「うーん……長いですね。オロール様、体調の程はどうでしょうか?」
「絶好調です。アルネウスさん、お気遣い感謝です」
リアージュさんのお願いを聞いてから1週間、そこからカルトアルパスより程近い『リーシエール空軍基地』で、最新鋭特殊輸送機『マラーナ』に乗り飛び立ってから、今日でちょうど5日経っていた。
巡航速度415㎞/hの快速飛行機に乗っているにせよ、中央世界から文明圏外にあたる地域に存在している日本まで、単純な直線距離だけで見ても相当長い。何なら、天候や夜間飛行が難しい都合だってある。
勿論、燃料補給は言わずもがな、ある程度積んでいるとは言え食糧や水などの補充は必須だし、私たちの休息はもとより輸送機を操縦するパイロットの軍人さんのためにも、時々各国にある魔導空港に降りる必要だってあるのだ。時間がかかるのも当然の摂理だろう。
「日本国……我が国が歴史上、初の観戦武官派遣を決断する程の強国……下手な振る舞いは出来ないわね」
「そうですね。まあ、外交官の人を見る限りではかなり穏やかな人ではありましたから、余程酷くない限りは安心して良いかと」
「うんうん。私も外交官の2人とカルトアルパスの街案内がてら話した事あるけど、穏やかだったよ」
「そう。と言うか、オロールいつの間にそんな事あったの?」
「気分転換に街中に出てた時にね。本当、偶然の産物だったよ」
ただ、一緒に居る2人との会話や目的地が目的地なだけあって、空の旅単体で見れば景色も何も変わらず退屈なものだったとしても、総合的に今はそれなりに楽しめている。体調が絶好調なのも、退屈さを感じさせない理由の強化に、一役買っていた。
惜しむらくはこれが仕事である事、それも戦争と日本人の命が失われたのをきっかけとして来れている点であった。
普通に何らかの調査団だとか、使節団のメンバーとして行くのであれば完全に納得出来ていただけに、複雑な気分である。
(……)
全く無関係かつ他国の人間ではある以上、私に出来る事など何もない。やるとしたら精々、ご冥福を祈る位だろうけど。
「なっ!? 今の音は、日本の戦闘機か? なんて速さだ!」
「凄いわね……今まで見た何よりも速い。天の浮舟も、あんな速度は出せないわ」
そんなこんなで、パイロットの軍人さんから日本の領空に入ったとアナウンスがされてから少し経った時、マラーナの側を見覚えのある戦闘機が2機よぎると共に、特徴的なうるさい音が機内に響いた。やはりと言うべきか、とんでもない速さだ。
ルーンズヴァレッタ魔導学院が、武装とエンジン周りの改良を進めている最新鋭『エルペシオ4』も、完成すれば最高速が865㎞/hと前級を355㎞/hも上回るものになる。
武装だって、30mm魔光機関砲と20mm魔光機関銃を各々2基ずつ備え、装甲にも防護魔装加工を施したりと、同じく強化されているのだ。この世界基準で見てみれば最強クラスであり、魔帝並みの日本が異常なだけである。
「落ち着いていますね、オロール様」
「うーん……心の中では興奮してますよ。ミリシアルが目指すべき目標が、すぐ側にある訳ですから」
「なるほど、確かにその通りですね」
そして、艦船や潜水艦でも日本は魔帝並みの技術力を発揮している以上、私の方も部下の子たちと共に頑張っていかなければならない。
各種対空・対潜装備、巡洋艦以下の艦船と装備、潜水艦に古代兵器のリバースエンジニアリングとやる事は沢山あるものの、ミリシアルのためなら頑張る気力は沸いて出てくる。
「おぉ、凄いですね。先程の戦闘機もさる事ながら、とてつもない大きさの航空機がこんなに……これを、魔導技術を一切使用せずに作り上げるなどと、正直信じられません」
「比較対象がムーしかないから何とも言えないけど、科学も極めればここまで行けるのね。日本国、凄い国じゃないの」
前方の戦闘機に先導され、普通に着陸態勢に入って空いているスペースに駐機した後マラーナから降りると、周りにあったミリシアル基準でかなりの大きさの旅客機を見たアルネウスさんとカームは、その技術力に大層驚いていた。
私に関しては前世の記憶や、機内に居た時の戦闘機が通り過ぎる様子に、並行して飛行する様子の余韻が残っていたので、それ程驚きはしなかった。勿論、高い技術力そのものに対して凄いとは思っているけど。
「ようこそ、神聖ミリシアル帝国の皆様。ここまでの長い空の旅、ご苦労様でした。お疲れでしょうし、すぐにフェン王国での戦いが始まる訳でもないので、今夜はまず市内のホテルにてゆっくりとお休み下さい。詳しい説明は明日の朝9時より行います」
で、すぐにやって来た日本国外務省の職員さんに先導され、空港外に用意された車に全員で乗り、鹿児島市内のホテルへと向かっていく。
(ふふっ……)
対向車線を走る沢山の車や歩道を歩く人、明かりの付いている建物、イベントがあるのか偶然聞こえてきた騒がしい人の声、普通なら取るに足らない様な事でも今の私にとってはある意味で新鮮味があった。
これでなおさらただの観光旅行か、強いて言うなら普通の仕事で来たかったと、その思いが強くなっている。
アルネウスさんやカームの方に至っては、文明圏外に分類される地域にミリシアルの様な先進的な街がある事に驚き、各々メモを取るなどしていた。
「あーあ、パーパルディアも馬鹿だな。こんな国に喧嘩売っちまうなんて。少しは理性的にものを考えときゃ良かったのに」
「だな。でも、俺たちだって最初は
「ははっ! 違いねえや」
更に、マラーナのパイロットさん2人の方については、観戦武官として護衛艦などに乗る訳ではないのもあるけど、フェン王国での戦いが日本の勝利で終わると確信を持っている様で、笑いながら会話を楽しんでいる。
無論、私だけでなくアルネウスさんやカームもそれについては同意を示したけど、完全に気を抜く事は当たり前だけどしない。ミリシアルに帰ってこれて、初めて完全に気を抜けるのだから。
「到着しました。ここが皆様のお泊まり頂くホテルとなります」
頭の中でそんな事を考えていると、車が私たちが泊まる予定のホテル前に止まったので、皆に続いて降りていった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ