屍剣士ちゃんのホームタウンが陥落して早数ヶ月、屍剣士ちゃんは穴を掘っていた。
ホームタウンと全く関係ないところで。
鉱山のある△△の町、ここでは穴掘り、つまり坑夫の仕事が沢山ある。
仕事も寝床も失った屍剣士ちゃんは寝床付きの文句に釣られてブラック労働に勤しんでいた。
「ひー、寝たいですー。」
「馬鹿野郎!あと10m掘るまで休憩なしだ!」
「そんなー。」
屍剣士ちゃんが鈍いのはみんなの知っての通りだ。
当然作業の進捗も遅い。
アホみたいな設定のノルマと相まって屍剣士ちゃんのノルマはいつも3日遅れだ。
当然休憩がもらえる訳もなく、休まずに働いていた。
何故か誰も異常性に気付かない。
過酷な労働環境のせいでみんな他人を気にしている暇などないのだ。
「おい!でかい縦穴が見つかったぞ!」
「志願者は来い!探検させてやる!」
「探検する者には1日休暇をくれてやる!」
「命知らずは誰かいないのか!」
「はーい、やりますー。」
休暇の2文字に釣られた屍剣士ちゃんは縦穴探検隊に志願した。
当たり前だが鉱山で見つかる縦穴は危険だ。
水が溜まっていたり、有毒なガスが充満していたり、モンスターがいたり……。
つまり屍剣士ちゃんうってつけの仕事だ。
「のろまの嬢ちゃんかあ、不安だなあ。」
「えー、これでも冒険者ですよー。」
「嬢ちゃんでも出来るなら、俺は大冒険者だ。」
「ははは!違えねえ!」
「むー、酷い言い様ですねー。」
◆
結局、志願者は屍剣士ちゃん、マッチョ1、マッチョ2の3人になった。
筋肉は信用できる。ファンタジー世界では定説だ。
ヒョロヒョロは弱い、デカくてムキムキが正義だ。魔法使いもムキムキのほうが強いとされる。
指輪物語のガンダルフだって剣でバルログとバチボコにやりあってる。
話は逸れたが、ムキムキと少女の奇妙な3人組は坑道に出来た縦穴に降りることになった。
「ぴーぴー!」
「毒ガスチェックOK!」
「ぴーぴー。」
「嬢ちゃんは黙ってろ。」
「はーい。」
ファンタジー世界での毒ガスチェックと言えばカナリアだ。
動物愛護団体なんのその、ファンタジー世界には人権も動物愛護の精神もない。
いや、無いことは無いがこの鉱山にはない。
安全装置を手に3人は進む。
どうやら毒ガスの危険性はないようだ。
◆
暫く進んだところで、3人は青く光る鉱石を見つけた。
ファンタジー御用達のミスリル鉱石だ。
屍剣士ちゃんの運Aの力が発揮された。
「おいっ!あれミスリル鉱石じゃねえか!?」
「ほんとだ!やったぜ!大金持ちだ!」
「えーと、見つけたもの持って帰れるんですかー?」
「ああ、持って帰った分は取り分になる。」
「そのあとは雇い主の物だな。」
「へー、そうなんですねー。」
3人は持ってきたツルハシでミスリル鉱石を掘った。
ミスリルは軽くて丈夫だ。
沢山持っても大丈夫。
マッチョ2人は持ってきた背嚢に、屍剣士ちゃんはポッケに詰めるだけ鉱石を詰めた。
後は帰るだけだ。
ここまで何もないと帰るとき恐ろしい。
屍剣士ちゃんとマッチョの運命や如何に?