町崩壊の危機、原因はある意味屍剣士ちゃん。
人助けが裏目って可哀想と言えば可哀想。
いや、日頃の行いが悪いからこうなったとも言える。
せめて、墓守用の家の中で寝ればこんな事にならなかった。
「人相の悪いあなた!あなたでしょ剣士さんに手を出したのは!」
「は?違えよ!誰がこんなやつに手ぇ出すか!」
「否定するとは怪しいですね!……剣士さん、この人ですか?!」
「えーと、違いますよー。」
「ええい!埒があかない!やった奴は出てこい!」
あの立派な貴族様がこんな事になるなんて。
剣士の野郎、後で覚えてろよ。
そんな会話がそこかしこで行われていた。
元々悪いのは貴族様を狙った暴漢であるが、もうこの世にいないので恨み辛みは
屍剣士ちゃんに向けられていた。
そして、ようやくこの状況を打破する人物が出てきた。
町の相談役を務める光の神の神父である。
彼は貴族様に落ち着くように話し、屍剣士ちゃんの話を聞くように言い聞かせた。
なんとか落ち着いた貴族様は屍剣士ちゃんの話に耳を傾ける。
話は要約するとこうだ。
昨日おばちゃん達に捕まって綺麗な衣装に着替えさせられた。
家に帰ったけど着替えるのが面倒臭いのでそのまま寝た。
寝坊したので急いでそのままの格好で来た。
乱暴はされてない。
これで一件落着と思われたがそうは問屋がおろさない。
貴族様はいい加減な屍剣士ちゃんの姿を信じられないでいる。
泥だらけとはどう言う事だ、地面にでも寝たのかと尋ねる貴族様。
返ってきた答えは"そのとおりです"。
それでも信じられない貴族様が頭を抱えていると、トラブル襲来。
町に潜伏していた魔族の1人が貴族様に襲いかかる。
人はいるものの、棒立ちでそれを見ている面々。
咄嗟の事で誰も動けなかった。
ああ、貴族様の命の灯火が尽きようとした時、奇跡が起きる。
鈍臭屍剣士ちゃんが何もないところで転んだのだ。
グサリと胸を貫かれた状態で魔族を掴んだ屍剣士ちゃん。
ハッとした冒険者が動けない魔族に止めを刺す。
屍剣士ちゃんは死んだふりだ。
あわよくばこのまま墓場まで持って行ってもらおうと企んでいる。
しかし、その願いは叶わなかった。
◆
「勇敢なこの者に祈りを。」
「剣士さん、死ぬなんて……」
「うおおおお!剣士!お前は凄いやつだ!」
「剣士ちゃーん。」
今は屍剣士ちゃんの葬儀中だ。
死んでいないが、いや死んでいるが問題しかない。
本人はずっと死んだ振りをしているが途中から本気寝モードに入っている。
寝相は相変わらず悪いが棺に入れられているので動けないから問題ない。
最後に生前使っていた剣が一緒に墓の中に入れられ、土の中に棺が埋められた。
こうして、死んだ振りをすることで諸々の問題を解決した屍剣士ちゃんは
暫く棺の中で眠る事になる。復活は1ヶ月後くらい先。
流石に同じ町で活動するのは不味いと思った屍剣士ちゃんは
遠くの町に引っ越す事になる。
めでたし、めでたし。