクがあったのだ。そこで、使い捨てのできる外科医兼内科医兼精神科医の貴方にお鉢が回った。

 

 ランチの操縦席にどかりと座り込む。自動操縦でフルスロットルにしているから、二機のガンダムを牽引しても特に問題無いのだ。

 

 そう言えば、フォルドの夜明けとの腐れ縁はいつからだったか。貴方はスペースランチの加減圧室に『彼女たち』が居ることに気付かず、思索に耽りはじめた。

 

 銃を最後に握ったのは―――もうずいぶんと前になった筈だ。だが、その手に残る銃の感覚はいつまでも消えない。貴方はスペーシアンの地球の治安維持部隊―――に連なる特殊作戦群所属の分隊長だった。隊員が死に、同胞のアーシアンを殺してしまった時から、貴方の心はそれに囚われたのだ。人を殺す覚悟をしていなかったわけではなかった。むしろ、そういうものだと割り切っていたし、何人も殺してきた。

 

 けれど、幾年と経っても、『同胞を殺した』という事実そのものが貴方への呪いとなって、ただ貴方を苦しめていた。それから、貴方は同じような境遇の人間を救いたいと、精神科医としての活動を始めて今に至る。

 

 最も、フォルドの夜明けからスカウトされたのは、特殊作戦群所属というレッテルを買われてだった。軍事顧問としてだろうがなんだろうが、実戦経験のある人間―――しかも医者ときた―――は貴重だった。

 

 まぁ、そこでとくに精神的な揺らぎの大きいソフィに色々とヤられたわけだった。

 

「イェッーイ! ただいまぁー!」

 

 後ろからソフィが抱きつき―――椅子にブロックされているのに椅子ごと―――少しばかり重みを感じてから、首に苦しさを覚えた。

 

 彼女が首を絞めつけている。

 

「私さ。頑張ってるよ。ずっと。なのに、なのにさぁ。この前、別の女と喋ってたよね。楽しそうに喋っちゃって、私じゃ不満なわけ?」

 

 華奢な腕からは想像もできない程の力で締め付けられ、段々と視界がぼやけてくる。

 

「ストップ。先生困ってる」

 

 ノレアが彼女を制止し、気道が再び元の大きさに戻る。

 

「ノレアには関係ないじゃん。あ、それか何ぃ? アンタも狙ってるの?」

 

「そんなわけないでしょ。その人は組織にまだ必要だから止めたの」

 

 段々と二人の口論がヒートアップしていく。あぁ面倒だ、とあなたは毒づいた。

 

 

 

「ほう、戻ってくるとは、やっぱり隊長殿は昔と変わらないな」

 

 ナジ・ゲオル・ヒジャのその発言に貴方は否定で返す。別に、己は何もしていないのだと。

 

「いいや。その状況判断能力は昔から衰えてない。アンタは根っからの職業軍人だ」

 

 お前は昔と変わったよ、と返す。

 

「そうかね? 隊長殿。ま、いいさ。条件を満たしての帰還だ。隊長殿には残ってもらうが―――何はともあれ、アンタはもうすぐ式だろう? ソフィを頼んだぞ。あいつのことだ、どうせガンダムに乗りたがる」

 

 まぁ、気を付けておくよ―――最悪、ガンダムには自分が乗る。

 

「……アンタはやっぱり変わってない。昔っから、仲間思いなのも何も変わっていない」

 

 後ろを向くと、遠くにソフィが見えた。笑いながらこちらに手を振っている。

 

 ま、当然ソフィは大切にするよ。

 

 貴方は旧知の元部下にそう言い残すと、ソフィの元へ足を進めた。




はい、ここからは後編(三話目)で描くつもりです。
なんかヤンデレじゃなくてイチャラブになってる……なってない?
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