「お嬢ちゃん、その剣寄越しな。」
「この高そうなおべべと交換だ。」
「剣を渡せば手荒な真似はしねえ。」
「んー、うるさいですよー。」
盗賊の背中に剣が生える。ファンタジー世界に於いて、眠りを妨げることはご法度だ。
大体酷い目にあう。盗賊達もご多分に漏れず酷い目にあった。
しかし奇襲は成功したものの多勢に無勢。
屍剣士ちゃんは哀れ盗賊達の剣山になった。
「くそ!1人やられちまった!」
「分け前が増えたと思えば。」
「この人でなし!仲間が死んだんだぞ!」
「す、すまねえ。言い過ぎた……。」
仲間の1人がやられ悲しむ盗賊達。
しかし彼らの切り替えは早かった。悲しむ暇があれば小銭でも拾ったほうがマシだ。
盗賊の1人が屍剣士ちゃんの剣に手を伸ばしたところ、背中から剣が生えた。
本日2度目。デジャヴュ。
驚愕する盗賊達、立ち上がる屍剣士ちゃん。
後はボーナスタイムだ。
一振りで1つ首が飛ぶ、もう一振りで2つ目の首が飛ぶ。
残りは1人、タイマンだ。
「ひ、ひいいいい!何だお前!何で生きてる?!」
「死んでますよー?えーい。」
最後の1人の腹に剣が刺さる。
後に屍剣士ちゃんは盗賊に1対5で勝ったことがあると他の冒険者に息巻いくが、
信じてもらえなかった。
信じてもらうには普段の行いが大事だ。
普段からキビキビ動きましょう。
◆
屍剣士ちゃんが大立ち回り?をした場所は酷い状況になっている。
素っ裸の貴人の斬殺死体が2体、首の無い盗賊の死体が2体、
腹から血を流している死体が3体。
そして、剣山になった死体が1つ。
屍剣士ちゃんのズボラは極まっており、剣が刺さったまま寝ていた。
たまたま通りかかった旅人が屍剣士ちゃんに手を伸ばしたところ、
"ガシッ"と手を掴まれた。
軽くホラーだ。旅人は悲鳴を上げた。
「おはよーございますー。誰ですかー?」
「ぎゃああああ!死体が喋った!」
「えー、死体も喋りますよー。」
「喋りません!」
旅人に剣を抜いてもらう屍剣士ちゃん。
抜いた側から再生するのは気持ち悪い。
旅人はえずいている。ゲロゲロだ。
「もー、汚いですよー。」
「びっくり人間に言われたくないです!」
すっかり復活した屍剣士ちゃんはその辺に落ちてた高そうなおべべを着て
小綺麗になった。遠くから見れば貴族にも見える。
一息着いた旅人と屍剣士ちゃんは世間話をする。
旅人はこの状況に既に慣れている。すごい適応力だ。
「そう言えば聞きましたか?」
「いえー、聞いてませんー。」
「ですよねー。この先にある〇〇の町(屍剣士ちゃんのホームタウン)が
魔族に占領されたらしいです。」
「大変ですねー。」
「はい、近くの町は避難民で一杯になると思いますので移動するならお早めに。」
「はーい、ご親切にー。」
旅人と別れた屍剣士ちゃんはホームタウンへの道を進む。
確かに重そうな家財道具を積んだ荷車や馬車、それに荷物を担いだ人と
さっきから頻繁にすれ違う。長い長い列になっているようだ。
「あー!(屍)剣士さん!奇遇ですね!」
「おー、神父さんだー、おひさー。」
「お久しぶりです。(屍)剣士さんは戦争行っていたので知らないと思いますが、
町には戻らないほうが良いですよ。」
「あー、魔族ですかー?」
「おお、知っていましたか。そうなんですよ。急に魔族が攻めてきて、
てんやわんやでした。」
「うーん、困ったなー。」
「討伐軍を編成するようなので参加してみられては?」
「むむー、もう1年分は働いたのにー。」
「まあ、命がけですから無理強いは出来ません。それではまた。」
「またねー。」
帰る家がなくなった屍剣士ちゃん。
ホームタウンを取り返すために魔族と戦うのか戦わないのか?
それはまた別のお話で。