「アーヴィス大使。本日はお忙しいところ、わざわざ訪ねて頂きありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。皇国にとっても火急の案件でしょうし」
パーパルディア皇国の第1外務局、列強国の大使との応対も想定されている豪華な装飾が施された会議室に、駐皇国神聖ミリシアル帝国大使の女性『アーヴィス』は、数人の大使館職員と共に居た。
その理由は、フェン王国での戦いにおいて、ミリシアルが観戦武官を日本へ派遣した訳を皇国が知りたがった事と、ミリシアルが皇国に
本来なら皇国側が使者を大使館に寄越す手筈だったが、直接出向いた方がインパクトがあるだろうと言う事で、今現在ここに彼女は部下となる職員数人と共に居る。なお、あくまでも新型魔導通信装置で許可を取ってからの行動だ。
「それでは、念のためにお尋ねします。今回のフェン王国での戦いにおいて、ミリシアルが観戦武官を日本に派遣したのは事実でしょうか?」
「はい、事実です。3名派遣しました」
「なるほど……では、今まで観戦武官を派遣して来なかった貴国が、何故今回は日本への派遣を決断したのでしょうか?」
「信頼の置ける、我が国きっての魔導技師の発言がきっかけとなり、議論に議論を重ねた結果、妥当だと判断が下ったためです」
こうして、第1外務局長のエルトが質問を始め、アーヴィスがそれに対して淡々と無感情で事実のみを語っていく流れとなったが、それ故に会議室の空気が少しずつピリピリし始めていった。
特に、同席している軍司令官の『アルデ』や皇族のレミールにとって、
レミールに至っては、後何か一言あれば相手がミリシアル大使であろうと声を荒げ、凄みそうな雰囲気を出している。並大抵の者であれば、この時点で何も喋れなくなる事だろう。
「皆様。その前にお聞きしておきたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「私とアルデは構いませんが、レミール様はどうでしょうか?」
「……構わない。好きにさせても良い」
「感謝致します。それで……日本と言う国に対して、どんな認識でいますでしょうか?」
しかし、アーヴィスは生憎その手の威圧感に慣れている人間であったため、平気であったどころか逆に威圧し返し、皇国側の質問を曖昧にしつつも質問を投げ掛ける事までやってのけた。
「文明圏外の蛮族の癖に、列強の様な要求を皇国にしてくる愚か者……だが、監察軍を退ける辺り軍事力は相応に高い」
「ほぼレミール様と同じだ。それ故に、フェン王国には精鋭の竜母艦隊を送っている。負ける事はないだろう」
そして、アーヴィスの質問に対してレミールやアルデは現時点での自身の認識を、一字一句正直に話した。ただし、ミリシアルやムーが観戦武官を送った事を鑑みて、内心間違いかも知れないと思い始めている。
なお、エルトはその質問に対して何も答えていないが、それは自身の認識が第3外務局長の『カイオス』からを含む、自身の人脈の太さを存分に活用した情報収集の結果、180度変わってしまったからだ。
万が一それを言ってしまえば、アルデはともかくレミールや皇帝『ルディアス』、他過激派の面々が怒りのあまり逆に全力戦争へと突き進んで行かないか、その辺を考えていた。
自分が殺される可能性も頭をよぎってはいるものの、そんな事よりもと考えてしまう程、圧倒的に悩みの種となっている。
ちなみに、アーヴィスはレミールやアルデと違い、エルトが大分正しい情報を掴んでいそうだと何となく察知してはいるが、敢えて無視して彼女からも聞いたものとして話を進めていった。
「なるほど、ありがとうございます。結論から申し上げますと、貴女方の日本に対する認識は大分不足している……そう言わざるを得ないでしょう」
「「っ!?」」
「……」
そして、
全て日本で販売されている書物に載っている情報ではあれど、護衛艦に戦闘機、イージス艦に誘導弾の性能、潜水艦について、その他この世界基準で凄まじい内容の話も交え、感情を出さずに淡々と口に出していくため、皇国側に底知れぬ恐怖を与えている。
ミリシアル大使の言う事はまるで信じる事が出来ないが、この状況で嘘八百を述べるとも思えず、内心が荒れた海の様になっていた。
「ミリシアルとしても、日本は列強国相当の国であると判断しております。既に国交も結んでおり、先進11ヵ国会議に日本を加えるかどうかの話も出ています」
「では、万が一の際はミリシアル帝国軍が……?」
「いえ、こちらから皇国に敵対する事はありません。ただ、全面戦争を考えておられるのであれば、強制はしませんが止めておいた方が良いでしょう。
「「はっ?」」
そんなこんなで、皇国側が終始圧倒され続けた数々の説明の終わり際、アーヴィスの放った一言が本当にギリギリのところで保たれていた一線を、容易に踏み越えてきたため、アルデやレミールが思わず口調を少し荒げてしまう。
直接的な言葉ではないものの、実質お前たちでは勝てないからさっさと講和しろと言われた様なものであるから、皇国の性格からして仕方ない。
「このような時に大変申し訳ありません!! フェン王国に派遣した竜母艦隊、並びに陸軍と支援艦隊、ワイバーンオーバーロード含む飛竜隊が日本国に完封され……僅かに残った残存部隊も降伏致しました!!」
そうして、奇しくも会議室に駆け込んできた第1外務局の職員からもたらされた、フェン王国での戦いの敗北と言う情報が、アーヴィスの正しさを即座に証明する事となってしまった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ