トコトコ、トコトコ、屍剣士ちゃんが街道を歩く。
目指すはお家のある町。
方角は多分間違っていない。
すれ違う人、すれ違う人にガン見されているが本人は素知らぬ顔だ。
見るからに酷い格好だが、ここはファンタジー世界。
助けてくれる人などいない。みんな自分のことで手一杯だ。
屍剣士ちゃんは食事も睡眠も必要ない。
その気になれば何日間でも歩くことが出来る。
街道に出て2週間、既に本拠地に帰っていてもおかしくない。
今の道程は全体の"サンブンノイチ"といったところだ。
疲れたら(疲れないけど)寝る、暑いから(暑くないけど)寝る、
眠いから(眠気はないけど)寝る……。
何かと理由をつけては寝る屍剣士ちゃんはファンタジー世界のぐうたらチャンピオンだ。
ファンタジー世界は働かないものに厳しい。貴族だろうがぐうたらはできない。
悪徳貴族も一生懸命働いているのだ。
働いている分、人間的には悪徳貴族のほうがマシなくらいだ。
一応墓守と冒険者という肩書きはあるがあまり働いているところを見たことがない。
この世界の1年は360日だが、300日くらいは働いていない。
他の人は大体300日くらい働いている。
もしも屍剣士ちゃんが有名人だったら、世の親御さんはあの人の様になっては
駄目よと言うだろう。
◆
「ふー、疲れましたー。そろそろ休憩しましょうかー。」
「きゃー!助けてください!」
「うーん、ここの木陰がよさそうですねー。」
「大人しくしやがれ!金目のもん寄越せば殺しはしねえ!」
「あー、あっちのほうが良いかもー。」
「お嬢様!喰らえ盗賊め!」
「うーん、悩ましいなー。」
「ぐあっ!やりやがったな!」
周りの喧騒、どこ吹く風か。お昼寝スポットを探す屍剣士ちゃん。
襲われてる主従がいたら助けるのが普通じゃないかって?
多勢に無勢の状況で助けるのは不可能だ。
見なかったことにするのが最善です。
屍剣士ちゃんは無双者の主人公ではない。へっぽこだ。
奇襲しないと1対1も怪しい。
今まで動揺した相手か、油断した相手にしか勝ったことはない。
盗賊5人に勝てるものか。
「そこの人!加勢をお願いします!」
「むむー、ここの草がふわふわしてますねー。」
「……顔色の悪いお嬢ちゃん。盗賊の俺たちが言うのも何だが全く関わる気ねえな。」
「あいつは大物ですぜ、兄貴。」
「分かる。絶対に関わらないという意志を感じる。」
「盗賊め!隙あり!ぐはあ!」
「馬鹿があ!声上げたら奇襲の意味ねえだろ!」
「やっちまえ!おらおら!」
「ぐう。」
◆
高貴な主従への強盗は無事に終わった様だ。
屍剣士ちゃんは既に熟睡している。
盗賊達は屍剣士ちゃんをどうするかで揉めている。
「無視したほうが良いっすよ。」
「いやいや、身ぐるみ剥いじまおう。」
「既にボロボロっすよ?剣ぐらいしかまともなのなさそうですぜ。」
「じゃあ剣だけ頂こうぜ。」
「そうするか。ついでに服ボロボロだし、お貴族様の着てたの着せてやれ。」
優しいのか優しくないのか分からない盗賊たち。
出番が無くてみんな忘れている様だけど屍剣士ちゃんの剣は呪われた魔剣だ。
それもスペシャルな。
一体盗賊達はどうなってしまうのか?