なので、以上のキャラのヤンデレを期待していた方々、申し訳ありません。
ペトラとフェルシーも書くかは分かりません。あの二人グエルに心酔してる感がある気がしてしまうので…
書けたら書いては見ます。ただ、納得いかなかったりすると書かないかもしれない…
あと、今回ちょっとヤンデレ場面少なめです。
死。
それは甘美なものだ。死んだ者はそこで全てが止まる。そして居たという事実だけが残る。
好きな人を殺して、好きな人が死んだら、きっとその人は、手を下したであろう己の事を考えて死ぬ。己の事を考えたままその人の全てが止まる。
ああ、なんて素晴らしいんだろう。それでは、己が死ぬその間際まで、彼は己の事を想ってくれているのだ。
けれど、一度誰かを殺したらそれが最後。もうその人の声は聞こえないし、手は暖かくならない。鼓動も聞こえなければ、ぴくりとも動かない。
だから、私は我慢しよう。愛しくて殺したくなっても、彼を痛めつけて、それで想ってもらおう。私を刻み込んで、そうやって想い込んでもらおう。
甘美な死。それはメインディッシュ。
メインディッシュは、一番のタイミングで食べなきゃ。
ふわ、と欠伸がもれる。両手に握った操縦桿を握る力が少し弱まった。コックピットでは相変わらず眠たくなる、例え実戦の時でもシミュレーションの時でも。
貴方は寮に帰ったら風呂に入ってから、夕食を取る事を誓い、キッと眼前のモニターに眼を凝らした。
画面に映る敵は三体。いずれも、学園側が独自に制作したダミーであった。勿論のことながら、仮想空間内での戦闘になるので、実物がある訳ではなく、「こんなものがあれば良いな」程度のデータである。
画面にカウントダウンが表示される。3秒前。実戦では無いから緊張は感じない。けれど、今まで挑戦したことの無いレベルに挑戦するので、何だか楽しみではある。
2秒前。操縦桿を握る力を強くし、メイントリガーにかける右手人差し指に全神経を集中する。
一秒前。右フットペダルを踏み込む準備をし、左右の操縦桿を思い切り前へ押し出す。
カウントダウンが消える。眼前にいた敵機の内一機───最初に標準が合っていた敵───に向かって右手のビームライフルを放つ。運良く右肩に命中し、右側の鎖骨部分辺りから指先までを消し飛ばした。
フットペダルを思い切り踏み込んだ。殺人的な加速が擬似的にだが、コックピットに伝わってくる。いい調子だ、などと思いながら貴方は左手にサーベルを構えた。向かう先は先程ビームライフルが命中した敵機。ここで必ず仕留めるのだった。
殺人的な加速をそのままに、頭部を左に向ける。そこには敵機が一機マーキングされていた。先程のビームライフルの回避行動を行なっていたらしい、AMBACによりこちらを向こうと四苦八苦しているAIに、ビームライフルを向ける。
瞬間、左翼操縦桿のメイントリガーと右翼操縦桿のメイントリガーを同時に引く。自機な左側に位置していた敵はビームライフルに撃ち抜かれ、左手に構えたサーベルが自機の前方に位置した敵機を斬り伏せた。
フットペダルから足を離し、慣性の法則による移動だけにとどめ、AMBACにより自機を一回転、後方を向く。そこには案の定残り一機となった敵機が、遠くからライフルの銃口をこちらに向けていた。
フットペダルをもう一度踏み込み、左右に細かくブレながら敵機に向かって加速する。加速しながら、完全にロックオンしないままビームライフルを乱射する。支離滅裂な方向に飛んでいく光の束───敵のいる方向には向かっているが───を確認した敵機が、回避行動を挟みつつ此方を狙い始めた。
貴方の目論みは見事に成功した。回避行動を挟みながらの標準は、非常に時間のかかるものだ。敵機が此方をロックオンする前に、自機は既に敵機をサーベルの射程内に収めていた。
そのままサーベルを一振り。哀れなAIは胴体と下半身が泣き別れになり、そのままシュミレーションは終了した。
シミュレーターから出ると、脚が少し震えているのがわかった。どうも想っていた以上にのめり込んでしまったらしく、貴方はどうも足元がおぼつかなかった。そこに───
「えいっ」
一人の少女が飛び込んでくる。ニカ・ナナウラだ。足下のおぼつかない中、それでも貴方はどうにか踏ん張り彼女を受け止めたのだった。
「ぶーっ! ずっとシミュレーターに篭ってちゃ、怒っちゃうぞー」
ぷくっと膨らんだ頬はさながらリスのようで、やはり彼女は小動物のようでもある、と感じた。けれど、貴方の視線は、次に彼女の持っているレンチに向けられた。
「ん? これ? あぁ、エアリアルの整備してたんだ。使うかと思ったけど、結局使わなかったや」
彼女はにへらと笑いながら、「そう言えばさ」と話を続ける。
「何か変な匂いするよねー。気のせいかな?」
そう言われ、少し周りの匂いを嗅いでみるが、イマイチよく分からず、結局貴方は何の用で会いに来たのかを彼女に問うた。
「そうそう、これ見てよ! このロボットゲーム凄いんだよ! 前作から10年ぶりに発売される続編で、自分でパーツを買って、ロボットを組み上げて───女?」
嬉々として貴方の隣に立ち、何処からともなく出してきたタブレットを貴方に見せるように構えた彼女は、けれどそれを見せきることもなく、何かに気付いた様に喋り始めた。
「───ごめん、用事思い出しちゃった。えと、私の部屋に取ってきて欲しいものがあるんだ。工具箱なんだけど、頼めるかな?」
特に断る理由もなく、それに応じて歩き出した瞬間、貴方は違和感を覚えた。基本的に女子寮に入れるのは女子だけ、それを彼女が忘れているのか───?
そう考えたところで、貴方の意識は漆黒の中に堕ちていった。
目を覚ますと、そこはどうやら地球寮の一室らしいことが判明した。椅子に縛られているので身動きは取れない。なお、地球寮の一室であると判断したのは、ニカ・ナナウラの名前が書かれた備品がいくつかあったからである。
「おはよう。ちょっと痛かったかな? ごめんね」
にっこりと笑っている彼女が、貴方の前に跪いていた。貴方の脳内はとっくに情報の濁流で混乱しきっていた。あのとき何をしたのか、どうして此処に連れてきたのか、そして、どうしてこんな事をしているのか。
「うーん、ごめんね。本当に、ごめん。貴方から別の女の匂いがして、ついつい衝動的にレンチで殴っちゃった」
貴方は血の気が引いて行くという感覚を初めて知った。そんな理由で、こんな事をしでかした事に呆れもあれば、怒りもあった。
「私ね、なんて言うかスペーシアンとか、アーシアンとか、どうでもいいの。貴方が居てくれたら、それでもう何もいらない。でもね、怖いんだ。そんな貴方が私じゃなくて他の女を見てるかもしれないのが。だからさ、私、頑張ろうと思う」
目眩を感じてきた貴方は、もう何が何だかわからなくなっていた。だが、彼女はそれを気にせず話を続ける。
「わたし、頑張って君に見てもらうよ。いっぱい殴って、傷つけたら、私の事だけ見てくれるよね? 私のことだけ見てないといつまた傷つくかわからないもんね?」
彼女が貴方の両肩を掴み、貴方を覗き込む。その瞳には、底のない真っ暗な独占欲が渦巻く、闇が映っていた。
「大丈夫だよ。基本的に死なせはしないし、たまーにご褒美もあげるから。私の体でね。でも──」
───私以外の女を見たら、殺すからね?
え? ニカの語ったロボットゲームに聞き覚えがある?
身体が闘争を求めるアレですよ。発売はよ。