門番と屍剣士ちゃんは意気投合し、とっぷり日が暮れるまで話し込んだ。
門番はお腹が減ったらしいので酒保で買ってきた魔族餅(野戦食)を食べながら2回戦を始めた。
結局日が昇るまで話し込んでいた2人は周囲の喧騒に気付く。
「何かあったのかな?」
「さあー、何ですかねー?」
「あっ、お前らも来るか?侵入者を9人も捕まえたからよお、戦意高揚のために公開処刑するんだってさ。」
「処刑!行く行く!行くよな剣士ちゃん?」
「はーい、行きまーす。」
捕まった9人とはもちろん一緒に侵入した9人だ。
仲間の処刑を見に行くなんてバレる危険もあるのに気が狂っているとしか言い様がない。
流石の屍剣士ちゃんでも普通はこんな判断をする訳がない……多分。
大変なことに夜通し話したことによる睡眠不足で屍剣士ちゃんの判断力は
著しく低下していたのだ。
◆
「くそー!魔族野郎!呪われろ!」
「うわー!死にたくねえよ!」
9人が後ろ手に両手を縛られ、跪かされている。
処刑人は抽選方式だ。
みんな人間をぶち殺したくて堪らないのだ。
屍剣士ちゃんも当然クジを引いた。
屍剣士ちゃんのギャンブラー魂は熱く燃え上がっていた。
「まずは1人目!赤の30番!」
「やったー!俺だ!どうぶち殺そうかな♪」
「くー、おしいー。」
「剣士ちゃん何番?赤の32番か、惜しいなあ。」
1人目はリザードマン(蜥蜴人)のキャメルクラッチで胴体が真っ二つにされた。
ファンタジー世界でも組打ち(取っ組み合い)はある。
関節技が発展していてもおかしくはないのだ。
(そもそもキャメルクラッチが関節技かは怪しいが……。)
「どんどん行きますよ!2人目!青の32番!」
「やったブヒ!」
「くそー、色違いだー。しくしく。」
「気にすんなって。まだ7人もいるぜ。」
2人目は豚人により首と胴体を引きちぎられた。
3人目、4人目とどんどん処刑が進む。
そして最後の9人目の番が来た。
「最後の1人!赤の……。」
「こいこーい。」
「32番!」
「わーい、あたったー。」
「やったなー、剣士ちゃん!すげえ殺し方期待してるぜ!」
壇上に上がる処刑剣士ちゃん、9人目と目が合う。
驚く9人目、屍剣士ちゃんも漸く気付く。
頭をフル回転させる屍剣士ちゃん。助けるのは無理だと言う結論になる。
「カッ飛んだやつ頼むぜ嬢ちゃん!」
「フィナーレ頼むブヒ!」
「やっちまえゴブ!」
助けるのが無理と判断した屍剣士ちゃんの頭はカッ飛んだ処刑方法を
考えることに全て使われた。
あーでもないこーでもないと悩んだ末、カッ飛んだのを思い付く。
「じゃあー、やりまーす。」
「「「頑張れー!」」」
「秘技ー、だぶる切腹ー。」
屍剣士ちゃんは冒険者の前で座り、自分の腹に剣を刺した。
剣は当然後ろの冒険者の腹も貫く。
そして真一文字に腹を切り裂き、その後みぞおちまで剣を戻し、さらにへその方向に切り裂いた。
十文字腹、切腹の作法の最上級とされる方法である。
観客の反応はと言うと上々である。称賛の拍手と笑いが広場に満ちていた。
「いえーい、アンデットなので死にませーん。」
「ガハハ!すげえぞ嬢ちゃん!」
「死なねえけどやれねえよ!」
「自分も今度からやんないと駄目すか?」
こうして新魔王軍の士気を上がった。
これから一時的に新魔王軍は盛り返すことになる。
誰が悪いって?捕まった奴が悪いんだよ!(屍剣士ちゃん談)