光の申し子   作:松雨

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第一外洋派遣艦隊

 空は全体が白い雲で覆われているものの、降雨はなく波も穏やかなとある海上、神聖ミリシアル帝国軍『第一外洋派遣艦隊』所属の7隻の軍艦が、パーパルディア皇国に向けて派遣されていた。

 

 理由としては3つ、フェンでの日本人処刑事件を機に激突し、日本と戦い鎧袖一触で蹴散らされたパーパルディアの仲介要請に応じる形で、講和条約締結に介入するためだ。

 なお、調印式の会場は旗艦でもあるミスリル改級魔導戦艦『ヴァーテイン』の甲板上と、協議の結果決まっている。

 

 駐皇国ミリシアル大使アーヴィスからの情報、ニシノミヤコ沖を含む対日戦がもたらした結果、何者かの意図的な工作による上層部の対立や情報の漏洩、アルタラスや属領での役人の意図せぬ行為の数々、これらが重なり戦争継続が不可能となったのが原因らしい。

 

「頼もしいな、この艦は。そう思わないか、アーテナ艦長」

「違いありませんね。最大31ノットの速力、主砲の41.3cm連装魔導砲4基8門他多数の巡洋艦級副砲を含む火力、他にも挙げればキリがありません」

「ははっ! それにしても、ミリシアルの技術者(ルーンポリス魔導学院)は、とんでもない奴を造ったものだ。油断は禁物と分かってはいても、つい油断してしまう程には」

 

 もう1つは、新設された艦隊の中には最新技術をふんだんに使用した艦船もあり、訓練としてちょうど良い機会なのではと、軍務省や外務省など多方面から意見が出たためある。

 

 費用云々の問題は出たものの、今年度のミリシアルの財源に余裕があったのと、最悪足りなくなった場合の工面方法がいくつかある事から、問題はないようだ。

 

 最後の1つに関しては、パーパルディア国内に徹底交戦を謳う過激派が居ないとも限らないため、攻撃の抑止ないし万が一の防衛を考えているからだ。

 

 当然の如く、パーパルディアや日本にも艦隊派遣の通達は行っていて、了承も得ていた。

 

 しかし、日本やグラ・バルカスは言わずもがな、強いて言うならばムーやエモール位しか、旧式艦船で構成されたミリシアル艦隊ですら、撃破ないし対抗可能な勢力がない。

 

 最新鋭の艦船で構成された第零式魔導艦隊、ならびに第一外洋派遣艦隊に至っては、今現在だと日本やグラ・バルカス以外にどうこう出来るものではないのだ。

 当然、パーパルディアの過激派程度を想定するのなら、完全に過剰戦力となる訳である。

 

 そもそも、両国の講和条約締結を仲介するだけであれば艦隊派遣をする必要などなく、ましてやそれらを戦艦でどうしてもやらなければならない理由も、全くなかった。

 両国をミリシアルに招き入れ、帝都の会場を貸し切るなどしてやれば済む話でもあったのだ。

 

「しかし、スルトラル司令官。やはり、こんな目的のためだけ(仲介依頼)に、7隻も軍艦を派遣する必要なんてあったのでしょうか? 内訳は空母1隻に我が艦含め魔導戦艦が2隻、防空巡洋艦と魔導巡洋艦1隻ずつ、快速小型船……ではなく、駆逐艦2隻ですよ。グラ・バルカス帝国軍相手なら分かりますが」

「確かに、私も聞いた時は驚いたさ。まあ何であれ、政治的理由もあると言われてしまえば、我々は従うしかない訳だ」

「まあ、そうなんですけどね。費用云々は余裕がある上ですし」

 

 故に、旗艦ヴァーテインの艦長『アーテナ』が疑問に思うのも、艦隊司令官『スルトラル』が驚くのも無理はなかった。何なら、乗船している軍人の間でも同様の疑問が噴出している。

 

 ただ、スルトラル(司令官)含め全員が政治的理由(裏の理由)……国力誇示によるミリシアルの存在感アピール、主に日本を意識したものだと聞かされているため、完全ではなくても納得はしていたが。

 

 なお、それならユニバース級対空魔船『ディアン』や、セイド級対潜魔船『シービス』の2隻を入れた方が効果的なのではとの意見が、方々から出ていた。

 

 しかし、空中戦艦パル・キマイラや海上要塞パルカオン、超潜艦シーヴァンのように、ミリシアルにとっては生産どころか修理すら一部を除いて不可能な兵器である。

 

 その2隻以外の艦船は技術力で及ばない以上、ほぼ同等の性能を誇る艦船を()()()()()日本がその辺の事情を察せない道理はないし、万が一損傷してしまったらどうするのかと言う事で、結局は立ち消えとなっていた。

 

「アーテナ艦長! 前方30㎞より15ノットで接近する魔導戦列艦1隻……パーパルディアの哨戒艦です! 「港に誘導するからついてきて欲しい」との魔導通信も入っております! なお、日本の外交官を乗せたイージス艦『こんごう』も停泊中との事!」

「了解した。誘導には従い、ないとは思うが万が一の衝突事故などを起こさぬよう、速力や舵の調整には注意を払えよ。皇国はもとより、日本との外交問題になったら洒落にならんからな」

「勿論です!」

 

 旗艦の艦橋にてそのようなやり取りが続いていた時、通信要員よりパーパルディアの哨戒艦接近の報告がアーテナへと入ってきた。哨戒騎であるワイバーンオーバーロード編隊が、第一外洋派遣艦隊7隻を発見してから、約1時間後の話である。

 

 これより両国(列強)の外交官同士が終戦条約締結を自艦で行うとだけあり、直接関わるか否かに関わらず、この報告は艦橋内を含めた全ての乗員の気を引き締めた。

 

「さてと、アーテナ艦長。ここからが本番だな」

「そうですね。まあ、やらかさないように仕事を粛々とこなすまでですが」

 

 そして、かなり近い距離まで哨戒艦が近づいてきてからは、艦隊の全てが15ノットへと速度を落とし、誘導に従って軍港へと向かっていった。




前回投稿よりも大分間が空きましたが、今後は基本1~2日おきでの投稿ペースが維持出来る感じになります。それ以上延びる場合は、後書きにてご報告します。

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