時間は元の時間軸に戻る。
屍剣士ちゃんがデロデロな首を持って帰って袋にされてから早1ヶ月、
町はいつもの日常を取り戻していた。
みんな逞しいなあと仕事もせずにのほほんとしているのは、そう屍剣士ちゃんだ。
あいつ何時働いているんだろうと怪訝な目で見られているがお構いなしだ。
今日も昼過ぎにギルドに来たが仕事が無くて、広場でのんびりしている。
「いやー、暇ですねー。」
「ワンワン!」
「ニャーニャー!」
話しかける相手がいないので犬猫に話しかける屍剣士ちゃん。
当然言葉は通じない。
季節は初夏、蒸し暑くなってくる時期だ。
犬猫が集まってくる理由は屍剣士ちゃんのヒンヤリボディが目当てだ。
血が通ってないので夏は涼しく、冬は冷たい。
歩く温度調節器、それが屍剣士ちゃんの今の仕事だ。
見ていて暑苦しくなる光景を見て、町の人々は"うげっ"という顔をして、
見なかったことにする。
町の復興が優先だ。遊んでいる暇はない。
と、そんな屍剣士ちゃんの元にトラブルが舞い込んでくる。
「きゃー!人殺しよ!」
「放せ!クソ野郎!」
「お貴族様よお、助けて欲しけりゃ金払いな!」
「そんな金は無い!」
「んだとお!復興のために貰った資金が山程あるだろうが!」
「それはみんなのお金だ!私一人に使えない!」
貴族にしては珍しい聖人君子が見るからに悪そうなゴロツキに捕まっている。
貴族が殺される可能性があるため、周りは手を出せないでいる。
"許せん!"と立ち上がる屍剣士ちゃん。
犬と猫は驚いて、どこかに走り去る。
「こらー、悪いことはやめなさーい。」
「何だてめえ!まずはてめえから殺ってやろうか?」
「やってみなさーい。」
「後悔すんじゃねえぞ!おらあ!」
グサリと首にナイフが一刺し、へへへと笑うゴロツキ、ナイフを持った手が掴まれる。
屍剣士ちゃんを見るゴロツキ、屍剣士ちゃんの生気のない目と目が合う。
「殺す時はこうするんですよー。」
「は?な、なんで生きてんの……ゴボッ……。」
48の必殺技"武器を体に刺させて武器が使えないところを不意打ちアタック"が決まり、
ゴロツキを片付けた屍剣士ちゃん。
みんなはあ然としている。
屍剣士ちゃんはゆっくりナイフを抜き、とんでもない嘘を言った。
「いやー、刺さってたら死んでましたー。」
「いやいや、刺さってただろ!」
「そうだ!そうだ!」
「ふざけるな!」
「また袋にしてやろうか!」
「そんなー。」
皆は大ブーイングだ。中指を立てる者、親指を下に向ける者、ものを投げる者。
助かった貴族は置いてけぼりだ。
地元の人との温度差を感じたが、助けてもらったことには変わりない。
貴族の人は屍剣士ちゃんにお礼を言う。
「危ないところをありがとうございました!」
「いえいえー。」
「このお礼は必ず!」
「いりませんよー、それよりも町の復興に使ってくださいー。」
貴族は急に屍剣士ちゃんが魅力的に見えた。
吊橋効果と言うやつだ。
屍剣士ちゃんは、顔は整っているけど、血色は悪いし、目に生気がない。
生きてるのかさえ怪しい。
こんな怪しい女はそうそういない。
「……してください。」
「はいー?」
「私と結婚してください!」
「はいー?!」
「「「「えーーー!」」」」
屍剣士ちゃんも驚く時は驚く。
町の人はもっと驚いたけど。
貴族と屍剣士ちゃんの恋の行方は如何に?