【完結済み】Run from Mariage 〜逃亡中〜 作:とある物書きMr.R
(スペが解放されるまで、あと7分と少し、ここから一番遠いポイントまで行って帰ってギリギリ間に合う位の時間か……)
スペシャルウィークのトレーナーである南条は頭を悩ませていた。宮本トレーナーが1か所目のポイントで暗証番号を手に入れた以上、急ぎ残り3か所のポイントへ向かわねばならない。だが、向かった先のポイントが既に他のトレーナーに抑えられている可能性もあれば、向かう途中でハンターに補足されるリスクもある。
携帯に着信。メールだ。
「『宮本トレーナーが最初の暗証番号を入力。残り3つ』と。やっぱりここから近いポイントを狙うか」
南条は決断する。最も遠いポイントへと向かい、道中で足止めを食らえば、最悪の場合ハンターBOXの近くにいる状況でスペシャルウィークが解放され、自分は即座に確保されることになる。リスクは可能な限り抑えたかった。
スペシャルウィーク解放まで、残り7分
※※※※※
時間は少し遡る。
1か所目のポイントで暗証番号の書かれたカードを手に入れた宮本は、ハンターBOXの設置されている中庭までやってきていた。
「おぉ、あれがハンターBOXなんだ。雰囲気あるなぁ」
電話ボックス程度の大きさの箱は、正面が檻のようになっていて、中には黒いスーツに身を包んだスペシャルウィークが入っている。着用しているサングラスも相まってその表情は伺えない。扉には、ドアに例えるとドアノブがある辺りにナンバーキーがあり、近くにはそれで暗証番号を入力するのだと説明書きまでされていた。
「それじゃあ、これで完了っと」
「お疲れ様です! 宮本トレーナー」
「どっひゃあ!?」
思ったより普通に話しかけられ、宮本は飛び上がった。
「あ、すみません。驚かせてしまって……」
「ううん、大丈夫。それにしても、スペシャルウィークさんもこのゲームに参加してたんだ」
「はい! せっかくの機会なので」
「そっかぁ……」
宮本もトレーナーとして、自らの担当とぶつかる可能性のある相手はマークしていた。スペシャルウィークはその中でも特に警戒しているウマ娘の一人。あまり言いたくはないが、自分の担当であるクレイジーインラヴが目の前の彼女に勝てるかと言われたら、かなり難しいと答えざるを得ない。
トレーナーとしての未熟さに内心苦々しい思いを抱く宮本だったが、今は状況が状況である。スペシャルウィークに別れを告げ、身を隠せるような場所を目指して進んでいった。
※※※※※
2か所目のポイントを目指す南条。その視線の先に、ハンター。
(クソッ、ここにきての足止めは痛すぎる。ハンターの後ろにいるから見つかっては無いが動くに動けない!)
レース中は後続との距離感を測るためにも足音には敏感なウマ娘。それなりの距離を開けてはいるが、うかつに動けば気づかれる可能性があった。
(どうする!? 他2か所のポイントに向かうか、それともあのハンターが移動するのを待つか、時間は……あと3分少々、これ間に合わないか……)
南条の決断は早かった。その場を後にし、少しでもハンターBOXから遠ざかるように動く。どこに向かうにしろ、スペシャルウィークから逃げ切るための方法を考え付くため、男の脳はフル回転していた。
※※※※※
その後別のトレーナーによりもう1つの暗証番号が入力されたものの、結局4つの番号が入力されることはなく。
「あーあ、トレーナーさん、来てくれませんでした……
なら、私から迎えに行っちゃいますね!」
ハンター、スペシャルウィーク。出走。
※※※※※
携帯に着信。内容は見なくても分かるが、一応確認しておく。
「『ミッション失敗。スペシャルウィークハンターが解放された』。ヤバいなぁ」
校舎の2階に身を潜める南条。実はスペシャルウィーク解放の直前、宮本からメールが来ていた。
(宮本トレーナーはスペに話しかけられたって言ってたよな。それって、このミッションでスペの所に行けなかった俺って結構危ない感じなのでは?)
男はハイライトの消えた担当に「どうして来てくれなかったんです?」と詰められる未来を幻視し、思わず身震いした。
(俺のこれからの事はひとまず置いといて、このゲームのこれからを考えようそうしよう。
今回のミッションの制限時間は残り90分まで。このペースなら後だいたい10分から15分したら次のミッションが来る。
問題はその内容だ。またハンターが追加される? 障害物の撤去とかもありえるな。最悪は逃げられるエリアが狭まる事だが、これは多分トレーナーもハンターもスタミナが無くなってくる最終局面まで来ないはず……は希望的観測か。
どこぞで聞きかじった程度だが、『最上を望み、最悪に備える』ことが優れたトレーナーらしい。なら、次のミッションに備えて、どんな状況でも動けるようにしておく。これが最低条件だな)
そこまで考えた南条は、外の様子を確認しようとし、
(!?)
スペシャルウィークを確認して一瞬で首を引っ込めた。
(アイエエエ!? スペ!? スペナンデ!?)
当然ながら偶然である。しかしスペシャルウィークの方は南条ならどのようなルートで逃走するのか、だいたいの当たりを付けていた。
(マズいマズいマズい! あいつ真っすぐにこっちに向かって来てたぞ!)
南条トレーナー、絶体絶命!