「さあさあ、見世物小屋だよ!」
「東西南北、津々浦々から集められたびっくりする生き物を見られるのはここだけ!」
「お代は銅貨10枚だけ!」
「おっ、ありがとうございます!さあさあ、良い席は早いもん勝ちだよ!」
ここはどこかの町の広場。
全国を行脚する見世物小屋が町の主に許可を貰い、大きな天幕を開いている。
「さあ!まずは世にも珍しい妖精だ!」
「すごーい!」
「可愛いね!」
特にトラブルもなく、見世物は進行していた。
屍剣士ちゃんは大トリのジ・アンデットガールだ。
直球過ぎる名前だが、前の町では受けに受けた。
途中から過激になり過ぎて禁止されたが……。
「さあ!最後は前の町で話題を持ちきりにしたこの怪物!」
「ジ・アンデットガールだ!」
「どうもー、じ、あんでっとがあるでーす。いえーい。」
両手を振りながら入場してくる屍剣士ちゃん。
観客はぽかーんだ。
それもそのはず。
知らない人から見れば顔色の悪い少女が手を振って出てきただけだ。
「みなさんポカーンとしてますね!」
「しかし、この怪物の恐ろしいところはここからだ!」
「いけ!アンデットガール!」
「はーい、今からこの剣でかっぷくしまーす。」
かっぷく?観客の頭にハテナが浮かぶ。
が、すぐに悲鳴と歓喜の混ざった熱狂に変わった。
「えーい、とお、はあ、よいしょ。」
「うわあ!腹かっさばいてる!」
「きゃあああああ!」
「すげえ!見世物小屋!すげえ!」
「お腹を切ったけど死んでませーん。いえーい。」
腹に剣を刺したままで手を振る屍剣士ちゃん。
みんな拍手喝采だが、水を差す者が現れる。
「嘘付け!どうせトリックだろ!」
そら来たと座長は心の中でほくそ笑む。
「そう言う人がいると思っておりました!」
「これより希望のお客様10名にアンデットガールに剣を刺してもらいます!」
「いえーい。」
「仕込みなどありません!さあ希望の方はこちらにどうぞ!」
普通は人に剣を刺したいなど思わないが、ここはファンタジー世界、修羅の世界。
殺伐とした世界に潤いを、人に剣を刺すくらい何ともない。
さっきの悲鳴は良いとこのお嬢様のものだ。
一般ピーポーは大喜び。そんな世界。
屍剣士ちゃんに剣を刺せる栄誉を得た倍率30倍の抽選を勝ち抜いた人達は、
思い思いに屍剣士ちゃんに剣をぶっ刺す。
流石に首と頭は禁止されているが、手足に胴体、両肩、両肘、最後には
胸に剣を刺された屍剣士ちゃんは見た目最悪のハリネズミだ。
本人は剣が刺さったままピースをしている。
観客は大喜びだ。今日の演目はこれで終幕。
次の公演では自分が刺したいと言う決意を胸に、みんな帰路につく。
帰りの受付ではグッズが売られていた。
妖精の粉(小麦粉)、リザードマンの牙(犬の牙)、などなど。
そしてグッズの目玉はジ・アンデットガールの肉(本物)。
一体何に使われるか分からないが、爆売れで座長はウハウハらしい。
ちなみに座員へのインセンティブは無い。
座長の総取りだ。流石はファンタジー世界、ブラックだ。
銅貨出したけど、お金って前も出したかな?となっております。