ライスシャワーのようでライスシャワーでないちょっとライスシャワーな転生ウマ娘 作:雅媛
弥生賞の日、私はいつものように朝一番のバスで中山競馬場にむかう。マルゼンお姉様の車には絶対に乗るつもりはなかった。
早く着きすぎるのだが、そのあとはのんびり柔軟体操をしつつ、他の子とも話しながら自分の時間まで待つのだ。
弥生賞は第11レース、15時40分スタートであり、それまでのレースのほとんどは未勝利かメイクデビュー戦だ。なので同級生がかなり待機場所に集まっていた。
「で、なんでみんな柔軟してるの?」
「GⅠウマ娘様にあやかろうと思って」
「いやなんの御利益もないよ?」
クラスメイトの子も何人も出てるから、知り合いもそれなりにいる。
一人黙々と暇つぶしに柔軟体操をしていると、なぜか知り合いが寄ってきて近くで同じことをやり始めたのだ。
まあ怪我をしないためにも柔軟は大事だからいいと思うが……
「どうせだからやり方教えてよ」
「ムー、まあ構わないけど、時間どれくらいある?」
「30分ぐらいかな」
「じゃあ30分で終わる脚のストレッチね」
開脚前屈で股関節を伸ばすところから始めて、徐々に小さい脚先の筋肉へと移っていく。
30分もすれば一通り柔軟は終わった。簡単なメニューだが準備体操ならこれで十分だろう。
「いいんちょーって柔らかいけど、毎日やってるの?」
「私は毎日この3倍ぐらいはやってるよ。大体部屋でやってる」
「やっぱりまじめだなぁ、いいんちょーは」
そんな軽口を叩くクラスメイトの背中を見送る。この後彼女は見事メイクデビューで勝利をおさめていた。
水分を取って、甘いものを食べて、延々と柔軟しているうちにやっと私のレースの時間が近くなってきた。
割り当てられている待機室まで戻り、今まで着ていた準備運動用の体操着から、あらかじめ用意していたレース用の体操着に着替える。相変わらず少しきつくて、薄手で少し頼りない感じである。
ゼッケンをつけたら準備完了だ。私は装鞍所へと足を運んだ。
さて、今日のパドックは何をするか、少し悩んだ。
パドックというのは準備運動をする場所であり、同時にそれを見せることで体調をアピールする場だ。だが今回、私は柔軟体操やりすぎていて、正直もう十二分に準備ができている状態だった。
軽く足踏みをしてみるが、何も意味がない。
うーむ、何をするべきか。ファンサービスでもしてみるか。
ひとまずささやかな祈りでも歌ってみるかね。
「ん、ん……」
音楽もないのに急に歌い始めてみる。
周りがちょっと驚いているが、まあ始めてしまったのだからしょうがない。
というか、選曲ミスったな。テンションが下がる。
ただ、一度始めてしまったのだから結局1曲を歌いきってしまった。
拍手される中、私は照れながら、誘導ウマ娘のお姉さんの後をついてコースへと向かうのであった。
(上手いけど、なんでこの曲?)
(なんでこの曲?)
(声もあってるけどなんでこの曲?)
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