─夜、死の神の時間帯。
戦場で命を落とした者がアンデットとなる。激戦区は特に酷い。
ゾンビ祭りだ。
右を見ても左を見てもゾンビゾンビゾンビ。
ゾンビに非ずんば人に非ず。
静まり返った戦場を沢山の神官が歩く。
アンデットを天に帰す神官だ。
当然、屍剣士ちゃんではない。彼女は朝から働いているのでそんな面倒なことはしない。
屍なので疲れてもいないが、気分の問題らしい。
本当は夜型の屍剣士ちゃんは、偶々朝から戦場で戦う必要があったので
神官とは出会(でくわ)さなかった。
運Aの本領発揮である。
朝、屍剣士ちゃんは一番遅く起きた。
皆身支度を整えて陣形を組んでいる途中だ。
屍剣士ちゃんの部隊は全滅したので別の部隊に取り込まれている。
1人生き残ったのでラッキーチャームとして崇められている。
「ラッキーガール!カモン!」
「さー。今行きますよー。」
指揮官は外国帰りのイケイケダンディだ。
返事はサーらしいのでみんな従っている。
傭兵の国に留学して本場の戦術を学んできたらしく、優秀だ。
昨日も敵の小隊を2部隊も壊滅させている。
ただし、すごい鬱陶しいらしく、屍剣士ちゃんは指揮官係に任命された。
「コンセンサスをオキュパイしてゴー!」
「さー?こんせんさすー。」
「オッケー!ゴー!」
指揮官の的確?な指示により敵兵が蹴散らされる。
屍剣士ちゃんは後方待機だ。一応指揮官の護衛という名目である。
ファンタジー世界に於ける戦場の花と言えば何だろうか?
派手な魔法の撃ち合い?巨人の突撃?
いえいえ、やはり戦場の花と言えば騎兵突撃(チャージ)だ。
ファンタジー世界の馬はデカくて頑丈だ。そもそも馬じゃないことが殆どだ。
反魔法装甲で武装された両軍の騎兵隊により、地ならしの如く戦場が荒らされる。
本日、通算2度目の両軍のチャージにより戦死者は鰻登りだ。
「うわー、大変ですねー。」
「ラッキーガール!パッション!」
「さー。ぱっそんー。」
敵騎兵隊への反"杭"作戦が開始された。
屍剣士ちゃんの所属する部隊で。
作戦内容は単純だ。木の杭を騎兵隊が通りそうなところに配置するのだ。
後は落とし穴を掘るくらいか。
どこがパッション(情熱)なのか分からないが、皆でひたすらトラップを仕掛ける。
屍剣士ちゃんはぶきっちょだ。木の杭さえも上手く削れない。
ただただ短くなった丸太が量産されていた。
短くなった丸太は適当に地面に転がされた。
運が悪い騎兵が転がる事を期待して。
早晩、丸太と落とし穴は意外な効果を発揮した。神官達に。
落とし穴にハマり死ぬ者、丸太で足を滑らせ頭を強く打ち死ぬ者。
夜は視界が悪い。トラップに引っ掛かる神官が続出し、神官達は一度立ち去ることになった。
戦争が終わってから浄化をすることになったのだ。
こうして屍剣士ちゃんが100%力を発揮できる状況が誕生した。
夜の戦場は墓場だ。つまりは彼女のホームグラウンドなのである。