ライスシャワーのようでライスシャワーでないちょっとライスシャワーな転生ウマ娘 作:雅媛
入学式は滞りなく終わった。
毎年やっている行事だろうし、新生活スタートから何かトラブルがあったら困るだろう。私の代表挨拶も半分予め台本が用意されていたようなもので、それを読み上げれば済むのだからそう難しい話ではなかった。
問題は、入学式が終わった後であった。
「傘がない……」
外の雨は入学式が始まる前より強くなっているのに傘がなかった。
バクちゃんに渡してしまったのだから当たり前である。保健室からここまでは屋根がある場所を移動して来たから困らなかったが、今は学園正門の向かいにある寮まで行く必要があるが、その間の多くの部分は屋根がなかった。
はてさて、どうするか。先生に頼めば貸してくれそうだが…… 皆入学式の片づけで忙しそうだ。少し待つか…… そんなことを考えていたら……
「ライスシャワーさん」
「ひゃい!?」
「初めまして、ライスシャワーさん」
「な、なんでしょうか!?」
いきなり声を掛けられたので振り返ると、そこにはウマ娘のミホノブルボンが居た。もちろん初対面だが、前世知識で彼女の顔を知っていた。彼女が私のことを知っているのは、先ほど代表挨拶をしたからだろう。あとは、彼女が私の寮でのルームメイトであるのもあるだろう。
予め寮のルームメイトは名前だけだが教えられており、私のルームメイトはミホノブルボンであったのは知っていた。きっと彼女もあらかじめルームメイトを確認しており、こうして声をかけてきたのだろう。
どう対応するか少し迷ってしまう。前世知識で彼女がミホノブルボンだと私は知っているが、本来彼女のことなど知るわけがないのだ。どういう対応をするか悩み、そのせいで反応がドモってしまっていた。
「ミホノブルボンです。ライスシャワーさんのルームメイトです。よろしくお願いします」
「ラ、ライスシャワーです。よろしくね。ライスって呼んでくれると嬉しいな」
「わかりましたライスさん。私もブルボンで構いません。ところでライスさん、何かお困りのようですが」
「あー、あのね、ちょっと傘がなくて……」
「傘ですか? 雨は今朝から降っていたように思いますが」
不思議そうに首をかしげるブルボンさん。
無表情なのだがなんとなく大型犬のような雰囲気で可愛らしい。髪の毛をモフモフしたい。そんな衝動にかられた。
「あー、バクちゃん、さっき来る時に知り合った子が傘を持ってなかったから貸しちゃって……」
「自分の分はどうするつもりだったのですか?」
「どうしようねぇ……」
何も考えていなかっただけである。
先生に頼めば借りられるだろうと思っているのでそれを待とうと思っているのだが
「では、私がライスちゃんと一緒に帰ります。ミッション、相合傘を遂行します」
「相合傘!? というかなんで急にちゃん付け名になったの!?」
「ミッション、友達を作ろう達成のためです。先ほど、ライスちゃんはバクちゃん、と誰かのことを呼んでいました。『さん』より『ちゃん』の方がより友達かと思いました」
「それは好みだと思うけど……」
「なので、ライスちゃんもブルボンちゃんとか、ボンちゃんとか呼んでください」
「わ、わかったよ」
謎のミッションである。友達100人作ろうとしているのだろうか。
まあ、新学期になると友達を新しく作ろうと頑張る子が多いのはわかるし、ルームメイトとは仲良くやりたい。そこまで友達を作るつもりがない私でも、ブルボンちゃんには付き合うことにしよう。
「では、ライスちゃん、私に寄ってください」
「? こんな感じ?」
相合傘をしようというのだろう。ブルボンちゃんが持っている傘は黒くて大きめの傘である。どうにか二人でも入れそうではある。
ひとまずブルボンちゃんの隣に立ってみる。
ブルボンちゃんは、無表情に言った。
「もっと寄ってください。肩が濡れてしまいます」
「え、じゃあこれくらい?」
半歩ブルボンちゃんに寄る。肩が触れるギリギリぐらいだ。
「もっとです。この傘は父の物なので大きめですが、二人で入るには少し小さめです」
「え、もっと…… これくらい?」
「もっとです、これくらい」
「ひゃぁあ!?」
肩が接触してしまってちょっと焦ったが、ブルボンちゃんはもっと積極的だった。
腰に手をまわして、私を抱き寄せてきたのだ。
身長差のせいで、肩がブルボンちゃんのその豊満な胸にぶにゅぅと触れてしまう。その胸部は、非常に豊満であった。
なんだこれ、当ててるのか、当ててるな。うん。
同性だし、こちらの世界はウマ娘の方が圧倒的に強いせいかウマ娘たちのセックスアピールは結構奔放である。男性の方が慎ましやかな傾向が強い。それを考えるとあまりに気にし過ぎなのだろうが、この辺りは10年以上生きていてもまだ前世の感覚を少し引きずっていた。
「傘はライスちゃんが持ってください」
「う、うん」
渡された傘を差して少し高めに掲げる。
身長差が結構あるので、自分の感覚で差してしまうとブルボンちゃんの頭が傘に当たってしまうだろう。
そのまま私たちは、寮に向かって歩き出した。
歩き始めて暫く、無言の時間が続く。
周りに人はいるが、雨が強いのもあり他の人の声も聞こえない。
ただ、雨音だけの空間を、小股でゆっくりと二人で歩いていく。
ブルボンちゃんは、雰囲気的にあまり多弁なほうではないのだろう。
私は、まあそこそこよくしゃべる方だと思っているが、なんせ今は右腕から伝わるブルボンちゃんのブルボンな感覚に心乱されていてそれどころではないのだ。
「ライスちゃんは」
「はい?」
「とてもいい香りがします」
「そうかな?」
「甘いお花の香りです」
「シャンプーの香りかな。薔薇の香りのモノを使っているので」
さすがに香水なんかはつけていないが、シャンプーとかはいいものを使っている。
その香りがするのだろう。耳をパタパタさせて香りを振りまいてみる。
「後、とてもかわいいです」
「そう? ありがとう」
「ライスちゃんも、他の皆もとてもかわいらしくて」
「そうですか?」
「傘なんかも、みんなおしゃれなんですね。いろいろな色の傘で綺麗です。ライスちゃんは何色の傘を差してきたんですか?」
「青い薔薇の模様が入った傘だよ。お気に入りのやつ」
「ライスちゃんに似合うかわいらしい傘ですね」
それだけ言うと、また少しだけ沈黙が続く。
耳をパタパタさせてブルボンちゃんに香りを送り込んでみる。
「私の傘は、真っ黒で、父からのおさがりなので、特に綺麗じゃないんです」
「?」
「トレセン学園の皆さんはみんな綺麗で、私みたいな子が混ざれるか不安で……」
ブルボンちゃんがどんな表情をしているのか、ブルボンちゃんの方が後ろにいるのでよくわからない。だが、なんか話があまりいい方向に進んでいない気がする。
確かにブルボンちゃん、あまりおしゃれとか気にするタイプではないのだろう。お父さんっ子なのかなとも思うと、趣味も結構男性的なのかもしれない。
一方トレセン学園にくる子はなんせお嬢様ばかりだ。華やかだし、服装は制服で一緒でも、髪や尻尾の手入れから違う。ブルボンちゃんもちゃんと手入れはされている方だとは思うけど、なんとなく質実剛健な印象がある。
そういう所で気後れを感じているのかもしれない。
ちなみに私自身はおしゃれとかそういうものに一切興味がないので、基本マルゼンお姉様やお父様のチョイスである。お母様は私と同じく興味がない人なので、全くこの辺りは頼れなかった。
なんにしろフォローをした方がいいだろう。別に気後れする必要なんて全くないんだっていうことを言ったほうがいい。
「困っている私を助けてくれたのはブルボンちゃんだったの」
「?」
「傘がなくて困っている私に気づいて、声をかけてくれて、こうやって一緒に寮まで行ってくれるのはブルボンちゃんだけだったの」
「……」
「ちょっと大きめの男性向けの傘だから、二人で入っても濡れないで済んでるし。とてもいい傘だと思うよ」
「……」
私からもブルボンちゃんに寄る。ブルボンちゃんのブルボンに腕がよりめり込む。うん、とても柔らかい。
私たちはそのまま二人で寄り添って、寮まで歩いていくのであった。
第一章の入学話が終わったら次の内容は何にしようか
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メイクデビュー
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トレーニング
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夏合宿
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日常生活
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ファン感謝祭
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その他(雑談に内容を書いてください)