ライスシャワーのようでライスシャワーでないちょっとライスシャワーな転生ウマ娘 作:雅媛
クラスメイト達と併走した結果、いくつかの学びを得た。
前に東条トレーナーが言っていた、大逃げは王道ではない、というのがちゃんと理解できた、気がする。なんせマルゼンお姉様は逃げる必要がなくても飛ばしすぎて逃げみたいになっていた人であり、東条トレーナーに教わっていた愛弟子の一人にもかかわらずこの辺りの意味がさっぱり分かっていない人だった。
単純に言えば大逃げはリソースの消耗が激しすぎるのだ。もちろん利点はある。周りに影響されないので好きに走れるし、一番効率的なコース取りが可能だ。でもそれならみんな大逃げをしている。なぜしないかというとそれに対するデメリットが大きすぎるのだ。
デメリットの一つは自分でペース配分を作らないといけないことだ。周りを一切確認できないから、オーバーペースなのかペースが遅いのか、まるで分らない。そのため考えるリソースの大部分を体内時計の調整などに回さないといけない。まあこれは自分でペースを握れるということでもあるから一長一短なのだが……
もう一つ大きなデメリットにスリップストリームの恩恵を一切受けられないということだ。みんなに囲まれて走ると、非常に楽なのである。なんせ空気抵抗がほとんどない。美味い位置取りをすれば追い風すら受けられる。人の大きさでも平均時速60kmで走っている以上、このメリットは絶対的であった。つまるところ体力消費が少ないのだ。
おそらく長距離になると、こういったメリットが非常に大きくなる。そうすると先行からバ群の中から差すぐらいが一番有利だという合理的な説明がつく。ならば私も先行の戦術を覚えた方がいいのだろう。うん、わかっているのだが、なんせ経験値が少なすぎる問題が解決しない。
ひとまずクラスメイトに頼んで併走を毎日しているが…… あまりつかみきれていなかった。
「ということでマチタン、わからないので教えて!」
「まかせろ~」
「任せろ、じゃないでしょう。ライバルなのよアナタたち」
「東条トレーナーも教えてくーださい♪」
「いやだからあなたたち、同期でライバルなのよわかってる?」
わからなければ他人に聞く、ということでマチタンに教えてもらいに来た。今のところ知り合いの中で駆け引きが一番上手いのはマチタンである。基本差しから追込み気味の後ろの位置でレースをしているが、スパートで前に詰まっているのは見たことがない。
「私だって教えられますよ」
「ブルボンちゃん、駆け引きとか全然しないじゃない」
「ぶー」
何故かブルボンちゃんが張り合ってきたが断る。というか、ブルボンちゃんの駆け引き能力は私と大差ないだろう。今まで併走していてもそうだったし、ラップ走法逃げウマ娘に駆け引きも何もないだろう。それを指摘すると、ブルボンちゃんは不満そうに私に抱き着いてきた。
「そうよ、私が教えるわ」
「お姉様も駆け引きとか苦手じゃないですか。ぶっ飛ばすだけで」
「ぶー」
マルゼンお姉様も張り合ってきたがやはり断る。トレーニングとかは信用しているが、この辺りに関しては全然よくわかっていないのは今まで十分理解している。マルゼンお姉様も不満気に私に抱き着いてきた。
両側から豊満なものに包まれて、私は幸せであった。だが、ブルボンちゃん、セクハラを外でするのは止めてほしい。さすがに恥ずかしい。
そんな感じで練習を積み重ねつつ、年末は近づいてきていた。