【完結済み】Run from Mariage 〜逃亡中〜 作:とある物書きMr.R
「色々惜しいんだよなぁ……」
「素質はあるんだが、あの集中力の無さはな……」
周囲から漏れ聞こえるトレーナー達の失望の声。
何を言っているんです? 彼女の走りを見ていなかったのですか? そう思いました。
選抜レースという舞台でも自分を出せるメンタルの強さ。
全力で走りながら、それでも体調不良のウマ娘の走りを見抜ける程の視野の広さ。
そして、
「ちょっぴり揺れマスので、しっかり掴まってくださいネ!!」
「え、ちょ!?」
ウマ娘1人抱えながら、レース後にあのスピードを出せる肉体。これでまだまだ伸び盛りだというのだから恐れ入ります。
タイキシャトル。彼女は世代最強になれるウマ娘です。
「もしかして、スカウト!? So Happy!!」
「MA☆TTE!?」
勘違いからのトレーナー契約は、流石に予想外でしたが。
※※※※※
選抜レースのあの日。周りのトレーナーさん達から良い印象を持たれていないことは、分かっていました。
レースに集中しなくちゃ、そう思っていても、ケガをしそうな子や、不調な子を見ると、放っておけなくて。
ワタシだって、当然勝ちたい。でも、見て見ぬフリをして不調な子がケガをしたら? そのケガが原因で引退なんてことになったら?
ひとりぼっちに、なってしまったら?
(それは、イヤだ……! 絶対に、イヤだ!)
悩み、というには恐怖が勝っていたワタシの考えは、
背が高くて、ちょっと怖くて、
「タイキシャトルさんですね? ご安心ください。そこからは私達トレーナーの仕事です」
――後で最高にステキなトレーナーさんになる、左右田さんのおかげで、綺麗に解決したんです。
「トレーナーさん、ソーリー…… 途中でフレンズとお話してマシタ……」
「ふむ……ロスタイムがあってこのタイムはなかなかですね。もう一本、次は全力のタイキさんの走りを見せてくれませんか?」
「っ! イエース!! 本気のワタシをお見せしマース!!」
すぐ周りが気になってしまう私のクセには、そうやって焚きつけてやる気を引き出してくれました。
「あれ、さっきまでみんないたのに……どこ……? 寂しい、寂しいよ……!」
「タイキ!」
「トレーナー、さん……?」
「待たせてしまってすまない。グラウンド利用時間の延長申請に手間取ってね。
ここからは、チームのみんなと一緒に併走トレーニングだ」
寂しがりやな私のために、チームのみんなも良くしてくれました。
だからこそ。
「タイキさんも、トレーナーさんの事が好きなんですね」
「……はい。この想い、ラヴなんて言葉じゃ表しきれまセーン!!」
そうだ、焦がれるを通り越して焼けるほどに。
言葉じゃ足りないから行動で。
あの人に、この想いを届けたい。
※※※※※
ミッション残り時間 3分
左右田や宮本の連携プレーにより、既に3人のトレーナーが復活し、同じく3体のハンターが凍結されていた。
そして、復活したトレーナーの中には、スペシャルウィークの担当である南条の姿もあった。
牢獄から解放された南条は辺りを警戒しながら5歩進み、すぐに今は警戒しなくても良いことを思い出して赤面した。
(あ゛~…… そういえば今はハンター動いてないんだっけか、恥ずかし……)
「トレーナーさん……」
「ふへっ?」
気を抜いた南条の傍に、ハンター。
「す、スペ……?」
「あー、その…… お疲れ様です?」
南条は両手で顔を覆うと、無言で崩れ落ちた。
「トレーナーさん!? しっかり!」
「ヤメテ…… ワスレテ……」
油断、大敵。
※※※※※
悲喜こもごものドラマが繰り広げられるトレセン学園。しかし時間は平等に流れ、
ゲームの残り時間が20分になると同時に、凍結を免れた5体のハンターが、一斉に動き出した。
対するトレーナー陣営は、南条を含めて4人を復活させることに成功。総勢7人になり、逃走成功の可能性が、一気に高まった!
しかし。
「あらあら、うふふ」
「けっぱります!」
「ハウディ!!」
トレーナー陣営にとって最大の脅威であるスーパークリーク、タイキシャトル、スペシャルウィークの凍結には失敗した。強いウマ娘は運も持っていたようだ。
残り時間は20分。両者の競り合いは、最終局面へ差し掛かる!
※※※※※
Prrrrr!!
メールだ。
『左右田トレーナー、宮本トレーナーなどの活躍により、8体のハンターが凍結され、4人のトレーナーが解放された。
現在トレセン学園全域がゲームのフィールドになっているが、これを時間経過と共に縮小する。縮小開始時点でエリアに残っている者は、トレーナー・ハンターに限らず脱落となるので注意されたし。
残り時間15分 トレーナー棟周辺エリア
残り時間10分 体育館周辺エリア
残り時間5分 グラウンド』
コントロールルーム内。メールを送信した理事長秘書である駿川たづなは、トレセン学園理事長である秋川やよいに報告を行っていた。
「それでは理事長、最終ミッションの伝達、完了しました」
「うむ! 今回のようなゲームはあくまで休校だからできること。明日以降は普通に授業等がある以上片付けも大事だからな!」
「事前に依頼していた業者および、手伝いに名乗り出てくれた有志の生徒達も既に片付けの準備に取り掛かっています」
「承知した! それでは残りの20分もよろしく頼むぞ!」
時間は平等に回っていく。
今、誇りと将来とうまぴょいを賭けて学園中を駆け回っている彼ら彼女らも、明日からはまた学園生活を送らなければならないのだ。
元の関係を維持できるかは、別問題だが――
※※※※※
ミッション終了後、トレーナー棟周辺に戻ってきていた宮本は、焦っていた。
(マズいなぁ、ここ結構便利な場所だったのに…… この後どうしよう)
先ほど通知されたミッション内容によれば、あと5分も無い時間で彼女のいるトレーナー棟周辺は封鎖になり、その場にとどまっていた場合失格になってしまう。
全く時間がない訳ではないが、かといってのんびりしていればあっという間に過ぎ去ってしまう。
(私がハンターなら、ここから本校舎周辺に行く道で網張ったり待ち伏せたりするかな……
とはいっても推測だしな……)
先行して飛び出すか、時間ギリギリまで粘るか。いずれの選択にも、ハンターに見つかる、リスクを伴う。
(だったら動く! このままここにいたって失格なら、本校舎辺りで隠れてよう)
これまで的確な判断で危機を乗り越えてきたトレーナー達は、今回のミッション、そして残りの20分を生き延びることができるのか!?
そろそろこの物語も終盤でございます。