生きろ屍剣士(しけんし)ちゃん   作:おもちぴん様

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屍剣士ちゃん、伝来する1

 ここは海の上、船の上。

屍剣士ちゃん、波に揺られて、ぶらり旅。

屍剣士ちゃんはミイラとして遠方の国に送られようとしていた。

当然モノ扱いなので、棺桶の中に入れられ、塩漬けにされている。

 

 そもそも屍剣士ちゃんが何故こんなことになっているかと言うと、先般の見世物小屋事件が原因である。

たまたま遠方の国の人が見に来ており、屍剣士ちゃんの不死性に目をつけたのだ。

後は、甘い言葉で屍剣士ちゃんを棺桶の中に連れ込み、塩漬けするだけ。簡単なお仕事だ。

 

 流石の屍剣士ちゃんも塩漬けは初めてなのか、棺桶の中で静かにしている。寝ているだけかも知れない。

やがて水分が抜けて乾燥屍剣士ちゃんが完成するだろう。

 

◆

 屍剣士ちゃんを載せた船は何のトラブルもなく、遠方の国に到着した。

屍剣士ちゃんは現地の寺院と思われる建物に運び込まれる。

 

「僧正、依頼のモノを持ってきました。」

「依頼のモノ?何じゃっけそれ?」

「何か神々しいモノをって話でしたよね。」

「そうじゃそうじゃ、いやあ120年も生きると物忘れが酷くてな。」

「それでは御開帳!」

「何じゃこれ?木乃伊か?」

「ええ、不死の木乃伊です!」

「動かんぞ。」

「動きませんね。」

「「……」」

「まあ良いか。ほれ礼金じゃ。」

「こんなに!流石は僧正!無駄に長生きしてねえ!」

 

 人身売買された屍剣士ちゃん。

まだ寝ている。体中の水分が奪われたというのに。

 

 僧正と呼ばれた爺は取り敢えず屍剣士ちゃんを椅子に座らせ、お供え物をした。

これからどうやって屍剣士ちゃんで金儲けしようかと思案顔だ。

結局その日は思いつかなかったのか僧正は寝た。

 

 そして、その夜、屍剣士ちゃんは動き出す。

お供え物の水を飲み、乾いた体が潤う。

しかし、お供え物では足りないのか、寺院中の水を飲み始めた。

 

 瓶(かめ)の水と花瓶の水、果ては井戸の水まで。

飲んでは飲み、飲んでは飲み、やがて寺院の水は尽き、ぐうたらモンスターの屍剣士ちゃんが復活していた。

 

 朝、何も知らない僧正が起きて、顔を洗うために井戸に行き、水汲み用の桶を下ろすが、カランと音がして、桶を引き上げても水が取れない。

 

 それならばと瓶に溜めていた水を使おうとすると、瓶の水もない。

困り果てた僧正が寺院の広間に行くと、広間の真ん中に見知らぬ者、そう屍剣士ちゃんを見つける。

 

 今の屍剣士ちゃんは潤い度驚異の120%で歩くと床が濡れる怪物だ。

広間はびしょびしょ、床はツルツル。

 

 そんな床を爺が歩くとどうなるか?

そう滑って転ぶのだ。

例に漏れず滑った僧正は頭を強打し、120年の長い人生に終止符を打った。

屍剣士ちゃん、異国の地にて早速1キルを達成。

これから一体どうなるのか?

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