"グサリ"と剣が体を貫いた。
何度斬っても起き上がるタフな者だったが、心臓を突かれてはどうしようもあるまい。
フゥと息を吐き、額の汗を拭う。
「えらい、タフな奴でしたね。」
「ああ、骨がある奴だった。」
「じゃあ依頼を済ませましょうか。」
「おう、やるか。」
格好からして冒険者と思しき2人が腰を上げる。
─冒険者、呼び名は格好良いが実態はただのゴロツキや便利屋だ。
草刈りからモンスター退治、果ては戦争の傭兵まで何でもやる。
2人は冒険者の中でも汚れ仕事を主に請け負っている手練だった。
今日も依頼人から商売敵の商人を痛めつける……いや、殺す様に依頼を受けた。
面倒なことに護衛が何人かいたが、先程最後の1人を片付け、残すところは商人だけだ。
2人は震える商人の下に向かう。
商人は何か喚いているが知った事ではない。
殺して証拠を依頼人に届けるだけだ。
これだけで数ヶ月は遊べるだろう。
「すまねえなあ、真面目な商人さんよお。」
「俺たち遊ぶ金が欲しいんだわ。」
「死んでもらうぜ。」
冒険者の1人が剣を抜き、商人に斬りかかろうとしたところ、異変が起きた。
剣を抜いた冒険者の体から剣が生えていたのだ。
「だ、誰これ?」
バタリと冒険者の一人が倒れる。
「相棒!ちくしょう!誰だ!」
もう一方の冒険者が振り向くと、そこには先程タフな奴と言っていた者が立っていた。
冒険者の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「てめえ、何で生きてやがる!?」
「何でと言われましても、死んでなかったのでー。」
「確かに心臓を刺したぞ!」
「はあ、心臓刺されたくらいでは死なな……」
ガキン!全てを言い終わる前に冒険者が斬りかかった。
剣と剣がぶつかり火花が飛ぶ。
何合か斬りあった所で冒険者の片腕が切り飛ばされた。
「があ!てめえ、さっきは手を抜いてたのか?!」
「はあ、わたくしスロースターターですのでー。」
そう言うと拳が冒険者の顔に突き刺さった。
ボコ、ボコと殴る音が辺に響く。
「早く依頼者を言ってくださーい。」
「あ、あのお、そんなに殴ると死んでしまいます。」
「えー、そうなんですかー?じゃあ後一発だけ。」
「だ、駄目ですよ!うちに戻って専門の人に頼みます。」
「……報酬減らしたりしませんよねー?」
「しないですよ!」
「じゃあ、手当しますねー。」
腕の切断面に火が当てられる。
"ジュー"と言う音と共に肉が焼ける臭いがした。
食用の肉が焼けた時の良い匂いとは違い、不快な臭いだ。
ニコニコとその血色の悪い少女は火を押し付け続ける。
そういえばと思った商人が少女に尋ねる。
「そういえば、どうして心臓を突かれても死なないので?」
「あー、よく聞かれますー。」
「よく聞かれるって何度かあるんですか?」
「はいー。よくあることなのでー。」
「……ちなみに何で死なないんですか?」
「はいー、もう死んでるのでー。」
「は?」
「わたくし、屍(グール)なんですよー。がおー。」
これは屍(グール)の少女剣士が生きる物語。