屍剣士ちゃんの朝は遅い。死んでからは時間にルーズだ。
いつもお日様が登ってから寝床(墓場)を出る。
これでも普段は墓守として働いているのだ。
ファンタジー世界なので夜になるとゴーストやゾンビが徘徊しているが彼女には関係ない。
同族で襲われないのを良いことに仕事は適当だ。
今日は冒険者ギルドから呼び出しが掛かっている。
本当は朝に行かないといけなかったが着いたのは昼過ぎだ。
毎度の事なのでギルド職員も慣れたものだ。
集合時間は態と早く言ってある。
それでも遅刻するから屍剣士ちゃんは大物だ。
「1時間遅刻ですよ(屍)剣士さん。」
「はいー、すみませんー。」
屍剣士ちゃんは腕はそうでもないが帰還率100%の化け物だ。
危険な探索依頼であれば彼女の右に出る者はいない。
更にお給料が安くても文句を言わないからギルド発行のブラック依頼も引き受けてくれる。
所謂、都合の良い女だ。
「まあ、良いでしょう。今回の依頼ですが……」
「ぐぅ。」
「寝ないで下さい。」
「すみませんー。死んでましたー。」
「ちゃんと聞いてくださいね。」
「はいー。」
屍剣士ちゃんは適当なので依頼を1人では任せられない。
毎回複数人パーティーで依頼は遂行される。
「ちょっと待ってくださいよ!」
「何でしょうか狩人さん?」
「何でこんなトロそうな奴と一緒じゃないといけないんですか?!」
「なんででしょうかー?」
「彼女が今まで戻らなかった事がないからです。」
「ええ!こんなトロそうな奴があの"パーフェクトレディ"なんですか?!」
「ええ、信じられないでしょうが……」
「あれー、いま悪口言われてますー?」
そんなこんなで探索パーティーが結成された。
メンバーは4人。狩人、魔法使い、戦士、そして屍剣士ちゃんだ。
「一応、自己紹介しとくか。俺は狩人、ランクは5だ。」
「ランク言う必要あります?……魔法使いです。ランクは4です。」
「戦士。ランクは5。」
「剣士ですー。ランクは3ですー。」
冒険者にはランクがある。
1から10までで、数字が大きいほどランクが高い。
ランクは強さ。基本的にランクが高ければ高いほど強い。
屍剣士ちゃんはしたから3番目で降格間近だ。
そもそも依頼をほとんど受けていない。
本人曰く、墓守の仕事が忙しいからだがそれは建前だ。
本当は、始めの方で話した通りで、時間にルーズで依頼をまともに受けられないからである。
屍剣士ちゃんのランクで受けられる様な依頼は初心者向けで、
一番冒険者の人数が多いところである。
朝一でギルドに向かわないと依頼は取れない。
昼過ぎにギルドに出向いても仕事は無いのだ。
まあ屍は食事は不要なので金が無くても大して困らないのだが……。
「ランク3〜?最低でも4は必要って聞いたんだが?」
「ええ、彼女は特例ですので。ちなみにランク8の依頼でも他の人は死にましたが生還しています。ちゃんと依頼を済ませてね。」
「何でそんな奴がランク3なんだ?」
「まあ、その、あれです、時間にルーズなんですよ。」
「はいー。いつも昇級試験受けられなくてー。」
「……すげえ不安だ。」
「同じく。」
「頑張りましょー。」
久々の依頼に屍剣士ちゃんはやる気満々だ。
今回の依頼は何人生き残れるかな?